喋るお花と聞いて嫌な予感しかしない人はきっと同士〜「すみれの空」プレイ感想【ネタバレ有】
2021年の2月頃、突然「あなたへのおすすめ」にゲームを紹介する記事が現れた。そこで紹介されていたのがこの「すみれの空」。「UNDER TA○E」のフラ○ィ※1 を彷彿させるお花さんが相棒の、不穏な雰囲気で進むADVだよ!という触れ込みだった。
絵本のような美しいタッチで描かれた世界の中に、不穏な要素がてんこもりというギャップ。さすが天下のグーグル先生。こちらの好みを熟知している。(おそらくUNDER ○ALEで引っ張られただけ)
5月発売ということで少し時間が空いたが、ついにプレイしてみた。結局の所、このお花さんはクロだったのか…?以下はネタバレを含みますのでご注意を。
引用元:Game Tomo https://www.gametomo.co.jp/sumire
初っ端から怪しさ全開のお花さん
ゲームを始めると、早速お花さんが現れる。喋るお花に良い思い出がない身としてはもちろん、特段先入観がない方が見ても、こやつのヤバさは肌で感じられるものと思う。
「…でもお家にいなくちゃ。ママについてないと。」「ボクもサ。キミが必要なんだヨ。」
「…ムリだよ。」「ムリじゃないよ。」
「できないよ。」「ほんとは興味あるんでしょ?」
「ううん…」「できるって!」
「できない!」「うんうん、その心意気!」
外に出ることを渋るすみれに、こやつはこのように、詐欺師よろしく相手に畳みかける。冷静に見ると、この明らかに話が通じていない感じ、なかなかに怖い。
しかし、それでもYESと言わないすみれに、この花は……
「じゃあさ、もし…」
「また、ばあちゃんに会えるとしたら…?」
「ばあちゃんが何を伝えようとしていたのか聞いてみたくない?」
この誘い文句である。なぜそれを最初に言わないんだフラ○ィ。そしてなぜそれを知ってるフ○ウィ。
こいつ絶対やばいって!なんか怪しいって!と叫ぶプレイヤーをよそに、直前の夢でおばあちゃんと会いたいと思っていたすみれは、とうとうこの○ラウィ…ではなくお花さんと、とびっきりの一日を過ごす約束をしてしまうことに。
しかし、その道中は序盤から穏やかではなく……
・スズランらしき花を喜ぶ猫
・秩序の守り手に行く手を阻まれる
・積み石、風車、桃、渡し賃と、あからさまに例の川らしき川
などなど、不穏な要素のオンパレード。正直、匂わせが強すぎて気が気じゃない。少女の特別な一日よりも、いつこの花の化けの皮が剥がれるのかの方が気になり、一周目はずっと画面の前でビクビクしていた程だ。
引用元:Game Tomo https://www.gametomo.co.jp/sumire
不穏だけど、不穏じゃなかったああああ
そんな不穏さを随所に匂わせつつ、すみれとお花さんは、仲がこじれてしまった元親友との仲をなんとかしたり、新しい友達を作ったり、転校していく好きな人に想いを伝えたり、離婚寸前のパパとママに気持ちを伝えたりと、特別な一日を過ごすために奔走していく。
そのストーリーは、一言で言えばノスタルジーそのもの。世界を救うような非現実の話ではなく、等身大の少女が悩みに向き合う、自分のための特別で不思議な一日の話。だからこそ、誰しもが持っている幼い頃の思い出と重なり、どこか懐かしさを感じさせるのだろう。
淡い水彩で描かれる独特の美しいグラフィックと、アコースティックギターやピアノがメインのクオリティの高い楽曲たちが、その世界観を巧みに演出していく。
そして、満点の星空の元で少女の一日は終わりを迎え……
――ってあれ、化けの皮は!?
そう、実はこの話、特に秘密が明かされることなく、さらっといい感じに終わるのである。
ずっと怪しい怪しいと言っていたお花さんは、夜が近づくにつれ本当にぐったりしてしまい、1日だけの命というのは嘘じゃなかったことが分かる。エンディングを迎えるころには、「あやつと一緒にしてごめんなさい」と心の中で土下座していた。いや、十分不穏なことはしてたけどね。
どのルートでも優しかったお花さん
本作はマルチエンディングであり、少女の一日をとびっきりの一日にするか最低の一日にするかは、プレイヤー次第となっている。
分岐自体は非常にシンプルで、所謂いいことをするとベスト、少し取り逃すとノーマル、やらかしまくるとバッドの3つだ。複雑な条件等はなく、クエストや宝箱をすべて回収するプレイスタイルの方なら、恐らく初回でベストに辿り着くだろう。
ノーマル→バッド→ベストの順でプレイしてみたが、実を言うと話の本筋は驚くほど変わらない。特にノーマルとベストの違いは、最後のシーンだけ(多分)。しかし、少女の最高にとびっきりの一日を見届けて、最後に迎えるそのシーンは必見である。
バッドエンドも、ちょっとホラーな感じはあるものの、美しい景色を見るシーンなどは、ノーマルルートと全く同じ展開となる。あれだけのことをやらかした後にもかかわらずだ。どんな感情で見ればいいんだこれ…。
そして、どのルートでも総じてお花さんは、すみれの良き友であってくれる。たとえカラスに石を投げ、いじめっ子に仕返しをした不良少女だとしても。
結論 シロでした
というわけで、シロと言い切っていいのかは微妙なラインではあるものの、終わりよければすべてよし!結果オーライ!ということで、お花さんはいいやつだった。疑いすぎて、ハチミツ清めなくてゴメンよ。君のケンジいじりネタ、面白かったよ。
「すみれの空」は、当初の予想とは違い、もっと穏やかでノスタルジックなゲームだった。不穏な部分だけを期待すると拍子抜けしてしまうかもしれないが、この世界観が好きな人にはたまらないゲームだろう。
このゲームは、心に何か残すようなインパクトはないかもしれないが、時々は起動して世界観に浸りたくなるような、独特の魅力にあふれている。
少しでも気になった方は、ぜひ少女の一日を、本当はいいやつのお花さんと一緒に見届けてみてほしい。
#ネタバレ #ゲームレビュー #インディーズゲーム #すみれの空
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※1 「UNDER T○LE」に出てくる喋る花。詳細はここでは紹介しないが、プレイヤーの一部からクソ花と言われている時点でお察し。