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創作童話 バナナのロケット 2/2

 そのとたん、ギギーンと音がして四つに分かれたバナナの皮が元どおりになって一本のバナナになった。    
するとまた声がした。 
「アオイボタンデ、ハッシャ」     
ナナコは青いボタンをおしてみた。
 そのとたん、背中がいすに張り付くようになってキィーンという音がした。
 そのうちバナナが横向きになると、ナナコの座っているいすも回転した。
「わああ、すごい!ナナコが操縦しているんだぁ」
 丸い窓からたくさんの星やくだものが飛んでいるのが見えた。
 ナナコはそうじゅうレバーを右へ左へ上へ下へと動かして、飛んでくる星やくだものをかわしていった。   
「テレビゲームよりおもしろ〜い!」
ナナコはすっかり夢中になってロケットを操縦した。
しばらくするとまた声がした。
「オレンジのボタンデ、チャクリク」
ナナコはオレンジのボタンをおしながら言った。
 「どこかについたのかなぁ?」
 キューンと音がしてバナナのロケットがどこかに着陸したようだった。
 ナナコは黄色のボタンをおした。
すると、バナナの皮がまた四つに開いた。ナナコははしご階段をおりて、一つの皮をすべり台のようにして外へおりた。
「なんだかきたない星だなぁ」
ナナコは足元の星の表面を手でこすってみた。そうするとピカピカのきれいな黄色になった。   
「よーし。きれいにしてあげるからね!」
ナナコは自分の着ていたシャツをぬいで星をみがきはじめた。
 しばらくすると、あたりは見違えるほど明るくなって黄色のきれいな星になった。
「フウー、働いたらお腹がすいちゃった」
ナナコはバナナのロケットにもどった。
 ロケットのかべは美味しいバナナだったので、ナナコは顔中バナナだらけになりながら夢中でかぶりついた。
お腹がいっぱいになったのでナナコはまた青いボタンをおした。バナナのロケットは発射した。  
しばらくするとまた声がした。
「ソロソロトウチャク、オレンジのボタン」  
ナナコは言われた通りにオレンジのボタンをおした。
 バナナのロケットはあっという間にナナコの家の庭に着陸した。
黄色のボタンでバナナの皮のとびらが開いた。 
ナナコは皮のすべり台をおりた。
「わ〜い!」
 さっきより長い長いすべり台で気持ちが良かった。   
はっと気がつくと、ナナコは庭にすわっていた。 
手には皮をむいて色の変わったバナナを持っていた。ナナコはバナナをじっと見て、それからにっこりわらった。
「ゲームもしたし、お手伝いもした。おやつも食べたし…あとは、あ、宿題!」
 ナナコは急いで部屋にもどった。
ナナコの夏休みの宿題はお絵かきだった。
「どこにも行けなかったから書けなかったんだぁ」
 ナナコはそう言ってバナナのロケットで宇宙旅行をしている絵をかいた。
 夜になってお兄ちゃんが帰ってきた。
 「ナナコ、今日の三日月きれいだよ」
 ナナコは急いで庭へ飛び出した。
そしてよごれた自分のシャツをチラッと見て言った。      
「本当だぁ、ピカピカにみがいたバナナみたいだね!」

                おわり


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