オードリー若林さんの『おもしろい』の正体とは?
『おもしろい』とは何なのか?
「おもしろい番組」
「おもしろい企画」
「おもしろい話」
幸運にも世の中には『おもしろい』コンテンツが溢れているが、人それぞれ、その時々で『おもしろい』に込められる意味合いは異なる。
同じバラエティでも
『カメラが捉えた衝撃の瞬間25選』と
「オードリーのトーク番組」の『おもしろい』
は異なるし、
同じオードリーのトーク番組でも
『あちこちオードリー』と『オールナイトニッポン』の『おもしろい』も異なる。
今回は、コンテンツの『おもしろい』を紐解き、僕たちが若林さんに感じる『おもしろい』の解像度を上げてみたいと思う。
1. 『おもしろい』とは?
コンテンツの持つ情報は、
以下の3つで構成されている。
① 事実 : ありのままの事象・事柄
② 見解 : 事実に対する意見
③ 発想 : ゼロイチのアイデア
例えば、
『カメラが捉えた衝撃の瞬間25選』
であれば、
「衝撃の映像」という①事実が流され、
出演者が映像への感想(②見解)を述べ、
芸人が気の利いたコメント(③発想)で笑いを生み出す。
①②③それぞれの情報には
「表現」という、制作のクリエイティブと
「誰」のという、演者の個性
というパラメータが含まれる。
単に「衝撃の映像」を垂れ流すのではなく、
編集の仕方によって引き込まれるし、
出演者のコメントや気の利いたボケも編集の力でテンポの良い魅力的な番組に仕上がる。
同じ感想でも綾瀬はるかさんが言えばお茶の間は盛り上がり、
同じボケでも松本さんが言えばネットニュースになる。
2. 『おもしろい』の解釈の違いとは?
コンテンツは①事実②見解③発想で『おもしろい』を積み上げる。
積み上げの配分はコンテンツにより異なる。
芸人さんは③発想で勝負するコント番組などのピュアなお笑い番組を夢見るが、実現できる実力者は一握りで、
多くは、情報番組やクイズ番組など、興味深い①事実で数字が稼げる番組の隙間に③発想を投げ込む仕事を強いられる。
芸人さんが、VTR中心の番組で短いコメントしか残せない事への不満を述べるが、
視聴率を支える高齢者層が、新鮮な情報という①事実に『おもしろい』を感じる環境下、情報番組中心の編成の流れには抗えない。
帯の情報番組のMCを芸人さんが担うケースも多く、芸人の1つの成功パターンとされている。
芸人さんは、情報番組を回して、専門家の②見解を引き出しながら、③発想でスパイスを加えられる貴重な存在だ。
芸人さんは全員が③発想で勝負を開始するが、芸歴を重ね、機会を得る中で、①事実②見解③発想、どこで勝負したいのか、どこで勝負できるのか、を見極めていく事になる。
そして、この狭間で、『おもしろい』の定義の解釈の違いと価値観の違いが生じる。
例えば、
西野さんの新しい事への挑戦は①事実として、多くの人に興味深く『おもしろい』
中田さんのYouTube大学は、書籍などの内容にプレゼンが掛け合わされ、①事実としての情報が濃く『おもしろい』
西野さんや中田さんの活躍の中で得られた知見は、②見解として披露してもらえ、独自性があり、これまた『おもしろい』
そして、①事実②見解の展開の中で、所々に散りばめられるコメントも芸人さんの③発想として『おもしろい』
結果、コンテンツの持つ『おもしろい』の総量が大きく、価値が高いものが出来上がる。
一方で、芸人さんの特性である、③発想だけを切り取った時には『おもしろい』の量はさほどではない。
ここが、現代において世間や芸人さんの中で使われる『おもしろい』の解釈の違いの所在だ。
世間には芸人さんの『おもしろい』とは、③発想である、という共通概念が残る。
多くの芸人さんの目標は③発想で天下を取る事であるが、
その舞台であるはずのテレビには、もはや③発想だけで勝負できる番組を作れるスペースは大きくない。
世間は『おもしろい』というのは③発想の話だと言いつつ、視聴するのは主に①事実と②見解で『おもしろい』を積み上げたコンテンツなのだ。
その変化を捉え、『おもしろい』を意味変(by西野さん)し、コンテンツの『おもしろい』の総量を増やすことにシフトしていった芸人さんに注目が集まっている。
以前、東野さんが、紳助さんからの教えを話していた。
● 20代は100面白いこと考えてたけど、30代になったら70~80は面白いこと言って、あと20~30は人が納得することとか、情報をしゃべらなアカン。
● これが40代になったら、50:50になり。50代になったら、20:80になり。60代になったら、0:100ぐらいでエエくらい。
これは、年代による①事実②見解③発想のバランスシフトの話だが、
これはコンテンツを受け取る側も同様であり、年を重ねるごとに①情報②見解を求めるようになる。
平均年齢が上がる日本において、マーケットの規模を意識した場合には『おもしろい』の解釈を定義し直さなければならない、という事だろう。
一方で、マーケットなど意識せず、芸人さんとして③発想に命を燃やすという姿のおかげで、僕たちは漫才やコント、ピュアなお笑い番組を堪能できている。
3. 若林さんの『おもしろい』とは?
さて、若林さんはどうか?
若林さんには以下の特性がある。
①事実の深掘り
②見解の深掘り
③発想の安定感
トーク番組では、ゲストの①事実②見解を巧みに深掘りし『おもしろい』の量を増す。
流れや空気を読んだ合間のボケ・ツッコミ(③発想)には安定感があり、安心して見ていられる。
『あちこちオードリー』
『オドぜひ』
『しくじり先生』
『激レアさん』
はこの勝ちパターンがハマっている。
①事実②見解の深掘り
は自分に向けても発動される。
『オールナイトニッポン』
『無地note』
『エッセイ』
は自分の②見解の積み上げだ。
『ソレダメ!』
『どうぶつピース!』
『潜在能力テスト』
『スクール革命』
『ヒルナンデス』
は①事実で量を取る番組であり、特性である①事実②見解の深掘りも披露の場がない。
この切り口から見ても、やはり撤退すべき番組というのは明確に線引きされる。
(いや、このくだり何回目やねんと)
安定感のある③発想を駆使して、目の前の対象や自分の中の①事実②見解を深掘りすることにより、積み上げる『おもしろい』の総量
これが若林さんの『おもしろい』の正体ではないだろうか。
4. 若林さんは何と言うか?
「いやさ、佐久間さんが前に何かのインタビューで、若林は面白がって人の話を聞くって言ってて、まぁここで言う、深掘りってことなんだと思うんだけどさ。でも激レアさんとか、素人さん相手だど、掘るどころか、拾うのに精一杯の時とかあるからね。たまにホントにキモ冷やす時あるからさ」
「うーん、オドぜひも素人さんだけど、まぁそこまで変な人来ないからね、まぁイージーよね」
「そう、オドぜひのゲストは可愛いもんで赤子の手をひねるようなもんだけど、激レアさんはマジで空気読まないヤバイ奴来るからさ。こないだの伝説の営業マンも、何回かヤバい時あってさ笑、どう拾おうか、あわあわしてたんだけど、そしたら向井くんがもう普通に、つまんねーな!って笑。そういうのありなんだって衝撃だったんだよね。拾わずそのまま落として、穴掘るんじゃなくて、穴埋めちゃう感じで」
「向井くんね笑、彼は我々には踏めないペダル踏み込むことあるからね」
「我々って一括りにすんなや、お前なんかドッキリっていう制作の発想を事実化する為のコマでしかないんだから、トークについて語るんじゃないよ。佐久間さんが春日はよく笑うからゲストも話しやすいって言ってたけど、そんなのグラビアアイドルのアシスタントと同じじゃねーかよ。たまには拾うか深掘るかしろや!」
「うい」
『おもしろい』の総量と配分を可視化できたら面白いと思うな〜。Netflixのレコメンドとか、こういうのやってたりすんのかな。
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