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アルプスアルパインが視覚障がい者支援!? 技術で未来の移動を変えていく!

視覚障がい者が安全に、自由に移動できる最適な方法とは何でしょうか。

古くから視覚障がい者の移動を支える手段として白杖や盲導犬、同行援助などがありました。
近年では技術の進歩により、道案内を音声で提供するアプリや、周囲の状況を音声で説明するアプリなど、新しいツールもどんどん生まれています。

そんな中、アルプスアルパインでも視覚障がい者を支援するため、2つのプロジェクトが進行中です!
今回はそれぞれのプロジェクトを紹介します。


視力が非常に低い人の安全な歩行をサポートする帽子「ロービジョンハット」

病をきっかけに始まった挑戦

1つ目に紹介するのは、ロービジョンハットです。

開発者は長年車載事業に携わるS部長です。

数年前、S部長は夜盲症や視野狭窄、視力の低下などが症状としてあらわれる進行性の目の病気があることが分かりました。

病気が発覚してS部長が考えたこと、それは

「目がもっと悪くなったときに使えるものを、自分で作ろう!」

もともとパワフルで前向きな人柄でしたが、こんな大変な事態でも落ち込むのではなく開発意欲に結び付けるスーパーポジティブ部長です。

それまでもS部長はカーナビなどの商品開発に長年携わっていましたが
今までと違っていることは、自分が患者=ユーザーである、ということ。
つまり自分がいいと思ったものが他の患者にもきっと受け入れられる。
自分にもよい、社会にも貢献できる、会社の売上にも貢献できる、三方よしの開発が始まりました。

当初は視覚障がい者全体をターゲットとしていましたが、先天性/後天性、全盲/弱視か、といった違いでニーズも異なることに気づき、後天性のロービジョン(≒弱視)の人をメインターゲットとすることにしました。
視覚障がい者仲間からのフィードバックを受け、試行錯誤の末に完成したのが、現在の「ロービジョンハット(第二世代)」です。

ロービジョンハットの機能とは?

見た目は普通のハットですが、アルプスアルパインのハプティック(振動子)とセンサーが搭載されています。

メイン機能は二つ。

1.コンパス機能
北を向くと帽子が振動し、方向を教えてくれます。
これは、狭い視野では現在地を確認しづらいという課題と、色弱だと地図アプリの矢印が示す方向を見づらいという課題を解決するためのものです。

2.障害物検知
白杖を使用する際、足元の障害物は杖先を当てることで認識できるけれど、頭の高さに飛び出している看板や木は気づかず激突するという課題を解決するためのものです。
(飛び出した障害物への激突は視覚障がい者あるあるだそうです)

内蔵センサーが障害物を検知すると、ハプティックが振動し利用者に警告し、激突を防ぎます。

音声案内にように視覚以外を使って道案内をしてくれる製品は他にもあります。
白杖のように足元の危険を伝達するツールもあります。
でも、道を案内しつつ、顔周りの安全を確保してくれる製品は今までなかったのではないでしょうか?

ゆくゆくはどんな帽子にも後付けできるような構造にして、
オシャレも楽しみながら安全な移動を実現する製品になる予定です。

「視覚障がい者がみんな同じ帽子をかぶっているのは違和感でしょ」
とS部長。

S部長は製品化までの目標を2年としています。
残念ながら進行性の病気のため、きっと5年くらい先にはもっと目の機能が衰えてしまう…
その前になんとしても製品化を果たしたい、そんな思いで今日も開発を進めています。


4社で切り拓く未来「AIスーツケース」


2つ目のプロジェクトは、視覚障がい者の自立移動を支援する「AIスーツケース」。
これは、日本科学未来館の浅川智恵子さんが主導する「次世代移動支援技術開発コンソーシアム」で開発されており、「誰もが自由に移動できる社会」を目標としています。

このプロジェクトには、アルプスアルパインを含む4社が参加し、それぞれの技術力を結集させています。

AIスーツケースって実際どんなもの…?

AIスーツケース、見た目は普通のスーツケースです。
その実態は、なんとロボット。
利用者の半歩先を移動して、目的地まで安全に連れて行ってくれる視覚障がい者の移動支援ロボットです。

▲スーツケースを持って旅行に行く人のように見えるけれど…

まず利用者は音声やアプリ操作から目的地を指定します。
ハンドルを握るとスーツケースが動き、目的地まで誘導してくれます。
スーツケースにはLiDARセンサー、深度カメラ、加速度センサー、高精度測位サービスなど「目」として働く部品が搭載されており、周囲の障害物や他の歩行者を認識するので、モノや人との衝突を防ぎ利用者を安全に誘導する仕組みです。

アルプスアルパインの役割


その中でアルプスアルパインはハンドル部分の開発を担っています。

スーツケースはハンドルを握ると動き出し、離すと止まります。曲がるときにはディスク型の方向指示器が触覚でハンドルが曲がる方向を教えてくれます。突然動き出して利用者が驚かないように、走行開始は振動で知らせます。

利用者はハンドルを通してスーツケースに指示を出し、ハンドルを通して多くの情報を受け取ります。

ハンドル部分は利用者が触れる唯一の部分です。
利用者はハンドルを通してスーツケースに指示を出し、ハンドルを通して多くの情報を受け取るため、ロボットの動きを把握するための重要な情報源となります。

つまり!

ハンドルの使いやすさを向上させることが、AIスーツケース自体の印象や安全性にも影響を与えます。
だからこそ、開発担当者はもっと良い仕組み、もっと使いやすい形や配置を追い求めて、人間の身体構造や感性工学を考慮しながら常に改善を進めているそうです。

▲進化を続けるスーツケースのハンドル部分

視覚障がい者向けの音声案内は進化を遂げていますが、白杖を使って進行方向や周囲の安全を確認しながら音声案内を理解するという複数の作業を同時にこなすことは、ユーザーにとって大きな負担となります。
その点、AIスーツケースは進行方向の誘導と周囲の安全確認の両方を担うことができるため、ユーザーの移動の負担を減らす画期的なツールとなるかもしれません。

さらに、スーツケースという形状には、隣を歩きやすい、そして街中で目立ちにくいという特徴もあります。
中には、白杖などを使用することで、周囲に視覚障がい者だと知られたくないと考える方もいます。
そういう方にとって、街に自然に溶け込むスーツケースの形は大きな魅力の一つになるのではないでしょうか。

少しずつ、変えていく


ロービジョンハット開発者のS部長はこう語ります。

「数百年前、メガネがない時代には、視力が低いために狩猟や読書ができない人は障がい者とされた。
テクノロジーがメガネを生み、目が悪い多くの人がその苦しみから解放された。
自分もテクノロジーで障がいに関わる課題を解決して多くの人にとって生きやすい世の中をつくりたい」

私たちの企業理念は、「人と地球に喜ばれる新たな価値を創造すること」です。
これまでに培った技術を活かし、障がいを持つ方々へ新たな課題解決の手段や選択肢を提供し、喜びや安心を届けたいと考えています。

お知らせ


最後に大事なお知らせです!

このAIスーツケース、2025年4月から開催される大阪・関西万博の「ロボットエクスペリエンス」でも実証実験が行われます!
詳細は調整中ですが、事前申し込みすればどなたでもデモを体験できますので、ぜひ一度次世代の視覚障がい者支援機器をお試しください!