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膝小僧トミー
私はnoteで最近発足した、内なる子供を探究する「アーチストチャイルドクラブ」略して「ACC」
に入部している。
( DKC というクラブも兼部中)
詳しくはこちらのあやのんさんのマガジンへ
人形、人形...お人形...
人形について考える時間が増えるうちに、遠い記憶がよみがえった。
インナーチャイルド、内なる子供...
でも、なぜか反対の方へ反対の方へ...
外なる子供...
外なる子供....
***
私が中2か中3の頃の話。
私には7歳上の姉がいる。
当時姉は大学生で、京都で一人暮らしをしていた。私は週末によく姉の下宿へ行き、京都中の色々なお店に連れて行ってもらった。
中でも大好きだったのは、新京極にあった詩の小路ビル。雑誌「Olive」が大好きだった中学生の私は、「DEP'T」で古着を買ったり、「文化屋雑貨店」「大中」「となりのみよちゃん」で雑貨を買ったり、わいわいきゃっきゃと楽しんでいた。
そして多分、文化屋雑貨店だったと思う。
顔だけの人形を買った。
週明けに学校へ持っていき、友達と笑うことだけを考えてニヤニヤしながらレジへ持って行った。
外国の少年の顔だけの人形。
名前はトミー。
でも、それが商品名だったのか自分で付けたのかは記憶が曖昧だ。
ネットで似た感じのを探し、この写真を見つけた。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/142167327/picture_pc_3f301adaf08caf68768e416fac60761b.png)
でも、ちょっと違う。
もっと「少年!」という感じで、金髪で、
そばかすがあった。
仕方がない。
捨てずに置いておかなかったの自分が悪いのだ。
週が明け、学校にトミーを持っていき、早速友達に披露した。
みんな、ぎゃあぎゃあ言って、笑いながらキモチワルがっていた。
私は中高と平和な女子校に通っていた。
好きなものをとことん追求できる自由な6年間を過ごした。
友達ときゃあきゃあトミーを投げあいながら
ふと思いついた。
これを膝小僧につけたら、人面瘡みたいで
面白いかも!
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/142177448/picture_pc_7adf943758ae65638edd3e6dd3331692.png?width=1200)
当時、私はホラー漫画やホラー映画が好きだった。
ばかばかしいけれど、恥ずかしがらずにnoteの記事にしている。
どちらも「おっちゃん」シリーズだ。
「サイコ2のおっちゃん」の方は、自ら「何の話だ」とつっこんでいる。
noteに少し慣れた今なら、なんのはなしですかと
タグ付けできたのになぁ。。。
友達が見守ってくれる中、早速トミーを自分の膝小僧につけてみた。
うまく空気を入れたり抜いたりして、ペコッと
くっついた。
「きゃー!膝小僧!膝小僧!」
みんなで交互につけて、ヒーヒー笑った。
ふと、ひらめいた。
これをつけて授業を受けよう!
どの授業でつけるか友達と相談した。
M先生がいい!ということになった。
M先生は世界史の先生。
教科書の内容以上の話を全くしない、無表情な先生。
笑った顔を見たことがない。
授業中に居眠りをしている子に対しても、何も注意をしない。メガネを指でクィッと上げ、ちょっと残念そうに見つめるだけだった。
当時私たちは、先生のことをティーチャーの一部を使い、M先生のことは「エムティー」と呼んでいた。
エムティーの授業が始まった。
先生が背を向けて板書をしている間に、私はスカートを少しめくりあげて、トミーを膝に装着した。
席替えのくじ引きで最前列の教卓の横という最悪な席が当たっていたが、そのときは初めて良かったと思えた。
板書が終わり、くるっと教卓に手をつきながら
ボソボソと解説を始めるエムティー。
私は教卓の下の席から、エムティーを強く見つめ、スカートをすこし上げて膝を見せた。
でも、全く気付いてくれない。淡々とボソボソと教科書通りの話が進んでいくだけだった。
再びMティーが板書を始めたとき、斜め後ろの
Tちゃんが「パス!パス!」と口を動かした。
私はトミーを膝から外し、Tちゃんに投げた。
Tちゃんも自分の膝にペコペコっと空気を調節してトミーを装着した。
板書が終わり、こちらを向いたエムティー。
でも、Tちゃんの方を全く見ない。
もしかすると、誰とも目が合わないように話すのが当たり前になっているのかもしれない。
Tちゃんは大人しそうな可愛い顔をしているけど、時々とても大胆なことをする。
「うっ、、痛っ、痛い...」と声に出してひざを
触った。
エムティーは、どこかの文明についてボソボソ話しながら、チラッとTちゃんを見た。
そして、やっと膝小僧トミーに気づいてくれた。
次の瞬間、「スッ」と音を出してエムティーが笑った。メガネのずれをクィッと指で正しながら、すぐに真顔に戻ったけど。
そして、小さな小さな声で「何をやってるんだか
」とボソッと言いながら、笑った顔を見られないようにサッと黒板の方を向いた。
教卓すぐ下の私にはしっかりエムティーの
笑った目が見え、彼が発した「スッ」の音を聞いた。
ただこれだけのことだった。
でも、ものすごく達成感があった。
***
先日、母校から同窓会通信が届いた。
ページをめくると、いい感じにおじいさんっぽくなったエムティーの写真があった。
何と退職された後、牧師さんになられていた。
どこかの教会で、説教をされているエムティー。
今の時代、検索すれば教会は分かるはずだ。
行ってみようかな。
一番前に座ろうかな。
膝に人形の顔をつけて。
アーチストチャイルドと関係ないし、
インナーチャイルドも関係ないやん。