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変わったものと変わらないものと、変わろうとしなかったもの〜「ドラゴンクエスト3 HD-2D版」プレイ感想【微ネタバレ有】


 2024年11月14日は、待ちに待ったドラクエ3 HD-2Dリメイクの発売日でした。一番最初にドラクエ3に触れたのはGB版、しかも15年以上も前のことでしたので、リメイクでどう変わっているのか非常に楽しみにしていました。
 時間も忘れて夢中になり一週間弱、本筋だけですがとりあえずはクリアしたので感想を備忘しておきます。
 最初に断っておくと、歴がそこそこ長いドラクエファンで、ストーリー等重視でゲーム性はあまり重視しない自分としては、本当に最高のリメイクでした。なるべくしないようにはしていますが、一部ネタバレになるかもしれませんのでご注意ください。




生まれ変わった36年前のゲーム

 初代のFC版が発売されたのが1988年。今から36年も前なのだということに今更ながら驚きです。当時生まれた子が今や36歳、干支が3回まわります。

 そんな時の流れに思いをはせつつゲームを起動し、まず目を引くのはとても美しいグラフィック。構造は同じなのに、もはや同じアリアハンとは思えません。いろどりを与える最高の音楽はオーケストラ音源で、イベントには一部ボイスまで付きます。仲間は容姿が複数から選べるし、特技や新職業のまもの使いも追加されている。進めるたびに大興奮でした。

 細かいところに目を向ければ、次にやることも表示できてかなり遊びやすくなっているし、まんたんや逃げるはボタン長押しで出来るなど、かゆいところに手が届く設計がされていて非常にストレスフリーでした。難易度も選択でき、一番簡単なモードなんかは死の概念すらないので、ストーリーだけ追いたい人にも配慮されています。

 ちなみに、自分はサクサクやりたいので簡単モードでやりましたが、さすがにゲーム性は皆無になりました(選ぶ時に仕様の説明がなかったのだけは少し残念です)

 元はFC、リメイク版でもSFCやGBという大昔のゲームなので当たり前ですが、ドットの表現もまるで別物になっていました。要所要所でイベントの追加や補完もされており、オルテガ関連やラーミア復活は思わず涙がにじむほどの感動が……。
 そして1・2への布石もあり、そうくるか……!と、元々2がシリーズで一番好きなのもあり、1・2リメイクが非常に楽しみになりました。


その中でも変わらないもの

 現代技術で進化した上記のような点がありつつも、ストーリーの大まかな流れはもちろん、全体的に元のゲームの空気感を変わらず伝えることに重点が置かれているように感じました。HD-2D、グラフィックは進化しつつもあくまで2Dであるという点がその最たるものだと思います。

 それゆえ、贔屓フィルターを除いて単体で見た時には、若干の遊びにくさを感じます。それは同じドラクエシリーズでも、新しい10や11と比較すると顕著です。最近のゲームに慣らされてしまった自分としては、特に久々のランダムエンカウントがしんどかったです(最近のゲームがシンボルエンカウントを多く採用しているのは理由があるのだなと今更実感)。戦闘も、クォータービューなのかと思ってたら、コマンド入力時のみクォータービューぽいだけでまさかのフロントビューで驚きました。

 しかしこれらは前述の通り、全て元のドラクエ3の雰囲気を損なわないため、敢えてそうしているのだと推察できます。新しい層を取り込むことを目的としているというよりは、かつてドラクエ3をプレイしていた層に寄り添ったリメイクだなという印象でした。

 ドラクエシリーズ、特にロトシリーズを愛しているので、今のこの令和にロトシリーズをリメイクしていただき本当にありがとうございます!!!という気持ちです。




と、ここで終わりたかったのだけども……。以下は否定意見が入りますので、恐れ入りますが自己責任で閲覧ください。






変わろうとしなかったもの

 ネガティブなことはあまり書きたくないものですが、どうしても吐き出しておきたかったのでちょっとだけ。ゲームの内容とはあまり関係ありませんが、物議を醸した男女表記からスタイル表記への変更のことです。

 実はゲーム発売前から、スタイル云々をめぐる堀井氏の某発言に、とてもショックを受けていました。発言の意図はもちろんご本人にしか分かりませんが、自分は以下のように無理やり解釈しようとしました。

「(ドラクエシリーズは基本、主人公(あなた)と表現しているが、主人公の基本設定は既に用意されており、性別すら固定されていることの方が多い。なので、主人公(あなた)の意味は単に、既に用意された主人公をあなたが演じてね、というだけでそれ以上の意味はない。つまり、プレイヤーの要素が主人公の設定に影響を及ぼすわけではないのだから、仮にプレイヤーが男女の選択に抵抗ある人物であっても、用意された主人公の設定が)男女の2択であることに文句を言うのはわからない」

 このような前提が彼の中にあったのであれば、多少は納得できる話です。しかし、主人公に名前をつけるという構造であれば、既に用意された主人公を演じる遊び方だけでなく、自身の要素を主人公に反映し、自身の分身をゲーム世界に生み出すような遊び方も当然想定されます。子供のころに自分の名前を主人公につけたという方もいるでしょう。
 ましてドラクエ3(SFC・GBリメイク)の、主人公の名前や性別が選べるだけでなく、プレイヤーに対して真の名を答えさせ、誕生日を答えさせ、性格診断を行い、そのうえで性格を主人公に反映(今作リメイクでは誕生日も)するという仕様は、後者の遊び方を推奨しているようにさえ思えます。
 いずれにしても、後者の遊び方をする人はいない(から男女の2択に文句言うのはわからない)と断定するのは乱暴な理屈でしょう。

 と、このように発言の趣旨はこうじゃないか?と好意的に解釈しようとしたけど、おそらくは違うでしょう。発言から、男女表記は差別だからタイプ1、2にしなきゃならない、と額面通り受け取り、スタイル表記にしたほうが望ましい理由を理解していないように見受けられました。今の時代、少し調べればXジェンダーやクエスチョニングという言葉が出てきますから、自己投影する遊び方をした際に、男女表記では選び辛い方が少数でもいることは容易に想像できます。なので、分からないというよりは、調べる気すらないというのが本音なのでしょう(承知の上での発言なら、遊び方を限定している、もしくはマイノリティは無視したいと同義なので、さすがにそうは思いたくないものです)

 これは、行き過ぎると言論統制のようなものになってしまうし、表現の自由とかにも抵触しかねない難しい問題で、自分自身勉強不足な部分も多々あって頓珍漢なことをいっているかもしれませんし、また全ての規制が正しいとも正直思いません。男女表記でいいだろう、誰も困らないだろう。と心の中で思うことももちろん自由です。
 ですが、シリーズの生みの親が公の場でこのような発言をしたということは、仮に今後ドラクエシリーズで現代の流れを汲み取った変更がされたとしても、それはただ外部からの強制力が働いた結果にすぎず、あらゆる人がしがらみを感じずに遊びやすくするための思いやりでは決してないという意思表示のように自分には思えました。

 今回こんなにショックを受けた理由はまさにそこでした。ドラクエシリーズの門戸は、ありとあらゆる人のために広く開かれているのだとある種夢を見ていたので、今回の発言でそれがただの幻想だとわかり悲しかったのです。

 そして実際、今回の強制力が働いた結果はどうだったかと言うと…。言葉を選ばず言ってしまえば、やはり義務感で目立つところの体裁を整えただけという印象でした。
 勇者だけならルックスABでもよかったのかもしれないですが、仲間もルックスA〜Hではなく、わざわざABに分けた上でそれぞれ4つの容姿から選ぶ仕様にしているので、暗に男女をABに言い換えただけである事が分かります。ステータスにはルックスABが明記されるし、ルックスB専用装備もある。(商人に見せると「じょせい」ってハッキリ言っちゃってる始末。)
 これでは折角ルックスABと表現を変えても、男女の隠語でしかないので、何の解決にもなってないと思われます。
 ちなみにこういう論争になると、生物学上の性別で選べばいいという話も出てきがちですが、それでさえ男女を分ける絶対的な基準がないので、そう単純な話でもありません。
 
 自分は今回のことで、ドラクエシリーズを嫌いになることはもちろんなく、一生好きなままでいるとは思いますが、悲しいことにその一方で「人や遊び方を選ぶゲーム」という冷めた視線が常に入り続けてしまうことになりそうで、とても残念に思っています。

(11/24追記:今更ながらスタイルABではなく、スタイルをルックスABから選ぶことに気づきましたので、一部文章を修正しました)


#ネタバレ #ゲームレビュー #ドラクエ3

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こんなに長い文章をここまで読んでくださった方がいましたら、ありがとうございます!不勉強ゆえ、ここは理解が違うんじゃないか?などあればご教示いただけると大変ありがたいです。

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