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創作童話 バナナのロケット 1/2

 夏休み最後の日、ナナコはお母さんに留守番を頼まれた。 
「おばあちゃんのお見舞いに行ってくるわね」 
「お兄ちゃんは?」   
「野球の練習でしょ」      
そうだった。お兄ちゃんは中学生になってから「部活、部活!」と言ってちっとも遊んでくれなくなった。  
「あぁお腹がすいたー」       
ナナコはテーブルの上にあったバナナを一本もぎとった。
玄関からまたお母さんの声がした。 
「宿題は終わっているの?」      
「あとちょっと」
 ドアの閉まる音がしてナナコはちょっぴり安心した。    
「最初にゲームをして〜」       
ナナコはバナナの皮を一皮むいた。
 「次に今日のお手伝いをやって〜」
そしてもう一皮むいた。
「それからまたおやつを食べて〜」
またもう一皮むいた。
「最後に宿題かぁ…」  
最後の皮をむくとナナコはため息をついた。   
その時だった。
 バナナはナナコの手からスルリとぬけて空中をクルクル回り始めた。 
「あれ?」
ナナコが目を丸くして見ていると、バナナは回転しながらまるで皮のプロペラを回すようにして、頭の上を一回りした。
 ナナコが手を伸ばしてバナナをつかもうとした時だった。
バナナはヒラリとナナコの手をかわすと窓から外へ飛び出した。
「ああ!待ってよう!ナナコのバナナ!」
 ナナコは急いでくつをはいて庭へ飛び出した。  
空を見上げると遠くの方に黄色い鳥のようなバナナが飛んでいるのが見えた。
ナナコはさけんだ。          
「ナナコのバナナ〜!戻ってこ〜い!」
 すると、黄色い鳥のようなバナナは回転しながらどんどんナナコの家の庭に向かって降りてきた。 バナナは回転するごとに大きくなってブワンブワン音をたてながら降りてきた。        
地面につく頃には、二階建てのナナコの家の屋根と同じくらいの高さになっていた。
「わ〜!ロケットみたい!」
ナナコはバナナをさわってみた。
 バナナの皮は鉄のようにかたくツルツルしていた。その時、ビーンという音がしてさっきナナコがむいたとおりに皮が四つに分かれてアーチ型に降りてきた。その一つははしごのような階段がついていた。
ナナコは登ってみることにした。
 ほんのり甘いバナナの香りがした。
中に入るとそこにもはしご階段があった。
 何段も登ってやっと上までたどり着くと、そこは小さな部屋になっていた。 
丸い窓があって、小さないすとそうじゅうレバーとボタンが3つあった。
 ナナコはいすにすわってみた。
すると、どこからか声がした。
       
『キイロイボタンデ ドアノカイヘイ ハッシャジュンビ』
             
ナナコはドキドキしながら、黄色のボタンをおしてみた。

              つづく










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