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乃木坂46と都市としての「乃木坂」との関係

AKB48は「アイドルは時代の一番エネルギーのある場所から生まれる」という秋元康の考えの元に、オタクが集う街「秋葉原」に劇場が作られAKB48というグループが「秋葉原」という地とより強い結びつきが生まれた。
その一方で乃木坂46に使われる「乃木坂」という地名は、本社が乃木坂にあるからという理由のみで採用されており、専門の劇場が存在するわけでもなければ、活動の拠点でもない。この「乃木坂」という地名がいかに浸透していないかが、デビューシングル「ぐるぐるカーテン」のカップリング曲「乃木坂の詩」という歌の歌詞に表れている。

乃木坂がどこにあるかなんて 僕らは何も知らずに来たんだ あやふやな夢を探してただけ

そこに行ったら見つかると 前を歩いてた誰かに聞いて 気づいた時には坂を登ってた

この歌詞からは「乃木坂」という地名の無名さ、現時点での無意味さを表しており、彼女たちの不明瞭さ、未知さとこれからこの地名を意味あるものにしていくという秋元康の都市空間としての認識が存在する。

そして、乃木坂46が「乃木坂」という都市空間と共に成長してきたことを象徴しているのが2016年3月にリリースされた16枚目シングル「ハルジオンが咲く頃」である。この曲は、一期生メンバー“深川麻衣”の卒業シングルである。女優へとステップアップするための卒業で、福神入りする超人気メンバー初の卒業であった。


この曲のミュージックビデオのラストシーンのロケ地が「乃木坂」の本社付近の坂で撮影された。初めは乃木坂がどこにあるかなんて知らなかったメンバーの一人だった深川麻衣が、「乃木坂」の坂道を登りながら、

『「努力」「感謝」「笑顔」 うちらは乃木坂 上り坂 さよなら また乃木坂で会いましょう 大好きだよ』

というシーンがある。港区乃木坂で一度もライブや握手会をしたことがないのに、「また乃木坂で会いましょう」というセリフにはまるで違和感がなく、これは「乃木坂」という都市空間が乃木坂46の「乃木坂」として確かに意味を持った証拠である。

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