山城に登るのが好きなんです
あまり共感されることがない趣味だけれど、山城に登るのが好きだ。
登山やハイキングが好きな訳ではない。
山城に登ることが好きなのだ。
普通日本で城というと、多くの人は名古屋城や熊本城のような立派な天守があり、石垣に支えられている巨大な建造物を想像するだろう。
だが、僕が登るのが好きなのは天守も何もない、当時の建物など一切残っていない、ただの山にしか見えない城である。
そもそも日本には馬鹿みたいな数の城があるのだ。
その数はヨーロッパなどに比べても世界一の密度だとかなんだとかというのを聞いたことがあるような、ないような気がする。
試しに地図アプリなんかで「城跡」と検索してみてほしい。
よっぽどの大都会や離島でもない限り、あなたが住んでいる周りにもかなりの数の城跡がヒットするのではないかと思う。
そして、そのようにヒットする城は殆どがどこが城なのかは分からない、ただの山か、石碑が立っているだけのちっぽけなものであるはずだ。
そんな物を見てもつまらない?
いいや、それが面白い。
ついこの間、幸山城という城に登ってきた。
200m程度の小さな山のてっぺんに解説板と石碑があるだけの小さな城跡だ。もちろん天守などない。
じゃあただの山登りと変わんねぇじゃねーかと思うことでしょう。
僕もたまにそう思う。
でもそうじゃない。
山登りやハイキングは自然と親しむでしょう?
いや、僕自身そういう趣味がある訳ではないから外側から見たイメージでしかないんだけど。
山城に登る個人的な楽しみは、「自然の中にある人工的な形跡を発見すること」である。
山城というのは元々ある山に土木工事を施すことで要塞化するものである。
その要塞化のために堀を掘ったり、土を積み上げて土塁を作ったり、急斜面を作ったりしているのが大変良い。
ちなみに城に登る時、城を攻めるつもりで登っていくという人がかなり多いのだが、個人的には守る側の視点で見る派である。だって城っていうのは守る方にアドバンテージがあるんだもん。
人工的に削られている所を見つけては喜び、高所から道を見下ろしては敵兵の殺害を想像する。
高低差さえあれば石を投げつけるだけで致命傷だからね。
それに、500年も前にいじられた土が、当時に近い形で残っているなんてロマンの塊じゃないか、と思ってしまうのだ。
まあそれを楽しむためには専門的な知識がある程度必要だったりもするので、やはり多くの人には理解して貰えないんだけど……。