月と六ペンス9
①and it was impossible not to be impressed by the claims he made; ②they seemed extravagant; but later judgments have confirmed his estimate, ③and the reputation of Charles Strickland is now firmly established on the lines which he laid down. ④The rise of this reputation is one of the most romantic incidents in the history of art. ⑤But I do not propose to deal with Charles Strickland's work except in so far as it touches upon his character.
《語彙》
extravagant(大袈裟な)
confirm(確かめる)
estimate(見積もり)
reputation(賞賛)
incident(出来事)
《読解》
①and it was impossible not to be impressed by the claims he made;
【直訳】
彼がつくった主張により、影響をうけないでいることは不可能だった。
【試訳】
否が応にも、ユレの評論には影響を受けざるを得なかった。
【文法】
itがいわゆる仮主語でto be~he madeまでが真主語。
the claimsとhe madeの間に関係代名詞が省略されている。
省略された関係代名詞は、関係詞節中ではmadeの目的語。
②they seemed extravagant; but later judgments have confirmed his estimate,
【直訳】
彼の主張は誇張されているかに見えたが、後の判断は彼の見積を確認した。
【試訳】
評論は誇張されているかにみえた。たが後に、ユレの見立ては確固たるものとなった。
【文法】
seemedは過去形、have comfirmedは現在完了形。
過去はextravagantに見えた。しかし今となっては・・・。
というニュアンス。
③and the reputation of Charles Strickland is now firmly established on the lines which he laid down.
【直訳】
チャールズ・ストリクランドの評判は今、ユレが横たえた線の上に堅く確立されている。
【試訳】
ユレの敷いた路線に乗って、チャールズ・ストリクランドは確固たる賞賛を今、手中に収めている。
【文法】
the reputation of Charles Strickland →これが主語。
is now firmly established →これが述語動詞。受身。
on the lines which he laid down→これが述語動詞を修飾する前置詞句。
linesとwhichの間は関係代名詞の省略。
省略された関係代名詞は、関係詞節中ではlaidの目的語。
④The rise of this reputation is one of the most romantic incidents in the history of art.
【直訳】
この評判の上昇は、芸術の歴史の中で最もロマンティックな出来事である。
【試訳】
彼への賞賛の高まりは、芸術の歴史の中でもそうは見られない心躍る現象である。
【文法】
The riseが主語。
isが述語動詞。
oneが補語。
つなげば
The rise is one.→骨組みはたったこれだけ。
前置詞句を抜き出せば
of this reputation→riseを修飾
of the most romantic incidents→ oneを修飾
in the history→incidentsを修飾
of art→historyを修飾
となる。
⑤But I do not propose to deal with Charles Strickland's work except in so far as it touches upon his character.
【直訳】
しかし私は、チャールズ・ストリクランドの仕事を扱うことをしようとは思っていない。彼の仕事が彼の性分に触れる時を除いて。
【試訳】
だが私は、チャールズ・ストリクランドの絵をここで取り上げようとは思っていない。作品が、彼の気質をよく顕している場合に限って、書き記したいと思っている。
【文法】
except in so far as
成句と言ってしまえばそれまでだが・・・。
品詞をひとつずつ考えてみる。
①exceptは前置詞。「除いて」
②inも前置詞。「場合」
soは副詞でfarを修飾。
farも副詞でtouchesを修飾。
③so farは「その程度」という意味。
その程度の”その”とはどの程度か?
それを示すのが接続詞のas以下。
④「絵が彼の奥深い気質に触れるような」
④③②①の順につなぐと
「絵が彼の奥深い気質に触れるような程度である場合を除いて」
となる。
もう少し構造を考えてみる・・・。
it touches upon his character
この文にasを置いて
as it touches upon his character
という副詞節が出来る。これにso farを置いて
so far as it touches upon his character
になる。
これは
so far(その程度ってどの程度?)
によって投げかけられた問いの回答が、as以下の
as it touches upon his character
によって示されるという形で情報が展開している。
so far as全体を一つの接続詞と考えれば
so far as it touches upon his character
という副詞節が、前置詞inの目的語になっていて
in so far as it touches upon his character
という前置詞句が、前置詞exceptの目的語となっている。