
絡まった制服
下駄箱にある自分のローファーの底が右斜めに削れている。
首元に手をおくとリボンがないことに気づく。朝息苦しくてスカートのポケットの中に入れたことを思い出してみる。
今スカートのポケットの中に手を入れることが少し憚られたからそのまま帰る。
いつも学校帰りに寄る公園はブランコひとつとベンチひとつの小さなもの。お昼には子供達がいるのかもしれないけど私が寄る頃には誰もいない。狭くて静かなその空間に馴染んで染み込んでいく感覚は誰にも邪魔されない快感へと変わっていく。
今日は違った。ベンチの前のブランコに人が座っている。そのまま帰ればよかったが、寄らないことを神様に見られているような、裏切ったような気がしてベンチに座った。
ブランコに座って携帯をいじるあなたがとても嫌いです。そう伝えたかった。
目を瞑っていなくなれいなくなれと唱えて目をあけるとあなたはいなかった。いけないことをしたのか。関係ない。けど、まるで死ねと伝えた相手が死んでしまったような、どうしよう。
その日からあなたに会うために公園に行った。いない。なんでいないの。私のこの不安を取り除いて欲しいのに。
ただ、4つ並ぶうちの私の前にあるブランコの椅子が少し温かかった。
12月になっても会えなくて、私の高校時代は身元の知らないあなたの記憶が鮮明に刻み込まれている。自分が気持ち悪い。なんであの一瞬だけの不安を引きずっているのか。ブランコに腰掛けいつも私の座っているベンチを見つめた。
リボン落ちてました。ベンチの下に。
今日も世界が右に傾いている。マフラーをとって首元を明らかにしながら歩く帰り道。公園に寄らず少し通り過ぎた。少しだけ。