光を灯す。TOUCAという、地域も組織も超えた探求が始まります。
友人のSNSで、民俗学者の宮本常一さんの言葉をまとめ考察している文献に出逢った。旅人は地域に何をもたらしていたのか。そして、観光業という言葉を旗印に、地域に住む住民こそがこの土地をどうしていきたいのか、その意志を土地がもっているのか。辛辣に問う内容であり、そしてこの10数年、探求し続け来た答えの1つに出逢えた気がした。
島が呼吸をするように、交流が息づいていた。
ホテルや観光業といわれる仕事は、決して地域の経済的効果のためだけに働いているわけではないし、観光客はその手段であるなんて、ましてや会社組織の売上の手段として存在することなんて、そんな仕事と業界に誇りはもてない。そう思い塞いだ時期があった。観光客・観光業とは何かを問い続けて、考え続け、対話し続けても答えは出てこなかったし、今もその探求は続いている。
一方で、この島では遥か平安時代から流刑の地として都の政治犯たちが流され、時代を経て風待ちの港として外国籍の船が係留し、古くからこの島に新しい刺激と情報を常に出入りし続けてきた。この島のDNAとして、交流こそが島にとって呼吸であり、風土や文化は島の土地固有のものではなく、交流によって更新され続けていることを本能的に、そして継承する意志をもって受け継がれていて、昨今のスポットライトが集まりやすいUIターン者の増加や島留学生の存在は、この継承の続きにある意志ある現象だと捉えている。
価値の提供から、旅人との探求と共創へ。
この視点からいわゆる「サービス産業」としての観光業をとらえなおしてみると、価値を提供することばかりにフォーカスがされすぎていて、消費する観光客ではなく、土地を訪れた旅人から地域が何を学ぶのか。そして、共に何を探求し共創するのか。ここにこそ、ヒトが旅と移動を繰り返してきた中で、「昭和をベースに構築された観光業」にすっぽりと抜け落ちつつある概念じゃないだろうか。と思い始めている。
そんな矢先に、同じく「観光」「宿泊業」を営む他の地域の施設「サンクレア」の細羽さん、「御花」の立花さんと出逢った。繋いでくださったのは観光における人材育成を拡張され続けている「Intellectual Innovations」の池尾健さん。この4社で対話を続けたところ、まさに観光業における最大の資産である「ヒト」の育成や、スタッフの探求をどうしたらより深堀できるのか。可能性を広げられるのか。そんな探求が始まった。
土地と組織を越えた探求から生まれる価値。
お互いの交流が始まり、土地を変えながらお互いに旅をしながら出逢い始めると、会社や組織を超える探求が産まれ始めた。
「地域コミュニティと宿泊施設の関係性」
「旅人の変容」
「宿における働き方や役割分担の更新」
あらゆるテーマでの対話が、議論がとにかく楽しい。それぞれの組織において現場の合間を縫いながら土地を越えてオンラインでの時間がうまれ、協働でのプロジェクトがうまれ、共に励ましあえる関係も創られてきた。
人手不足が叫ばれる昨今の宿泊業・観光業において、これはとんでもなく面白いものが生まれそうだという手ごたえ、この面白さを小さく小さく広げていきたい、そんな想いが積み重なり、晴れてこの探求を共にご一緒していただくひとの募集が始まる。探求の中でこの隠岐・海士町へ訪れていただき、Entôで共に探求をする場面が生れるのだと思うと、本当にワクワクしている。
TOUCA、始動。
この新しい探求が「TOUCA」という名前でのフィールドワークとして始動することになった。未来の旅のカタチを共に探求したいと思える方が1人でも参画してくださると嬉しい。土地と組織を超えて共に動くことが、土地に根付いて働き、暮らす私たちの刺激になることを期待し、そして新しい風土を生み出せることを願いたい。