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ネイルを取らないで
鏡をみると唇にリップが固まっている。それだけなのに。塗り直してる気持ちがわくわくから虚しさに変わるのに気付いているのだろうか。
同窓会があるから久しぶりにイヤリングをした。化粧品はリップだけデパコスの。自分で買ったものではなくて誕プレで貰ったもの。
みんなの目が垂れてくると不満とか現状確認とか始まる。社会に出て不思議とやっていけているのと家に帰った時の虚無感と学生に戻りたいって話とか。
私の脚のネイルは夏からそのまま。
トイレでふと前を見るとパールのイヤリングをしている女の人。似合っていない。マスクを顎にずらすとリップは剥がれて固まってる。鞄からリップをとって塗り直す。そんなに見た目が大事なのって聞きたいけど。どうでもいい。
毎月ネイルを塗り直す、直せる人になれますように。
そう鏡に映る口紅の剥がれた女性に向けて話しかけた。