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なりたいもの

犬の足の付け根。
特にしば犬の
下に向かってほっそりしているところや、意外に乾燥してそうなところがなんとも言葉にならない。
香りは、えもいわず。
凛としたお顔にそぐわない隙がそこにはある。
犬が思っているより素敵なんだぜ。

天井。
どんな人も天井には見下ろされる。
天井の上にはなれない。
家人が何を食べ、何を話し、何を見て、何を思うのか。
見下ろしながら、全てを観察してみる。
天井は下しか見ることができない。
家人の生活を眺めることしかできない。
たった一つ見下ろすことだけしかできない。
が、それでいいような日もある。

眼鏡。
目が悪くなってしまうと世界を正しく見ることはできない。
レンズを通して見た世界は本当の姿を映してはいない。
広義では眼球もレンズという主張はこの際無視してみる。
偽物の世界を映し悦に浸る恥者の眼鏡になり、変えられた世界を、自分を通して変わってしまった世界を持ち主に見せてあげたい。

10月の空気。
秋のツンと肌を刺す涼しさが好きで、夏を置き去りした颯爽感そのものになりたい。
10月はイチョウの葉を放らせ、彼岸花や金木犀を咲かせ、地面な空を色付ける。
10月の空気で人々を冴えわたらせることだってできる。
さしたイベントはないかもしれないけども、日常の特別感は他の比較にならない深みがあるんじゃないかと思う。

線香。
真っ直ぐで折れやすく芳しい。
燃えて白くなる様は生まれ変わるようで、灰になって消えるのは潔く。
一筋の煙があがっていくところも含め、無駄がなく美しい。
こんなふうになれたらと火を付ける。
どんどん灰になれ。

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