異獣
お正月に飲もうと、ジャケ買いのような選び方で目をつけていた日本酒があった。
このラベルの雪男は、江戸時代の本、鈴木牧之『北越雪譜』に出てくる毛むくじゃらの「異獣」がモデルとなっているそうだ。
この毛むくじゃらの異獣はおにぎりが大好き。
山中に現れ、重い荷物を背負った旅人におにぎりをねだる。
そして、お礼に荷物を担ぎ道案内をして、目的地の村が見えてくると荷物を置いて山へと駆け去ってしまう。
もし私が旅人だったら、前を歩く異獣が突然振り返り、食べられてしまうのではないかとビクビクしながら付いて行くだろうけど。
『北越雪譜』ではこんなに可愛い雪の結晶も図絵で紹介されている。
実は、この「雪男」のお酒のラベルを見る前に、別の異獣に心をつかまれていた。
ノルウェーのアウトドアメーカー
『NORRONA』のトランプのジョーカーの
イラストの異獣だ。
一目見て、釘づけになる毛むくじゃら度。
可愛さとユニークさと摩訶不思議さの絶妙なバランス。
イラストレーターという存在の偉大さを感じる。
イラストレーター津村仁美さんが昔の登山家が使用したであろう登山グッズを、昔の資料を見ながらペン画でアンティーク風に描かれたトランプ。
ジョーカーの異獣は、北欧のアウトドアメーカー
に合わせ、北欧のおとぎ話に出てくるムーミンの
ご先祖さまがモチーフだそうだ。
昔ムーミンの本を読んだ時の私の読書メモによると、ご先祖さまはムーミンの一族がストーブのうしろで暮らしていたころからの人で、ムーミン家のストーブの中に今も住んでいるというが、誰も見た人はいないそうだ。
また、同じページにこんな言葉もメモしていた。
なぜこのムーミンママの言葉をわさわざ書き記していたのか。自分でもよく分からない。
このスナフキンの言葉は、メモをするのに
ふさわしい。
忘れてしまっていたので、
今年一年よく覚えておきたい。
他に異獣っぽい存在を思い出してみた。
***
日本酒に戻ります。
毛むくじゃら異獣が気になって仕方がない私は、
「雪男」がほしい。
異獣のお話を思い出しながら飲んでみたい。
近くの日本酒が得意な酒屋さんに行ったけれど、残念。雪男は売り切れで、もう今季は入荷しないとのこと。
まあ、雪男はまたネットで注文すればいいやと思い、せっかくだから他のお酒を買って帰ることに
した。
お店の人に日本酒の好みを聞かれたので、日本酒はよくわかっていなくて、雪男はジャケ買いです(笑)えへへと正直に答えた。
ジャケ買いならと、可愛いオコジョラベルの特別純米生酒「如空」を出してくださったが、うーん
可愛すぎて違う(笑)とまた正直に答えた。
「人喰い岩」など妙にそそられるラベルもあったが、結局ジャケ買いをやめて、好みっぽい味の新酒のしぼりたて純米吟醸「七笑」を購入。
笑い上戸の私にはぴったりのお酒かもしれない。
ネーミングもお正月にびったり。
夫がお正月用に作っていた、得意の低温真空調理のローストビーフ、ローストポーク、牡蠣とマッシュルームのマリネにも合いそうだ。
「濃い料理にも合う」と説明書きがされていた。
おお!鶏レバーの赤ワイン煮も作ってくれていたはず。 いける。
という感じで、お正月に向けて日本酒や
シャンパン、ワイン、ビールを買い揃え、
料理も色々作り、準備万端だったのに、
それなのに、
年末に帰省した息子がまさかの発熱。
家庭内隔離をして静かに静かに過ごしたお正月となった。
年末年始をほとんど寝たきりで過ごした息子は元気になり、「うつってないことを祈る」と苦笑いしながら新幹線で帰って行った。
新年の挨拶に行く予定だった私の母もいる姉宅には仕方なく電話のみとなり、元日の夜は、夫と二人で静かに七笑を飲んだ。
すき焼きの予定だったが、息子が食欲ゼロで寝込んでいたため、翌日に持ち越した。
簡単なおつまみを
せめてお正月らしく金と銀のお皿にのっけて。
静かなお正月になったけど
「七回笑えば七福(たくさんの幸せ)が来る」
七笑はお米の優しさを感じる、爽やかなお酒でした。
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