恋人持ちの感覚が知りたくて、疑似体験しようとした話
季節は春から観測史上最も短い梅雨が明けて夏になった。
季節が変わると色々環境変化が起こるが、人間関係もそうらしく、めちゃくちゃカップルが生まれるらしい。春から入ったコミュニティでバカスカカップルが生まれ、Twitterはもはやカップルののろけが昼夜問わず流れてくる。
こんな世界にいれば思うだろう。
あ~なんか、ワイも恋人欲しなってきたわ~と。
しかし、カップルとは自分以外に別の誰かが必要なこと。一朝一夕ではどうにもならない。
その上、年齢=彼氏いない歴の私にはもはや何をすべきかもわからない。
クソォ!あのカップルたちの楽しそうな姿!私もなんか彼氏作って楽しくなりたい!あわよくばその気持ちを創作のネタにしたい!
正直手っ取り早いのはそこらじゅうのカップルたちをモニタリングしてしまうことだが、流石に気色悪すぎるし、可哀想すぎて心が痛む。
しかし、夢小説書いたり、乙女ゲー作ろうとしたりするには、私の恋愛経験が貧弱すぎる。なんとかして、カップルの気持ちが知りたい。
この強き思いが私に一つの案を閃かせる。
せや、彼氏いるつもりで一日過ごしてみっか!
ということで、まずは好きな人に告白するところから始めた。
イマジナリー彼氏、爆★誕
私、本日付で彼氏持ちになりました。
とはいえ、流石に遅いのでイチャイチャもほどほどに寝ることにします。いや~彼氏持ちになった瞬間世界が輝くなぁ。今日はよく眠れそうだ!
翌朝、9:50ごろ。
普通に絶起した。アレクサが鳴らなくて。よく眠りすぎちゃった。彼氏はさすがに昨日の晩付き合ったばかりだし、そもそも私はスマホのアラームも無視しているので、鬼電したところで起きなかったろう。モーニングコールはない。
しかしいつも通りTwitterに絶起の旨をツイートしたところ、彼氏から遅れてでも授業出るように連絡がきた。
ということで、私は二限だけでも行くために準備をする。
11:00ごろ。
初彼氏との初デート(徒歩5分)ということで、めちゃくちゃメイクに時間かけてしまった。なんなら髪も巻いたし、ハーフアップにしたし、普段はしないのに香水もつけた。お前遅刻してる自覚あるか?
恋は盲目ってこういうことか~!
家出てちょっとくらいのとこに彼氏と待ち合わせ。彼は医学部で瀉血のこと考えてるということになっているので、この時期は授業もなく、こうして呼び出せばすぐ来てくれる。優しか~!
人生初デートは大学に行く通学路(5分)だけだが、もうこの時点でいつもより楽しい。夏の眩しくて暑くて正直憎いところしかない太陽も、今日は世界を輝かせる照明としての役割を果たしている。
まぁ、私も彼氏も日光に弱いので日傘の中に入っているのだが!相合傘なのだが!
あ~もうこの5分永遠になってほしい。
そう思っているうちに学部棟。マジで離れがた過ぎて彼氏二階まで階段上らせた。階段上ったとこでバイバイしてくるの寂しすぎる。え~ん、講義今すぐ終わらせて一緒に帰ろう(泣)
しかし、まじめな彼に促され、45分遅れながらもきちんと教室に向かう私。この日はドア横の席が空いていて、ラッキーだった。世界が私のリア充化を祝福してくれている。
二限が終われば昼休憩。
彼氏とランチ……といきたいところだが、普通に私は友達と学食で食うルーティンなので、医学部で授業がなく、私を大学に送った後、家に帰った(ことになっている)彼氏には家で昼食を摂ってもらうことにした。
なんか突然、彼氏できたからって友情捨てる女にはなりたくなくて……。
なんも考えてなくて彼氏に激似のアイドルのグッズと写真撮っちゃった。アーニャ、彼氏恋し~♪
昼食後も友達と雑談に興じる。やっぱアタイら、彼氏ができたとしても、ズットモだょ!
そうこうしている内に昼休憩の時間も終わってきたので、学生のたまり場みたいなとこに行くことにした。冷房ついてるから。
そしてそれと同時に彼氏を呼び出す。すぐ来てくれる。すげー都合のいい彼氏だ!
学内生協ショップでは、七夕過ぎて一週間くらいにもなろうという日に、七夕抽選会をしていた。
1等の景品は遊園地のペアチケット。私は彼氏持ち。狙うしかねぇ。
ところでこういうガラガラ系福引、彼氏がいるならケーキ入刀の如く一緒に引きたいよね!
引きました。
四等のホームパイ貰いました。くそー!ペアチケットじゃねぇ!
その後も抽選券求めて生協ショップで購入を重ねるも、4等のホームパイしか当たらない。もはや5等の飴のほうがレア度高いのか?
生協ショップで値段稼ぎのために購入したハーゲンダッツを彼氏と分け合う。二人で分け合えば、惰性で買ったアイスもおいしさが5万倍くらいに感じる。分け合うっていったって、彼は優しいのでほとんど私に譲ってくれるけど。
そして抽選会も終わり際に最後の1回を引きに行く。もはやこの時点で4等でさえなければ何でもよくなってきた。もう上位賞が残っていないのなら飴でいい。むしろ飴がいいとすら願いながら、最後の福引を二人で引く――。
5等、飴!
ホームパイから解放された~!大喜び。スキップしながらたまり場に帰りました。
彼も、嬉しそうな私を見て嬉しそうにしていますね。
と、たまり場に帰るも、もう日も傾いてきた。大学の知り合いたちも帰っていく。
私も明日小テストと発表あるっぽいし、帰って課題やるかなぁと思い帰ることに。
また5分だけ通学路デート……かと思いきや、彼の提案で少し遠回りして帰ることに!一分一秒でも長く会ってくれるの、すき……♡
去年暇すぎて散歩しつくした大学構内の道も彼氏と歩くだけでイルミネーションして見える。ここが渋谷だよ、彼ぴ。
普段は目もむけないような花にまで目が行く。
そうこうしているうちに普通に私の家着いたので、お別れ……。離れがた過ぎて無意味に手をにぎにぎした。かわいいおててね。
こうして私の初彼氏疑似体験デートは終わった。
――かと思われた。
今日は2022年7月13日。スーパームーンの日であることをTwitterで知った私は自分の本丸に思いを馳せる。そう、初期刀の風流な刀に。
月見デート、めっちゃ雅じゃね?うちらに似合ってると思うよねっ?歌仙太郎!
ということで急遽彼ぴを呼び出し、お月見デートを決行。
彼氏からはこんな夜中に一人で出歩こうとしないで、と強く言われました。いつも閉店間際のドン・キホーテに滑り込みで行ってごめん……。
しかし、外に出て気づく。
あれ!?月なくない!?曇ってない?
お天気アプリ見たら確かに曇り。見えるって言ったじゃん!とTwitterみたら、『チャンスあり』の表記。
でもせっかく外に出たし、彼氏も会いに来てくれた。これならお散歩デートするしかない。あわよくば月も狙おう。
そんな気持ちで大学構内を歩いていたら、朧月が雲の向こうに見える!!大学の外灯明るすぎ!見えないだろ!
月に大はしゃぎする私を横に、彼氏、道の側溝から私をうまく避けさせてくれます。大学の周りの道暗すぎ!危ないだろ!
大学周りで一番夜空が綺麗に見える所といえば――そう、海です。
しかし、海岸線に着いた頃にはまた雲が月を邪魔している。そんなんじゃスーパームーンどころか、半月だよ。
こうなったら海岸で彼氏と駄弁りながら、スーパームーンがその姿を現すのを待つことに。
……なんか砂浜で花火してる陽キャおらん?こわ。
そう思っていたら、突然陽キャたちが打ち上げ花火を始めた。え~なんか月見に来たら、花火も見れちゃったな。
お月見花火デートじゃん!
粋なことしてくれた陽キャたちに350点!これが映画刀剣乱舞花丸 月の巻、かぁ~~~!
日付も変わってそこそこすると、陽キャたちも片付けを終え、帰っていく。
残されたのは、雲が流れてきれいに見える美しい月と砂浜に押し寄せる波の音ばかり。
めちゃくちゃいい雰囲気。デート終盤って感じがする。
ずっと私と彼は(陽キャが怖くて)堤防の上にいたのだが、誰もいなくなったし、せっかくなので浜に降りて、波打ち際まで行くことに。
会話はないけれど、一人で来た時の何倍も素敵な時間に感じる。
彼ぴ、少し海には思うところがあったみたいだけど、楽しそうにしてたと思う。
なんならツーショも撮った。暗すぎて後ろ海なのになんも映ってないけど。
そろそろ夜も更けてきたので帰ることに。彼氏との月見デート最高すぎかよ~!と浮かれて、堤防から飛び降りたら、厚底なのでこけました。彼氏に心配させてしまった。ごめんなさい。
それにしても田舎の夜は暗い。マジで街灯がなさすぎる。まぁ人も歩いていないので、不審者に遭うことも少なく、私は深夜徘徊をよくしているんだけど。
でも今日は彼ぴが、暗いところは心配だからと言って、明るい道に誘導してくれた。
あ~~~ん、そういうとこがすきすきだいすき!
こうして私と彼氏の1日が終わった。
さて、こうして書き記してみるとなんだかめちゃくちゃ充実してるし、世界が光り輝きすぎている。
もう幾度となく通った通学路は渋谷の青のイルミネーションロードさながらのデートスポットになったし、
彼氏と離れている間は恋しくて彼氏の写真見ちゃうし(待ち受け画面とかを彼氏彼女にしたり、スマホの裏にプリクラを入れるのはこういう心理なのですね)、
彼氏がいるだけで福引は1等のペアチケットを狙おうとしてしまうし、
彼氏が何も言わなくたって勝手に相手が自然にしてくれたことを愛おしく思うし、
スーパームーンを見たいなんて口実でデートに誘うほど一緒にいたくなってしまう。
そして何より、この間、SNSのことはなにも考えていない。
通学路でTwitterを見て、大学の講義中もTwitterを見て、スーパームーンもわざわざ外出るほどでもないしTwitterでいいか、と済ましてしまうほどの、クソツイ廃だが、この日ばかりは歩きスマホしなかった。偉すぎ〜!
これぞまさにリアルが充実しているというもの!
まさかイマジナリー彼氏でここまで私が盛り上がれてしまうとは……流石限界夢女子をしてきただけはある。
とはいえ、この検証にも限界が見えた。
そう
彼、ほぼ喋ってくれない。
動かねぇ。
私は頑張ればぬいぐるみの声が聞こえる家に生まれたので、彼から声を聞くことはできる。でもそれは、私にとって都合のいい時に都合のいい言葉しかくれない。
なんていうか、贅沢にも、もっともっと、と求めてしまうのだ。
もっと強く言葉をくれてもいいし、冗談が混じってもいいし、いっそもっと強く当たってくれても構わない。テンポある会話はやはりイマジナリーでは限界があるのだ。
それから、動かない。
全部私の側からのアプローチになってしまう。当たり前だ。わかっている。イマジナリーで、彼はぬいぐるみで、自分の意識で動けない。
でも、彼の側から手を握ってほしいし、指を絡めてほしいし、抱きしめてほしい。
あと実は学生の溜まり場でおしゃべりしてる時、存在忘れてました。
私が他の男と仲よさげに喋ってたら少し嫉妬してほしいし、牽制してほしいし、対抗してほしいし、後で二人きりになったときに独占欲を垣間見せてほしい。
はあ。ここまで書いて悲しすぎて涙出てきた。
結局まやかしの幸せだったんだ。私は真に充実なんてしていなかったんだろうし、それに私に彼氏ができたら、こうして求めてしまう人間なのがわかったのもショックだ。
現実の非情さに耐えきれなくなったので、ここで筆を置こうと思う。
次は現実彼氏がちゃんとできた時か、イマジナリー彼氏に魂を吹き込めた時に彼氏できた気分をまとめたいと思う。
確かに、恋人という存在がいる世界は楽しそうでした。
はやく私にも運命の相手が欲しいものです。ねえ?(ぬいぐるみに目をやる)
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