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お月さまのスープ 2/2

 次のまん月は海色の山ぶどうと朝焼け色のトマトの入ったスープでした。そしてその次は森色のグリンピースのミルクスープでした。
 冬になって、お月さまは森の食べ物が減ってきたことを知ると、何日もかけて集めた森の木の実や木の子を入れたスープを作りました。
 動物たちが一度食べたらなかなかおなかがすかないような不思議なスープでした。
 クマが言いました。
「お月さまのスープは力が出るね」
キリンも言いました。
「うん。それにみんなとなかよくなれる」
ゾウも言いました。
「お月さまのスープはなんでこんなにやさしい気持ちになれるんだろう」
すると、赤ちゃんグマが言いました。
「お月さまのスープはまほうのスープだからだよ」
 きつねがそれを聞いて言いました。
「そうか、まほうのスープかぁ」
そしてフクロウが言いました。
「こんどのまん月には、みんなでお月さまをきれいにしてあげよう!」
 ところが、その日から来る日も来る日も雨が続きました。
 動物たちは夜空をながめては、がっかりするばかりでした。
 お月さまは黒い雨雲に包まれて、いつものぼんぼりのようなあかりはどこにも見えませんでした。そして黒い雲はいつまでたってもお月さまからはなれようとはしませんでした。
 とうとうフクロウが、動物たちを集めて言いました。
「お月さまをかくしているあの黒い雲をはらいのけられないだろうか」
 カラスがワシやサギにも相談を持ちかけました。
 ワシがはねを大きく広げて言いました。
「森中の鳥たちを集めてやってみるよ」
 夜になると、空にはいつも見えていた星と同じくらいのたくさんの鳥たちが集まって来ました。
 少し雨がおさまって来た時をねらって、ワシやサギが先頭に大きくはねを広げて風を送りました。
 たくさんの鳥たちは口ばしで雲を引っ張りました。
 動物たちは、ブナの広場から夜空を見上げて鳥たちをおうえんしました。
 しばらくするとキリンがかん高い声で言いました。
「お月さまの顔が見えた!」
 ゾウも鼻をふって言いました。
「がんばれ!がんばれ!もう少し!」
 黒い雲はどんどんはがれていって、お月さまにはわたがしのような雲がうっすらかかるくらいになりました。
 赤ちゃんグマがさけびました。
「お月さまがわらったよ!」
 そのとたん、まっ黒だった夜空に星たちも姿をあらわしはじめ、ピカチカピカチカ光りだしました。
 動物たちは大きな声でいっせいにさけびました。
「わーい!鳥さんたちありがとう!」
 鳥たちは夜空に円をえがくように飛ぶと、やがて長い帯のようになって帰って行きました。
 お月さまはお風呂上がりのような顔をして、にっこりほほえんでいるように見えました。

              おわり

あい。さんのステキなイラスト画像使わせていただきました。
ありがとうございました🥰



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