ミュージカル『エリザベート』初見の観劇記録
初のエリザベートを観てきました。
死という視点
皇后エリザベートの生涯を描いた作品なのですが、
現実世界には実在しない黄泉の帝王であるトートがいます。
死の擬人化といえば伝わるでしょうか?
わたしは(野暮かもしれませんが)死神だと思ったらスッと飲み込めました。
この死という視点が入るだけで実在する人物の一生を元にした舞台がこんなに美しく、面白くなるんだと感動。
エリザベートのエネルギー
幼少期のエリザベートは好奇心旺盛で冒険家の父みたいになりたい!と自由に自分で道を切り開く眩しい人という印象です。
今わたし自身が疲れてるためか、あのエネルギッシュで行動力のある人間になれたらと羨ましく思いました。
『自分の道は自分で決めるの!』と歌うエリザベートの歌声と迫力が眩しくて、思わず涙が出てしまうほど。
エリザベートはオーストリア皇帝のフランツ・ヨーゼフと結婚しますが、皇室はエリザベートを縛り付けます。
フランツはエリザベートを愛しているように見えますが、どこか噛み合っていない2人。
フランツはマザコンで母の言いなり。エリザベートの味方は誰もいないようでただただもどかしい時間でした。
自由を奪われ、子供も奪われて孤独を抱えて生きるエリザベート。
死にたいと思ってはトートが死の世界へ手招きしますが
まだまだ自分で頑張れる、希望を捨ててはダメ!生きて自由になるの!と言い聞かせ、知恵とその美貌を使って奮闘します。
強く美しくて、かっこいい。
わたしだったらきっと折れてるなあって思います。
力をつけて子供も取り戻しますが
夫であるフランツの裏切りを知り放浪の旅に出ます。
かつて憧れていただろう世界の旅。
でもあの若い頃のエリザベートではなくて。
孤独で悲しみの中ただただ彷徨うようで悲しく感じました。
1人の人が一生を演じること
何十年もの年月のワンシーンを切り取り繋ぎ合わせて一生を描いている作品のため、一部を除いて同じ人が最初から最後まで演じています。
若々しい時代から中年、高齢までを容姿の変化、声、体勢、顔つきなど全身全てでどんどん歳をとっていく。
時間軸にそって歳を重ねた状態で物語は終わるのですがカーテンコールは輝かしい時代の姿で登場します。
そのギャップに役者さんの凄さを感じました。
先程までの孤独で小さくなっているような印象から一変、白いドレスのエリザベートが登場した瞬間のあの輝かしさ。
眩しくて美しくて気付けば涙が。
また、周りがどんどん年月を重ねるなか黄泉の帝王のトートはずっと変わらず美しいまま。その対比も面白かったです。
演出と音楽がどれも美しい
演出がどれも美しく、そんな表現の仕方もあるのかと驚きが多かったです。
特に好きだったのは天井から下がった巨大なナチスの旗がスッと落ちるところ。
巨大なものが一瞬で消えるのは視界が面白く感じました。
暴動などの表現もアンサンブルの方々が多いので大迫力でした。
また、アンサンブルとは別にトートダンサーという方々がいます。死の使者のような方々がトートの周りを渦巻き、美しく舞い、時には死の世界へ誘う。
演出はもちろん、この方々のビジュアルにもとても惹かれました。
音楽は生演奏です。
中央下にあるオーケストラピットから流れる贅沢。
わたしはブラスサウンドが好きなのですが、音色が美しくて音出しの段階から感動がとまりませんでした。
ミュージカルなので歌が多い作品ですがどの方もどの曲もとても良くて。
特に「闇が広がる」は生で聴けて嬉しかったです。
ルイジ・ルキーニ
今回の舞台で知っていた役者はルイジ・ルキーニ役の黒羽麻璃央くんとジュラ役の加藤将くん。2.5次元俳優と言われる畑のお二人です。
麻璃央くんはテレビで拝見して認識しているくらいの俳優さんですが、こんなに大役を演じているとは…出突っ張りじゃないか…!という変な感動に溢れていました。
物語を進行させる大変な役どころを素敵な歌と表現力でパワフルに演じられてて、自分の中のイメージからガラッと変わりました。
最後に
長年公演が行われ愛されているこのミュージカル。
世界観が美しくウィーンにタイムスリップできる作品でした。
幼少期のエリザベートの歌が元気がもらえるからもう一度聴きたいなと思っています。
正直、わたしの頭ではこの一度では処理できない部分が多かったです。
エリザベートがシシィって呼ばれてるなど呼び名が異なる点と
どんどん歳をとるので人の顔で誰なのかを認識するのが難しく、多分この人と思っていても違う人だったり。
情報を補完ができず困惑する部分が多くありました。
あらすじや登場人物を下調べしてから行ったらもっと楽しめたかなと思います。
でもこれはこれで。
情報を一切入れない初見のエリザベートは一度しか味わえないので後悔はしていないです!
素敵でした!おわり!