深堀型スタジオゲストトークを覇するオードリー若林さんの3種の神器と自らに課した制約と誓約とは?
続けざまに2つの番組が同じ方向に企画を切り替えた。
向かった先は、若林さんが主戦場とする「深堀型スタジオゲストトーク」の舞台だ。
方向を切り替えたのは「櫻井・有吉 THE夜会」と林修先生の「日曜の初耳学」。
「櫻井・有吉 THE夜会」は”夜会ハウス”と呼ばれる一軒家にゲストを招いてのトーク形式に切り替え、「日曜の初耳学」は"インタビュアー林修”という林先生によるゲストへのインタビュートークをコーナーに設けた。
「深堀型スタジオゲストトーク」はTVショーの1つの花形であるが、そもそもどのような番組が放送されているのか、どのくらいの期間続いている番組があり、誰がMCをやっていて、芸歴はどのくらいか等々、素朴な疑問は尽きない。
本日は、なんとなく日常的に楽しんでいる「深堀型スタジオゲストトーク番組」の全体感と、舞台を覇する若林さんの有する3種の神器、自らに課した制約と誓約を紐解くことで、熱き戦場で若林さんが躍動できる背景の彩度を高めていきたいと思う。
1. 「深堀型スタジオゲストトーク番組」とは?
ここでは「深堀型スタジオゲストトーク番組」を以下のように定義する。
●MCがゲストを深堀りしていくことを主体としたトーク番組であること
●レギュラー放送であること
●VTRや企画形式といったゲストの深堀手法は問わない
※「踊るさんま御殿」や「ダウンタウンDX」等のエピソードトークを主体とした番組は含めない。
※「日曜日の初耳学」等の1つのコーナーとして構える番組は把握しきれないので含めない事とした。
上記の定義に従い、現在、関東キー局で放送中の番組は以下の20番組と整理した。
●NHK(1):逆転人生
●日テレ(6):アナザースカイ、しゃべくり007、おしゃれイズム、有吉反省会、今夜くらべてみました、オドぜひ(中京)
●テレ朝(4):徹子の部屋、しくじり先生、新婚さんいらっしゃい!(朝日)、激レアさん
●TBS(4):金スマ、A-Studio+、人生最高レストラン、櫻井・有吉 THE夜会
●テレ東(3):じっくり聞いタロウ、カンブリア宮殿、あちこちオードリー
●フジ(2) : TOKIカケル、おかべろ(関テレ)
日テレが6番組を展開する一方でフジは2番組と少ない。
番組の放送期間、メインMC(芸歴)はどのような状況であろうか?
※以下、敬称略
<2000年以前開始>
●新婚さんいらっしゃい!(放送期間50年):桂三枝(芸歴54年)
●徹子の部屋(44年):黒柳徹子(68年)
<2000年代開始>
●金スマ(19年):中居正広(34年)
●おしゃれイズム(16年):上田晋也(30年)
●カンブリア宮殿(15年):村上龍(45年)、小池栄子(23年)
●しゃべくり007(12年):上田晋也(30年)
●アナザースカイ(12年):今田耕司(35年)
●A-Studio+(12年):笑福亭鶴瓶(49年)
<2010年代>
●オドぜひ(9年):オードリー(21年)
●今夜くらべてみました(8年):後藤輝義(26年)
●じっくり聞いタロウ(8年):名倉潤(35年)、河本準一(27年)
●TOKIOカケル(8年):城島茂(35年)、国分太一(33年)、松岡昌宏(32年)
●有吉反省会(8年):有吉弘行(27年)
●櫻井・有吉 THE夜会(7年✳︎):有吉弘行(27年)、櫻井翔(25年)
●しくじり先生(5年):若林正恭(21年)
●おかべろ(4年):岡村隆史(31年)、石田明(21年)
●人生最高レストラン(4年):加藤浩次(32年)
●激レアさん(3年):若林正恭(21年)、弘中綾香(8年)
●逆転人生(2年):山里亮太(22年)
●あちこちオードリー(1年):オードリー(21年)
放送期間としては、同一司会者によるトーク番組の最長放送でギネスに名を刻む「新婚さんいらっしゃい!」、放送回数11,000回以上の「徹子の部屋」というお化け番組が他の追随を許さない。
どの番組のメインMCも、基本的には20年以上の芸歴を重ねており、この戦場においてはオードリーすらまだまだ若手だ。
芸人以外は、黒柳徹子さん、村上龍さん、小池栄子さん、TOKIO、櫻井翔さん、弘中アナだけ。
弘中アナに関しては、若さと女性、局アナという希少さからも特筆すべき存在であると分かる。
2. 若林さんの3種の神器と自らに課した制約と誓約とは?
20を数える「深堀型スタジオゲストトーク番組」のうち、4番組は若林さん/オードリーがMCであり、数の上では既に若林さんはこの戦場を覇するトップランナーとも言える。
無論、放送期間という意味では、黒柳さん、三枝さんというレジェンドを除いても、10年以上を2番組抱える上田さんの後塵を拝しており、今の4番組を着々と続けていきたいところだ。
さて、「深堀型スタジオゲストトーク番組」の熱き戦場における若林さんの唯一無二性とは何であろうか?
それは若林さんの有する以下の特質と表現できる。
1. 間口の広さ
2. 無限の包容力
3. 掘削能力の高さ
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1. 間口の広さ
若林さんが担う4番組は、番組毎に迎えるゲストの属性が異なり、その幅は圧倒的に広い。
● オドぜひ : 普通の素人さん
● 激レアさん : 凄めの素人さん
● しくじり先生 : 幅広い業界人
● あちこち : 大物MCから売出し中の芸人さん迄
「オドぜひ」で友達にちょっとした憤りを感じているだけの普通の素人さんを相手にする一方で、「あちこちオードリー 」では今田さんやロンブー淳さんといった大物MCをゲストに迎え、まさにピンからキリまで、話を深堀りしていく中で夫々の面白さを引き出していく。
色とりどりのゲストを迎えられる柔軟性、間口の広さは業界屈指であり、さながら素人からプロ中のプロ女優まで、限りない間口の広さであらゆる素材の良さを活かすソフトオンデマンドの如きである。
素人さん相手に面白さを引き出して番組を成立させるのは、かなり高度な空気感のコントロールが必要であり、他番組のMC勢を見渡しても、「オドぜひ」と「激レアさん」を成立させられるのは、上田さんくらいではないだろうか。(テイストは大分変わるが)
一方、若林さんであれば、様々なスタイルの他番組もある程度は回せそうだなという印象を受ける。
ただ、「今夜くらべてみました」の後藤さんの代わりは難しそうだ。
ゲストが3人並ぶこと、徳井さん、指原さん、SHELLYさんという脂っこいMCが横に並ぶ大人数トークスタイルであり、カミソリの如くキレのある突っ込みでなぎ倒していくスタイルが求められるが、若林さんにその適性はない。
同じ理由で「しゃべくり007」も円滑に回せるイメージがない。
さて、若林さんが素人さんまでを含め、これだけ幅広い属性のゲストを迎えて、スタジオトークを展開できるのは何故なのだろうか。
2. 無限の包容力
1つには、無限の包容力により、相手を問わずガードを下げられる事であろう。
若林さんは、ゲストの芯から引き出すコメントと、それに対する突っ込みにより面白さを醸成するスタイルを志向する。
芯に近づく為には先ずはゲストの胸襟を開かせる必要がある。
若林さんは何を言っても拾ってくれる、という安心感を抱かせることで、ゲストに自由度を与え、他の現場とは違う角度から腹の内を見せてもらえる空気作りを心がける。
ニューヨークは佐久間さんのラジオの中で、やりやすいMCとしてオードリーの名前をあげていた。何言っても大丈夫な感じであり、いい意味で舐めてかかれると。
若林さんの何を言っても大丈夫な感は、受け身の上手さにも起因している。
若林さんは、必ずしも熟れていないゲストに対しても突っ込みを許容する腹を見せる。ゲストは心の余裕を得て、ノーガードで胸襟を開いていける。
若林さんの腹を見せられる余裕は、どんな角度からの突っ込みが来ても受け身を取れるという自信から湧き出るものだ。
この受け身の柔軟性は、長年積み重ねてきた場数の賜物に他ならない。場数が余裕を作り、余裕がゲストに安心感を与えるというポジティブなスパイラルが回っている。
この安心感の醸成によりゲストの警戒心は解かれ、心のガードは下がる。さながら童話「太陽と北風」の太陽の如く、ゲストは気づくとラフな本音一枚の姿になっている。
若林さんの凄みは、この安心感を素人さんまで分け隔てなく与えられることであり、素人さんに腹を見せていけるまでにプライドの償却を終えていることだ。
素人さん相手だから自分で面白くしてやろうといった驕りはなく、直向きに面白さの所在を確認していく作業に徹する。
3. 掘削能力の高さ
その上で、若林さんはまずは自分の胸の内を曝け出し、自らが際どいラインを攻める事で、ゲストにもっとアクセルを踏める、もっと踏んでみようかな、という意識を擦り込む。
さながら自分の恥部にリグを打ち、掘削機を回すことで深さを出し、ゲストにその深さに慣れてもらうかの如きだ。
欲しがり系のMCのように、掘削作業の序盤で笑いの広さを求めることはせず、ゲストの芯や本当に伝えたい想いが自然と湧き出るまで掘削機を回していく。
掘削性能の高さが、ゲストを未踏の腹中の披露に誘い、視聴者は未知との遭遇と若林さんの見解をエンジョイできる。
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若林さんは、これらの少数キャパにフォーカスした3種の神器を手中にする上で、瞬発力と大胆な支配力が求められる大人数形式での躍動の可能性を伏した。
また、3種の神器により実現するゲストとの裸の組手を、責任を持って偽りなき共鳴にまで導く為に、常に本音と事の本質と対峙し、腹落ちする言葉への落とし込むことを自らに課した。
まさに、3種の神器という特質系能力を得る為に、自らに課した"制約と誓約"である。
誰しもを受け入れる間口の広さと、程良い初夏の暖かさ、抜群の掘削能力という3種の神器を有する一方で、少数の収容キャパシティという制約と、本音本質との常なる対峙と言語化という重い誓約を自らに課した特質系能力者である若林さんは、
今後も視聴者の高年齢化とコンテンツのスマホ視聴化に伴い成長が見込める「深堀型スタジオゲストトーク番組」の市場で更なるポジションを確立していくに違いない。
3. 若林さんは何と言うか?
「制約と誓約を持ってきたか〜、自分を苦しめているものが実は自らが課したものであると整理するアプローチね、、、これはアリかもね」
「掛かってるからね〜同じ音でね。いわゆる韻ですな。そういう意味でもアリですな」
「いやお前、ホント、色々間違っててぶっ飛ばしたいんだけど、とりあえず冨樫先生に謝れ。冨樫先生の途方もない奥行きが平面に見えるお前みたいな奴が扱っていい言葉じゃないのよ」
「いや、捉え方は人それぞれでしょーがよ!私は、単なる同じ音として捉えたわけで、それ自体を冨樫先生が否定するものではないでしょうよ」
「お前みたいに中身のない知名度とモンクレールのダウンを得る為に、ピンクベストとテクノカットという制約と外出時のクミへのお伺いという誓約を課されたクソみたいな人生歩んでる奴が触れていい存在じゃないのよ、冨樫先生は」
「モンクレール、何回言うんだよ!芸人としての矜持と愛ある生活の為の制約と誓約でしょうがよ!」
「快楽を優先して、クミさん1人を守る為に、自らでは制約も誓約も課せなかった情けない奴だって言ってんだよ、いい加減にしろ」
「うぃ」
何気なく制約と誓約を置いてしまう冨樫先生の緻密さとセンスに改めて畏敬の念を抱きます。