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データセンター関連記事まとめ

直近マイクロソフト・GOOGLEなどがデータセンター投資を日本にすると発表したり、NTTデータがデータセンターREITを発表したりと、データセンターに関する話題が数多く出ているので、主に投資対象としてのデータセンターとしての資料を網羅し簡単にレビューしてみた。


1.参照DCレポートと前置き

・2024/7/8 JLL: EFLOPS、レジリエンス、脱炭素と日本のデータセンター不動産市場
・2024/6/5 JLL : データセンター 2024年グローバルアウトルック
・2024/5/15 CBRE : データセンター流動化の黎明 ←こちらがまとまってたのでメインで参照。

データセンター(DC)は現在有望なアセットクラスとして人気を集めている。筆者も何年か前不動産仲介をやっていた時データセンターについて調べたが、そのときは"DCへのニーズが高まっても、テクノロジーの進化により機材の小型化も進み、必ずしもニーズと床需要が比例するわけでもなく不動産としてみるのは困難"と考えて放置したが、どうやら技術革新により小型化が進む以上に需要が増えており、DCも不動産のアセットタイプとして確立しつつあるようだ。

また昨今は米国の利回りがそろそろ下がる観測が高まってきているのでキャピタルリターンへの追い風が吹いており、加えて昨今のAI技術の発展によりデータセンターニーズはますます加速していることから、金融マーケット・ファンダメンタル双方で追い風が吹いてきている。

加えてオフィスやレジデンシャルのような伝統的セクターとのリターン相関性も低く、賃料上昇率も高いことから、キャピタルの追い風&成長ストーリーの描きやすさ&分散投資の観点から"So Why don't you invest in DC?"ないきおいだ。

2.投資対象としてのDC

データセンターを投資対象として見た場合まずは気になるNOI利回りだが、以下の通り日本は利回りが低下を続ける中で比較的高い利回りとなっている。

CBREレポートより

従前のブログでも紹介した通り、米国ではオフィスやレジのような伝統アセットに対して、データセンター、ライフサイエンスやメディカルオフィスなど非伝統アセットをポートフォリオに組み入れるのが盛んに行われているが、これはNOI成長率の高さ(インフレ耐性)、伝統アセットのリターンとの相関性の低さなどによる。
これにより投資が盛んに行われているDCだが、以下のようなテナントの特徴を有するなどオペレーショナルな性質が強く、また高圧電力確保が必要など参入障壁が大きいことも、高い期待NOI利回りに寄与していると見られる。

CBREレポート

3.テナントについての考察

収益の源泉となる賃料を払うテナントはマイクロソフトやグーグルに代表される巨大なサーバーリソースを保有するハイパースケール事業者、サーバー設置スペースを外部化したい企業向けに共有スペースの提供をするコロケーション/ハウジング事業者などのデータセンター事業者や、エンタープライズ(企業)テナントが代表的である。参考までにCoPilotで表形式で特徴・短所・長所を出してもらった(だいたい合ってるかな?)

CoPilot生成

CBRE資料はこれを運用形態別にまとめており、不動産アセットオーナーがテナントを区分する際は、よりわかりやすい整理となっている。

CBREレポート

さらに、CBREは投資家/運用会社の観点から、以下の様に所有形態による区分もしている。データセンターアセットの大きな特徴としてDC設備、すなわち償却資産の割合が通常の不動産に比べ大きくなっており、償却費やCAPEXがPLを圧迫したり、大きい設備割合のため組入方法によっては法律上の要件を満たす必要があるなどの論点があるため、どこまでを所有しどこまでをテナントが持ち込むのかは実務上重要な論点となるだろう。

CBREレポート

具体例をそこまで詳しく見たことはないがおそらく、いわゆる不動産ファンド運用会社が投資する場合はオペレーションのノウハウが乏しいことから、直接投資の場合はシェルコア(スケルトン貸し)形で土地建物を保有し、データセンター事業者とリース&オペレーショナル契約を締結するホテル投資に近い形態になるか、オペレーションノウハウのある会社とJVを組むということになるのではないかと思われる(ご存知でしたら教えて下さい)。EquinixやDigital Realty等のUS-REIT銘柄はオペレーショナルノウハウが確立しており、またもともとDC事業をする会社が後からREITに転換した経緯から、オペレーショナル型だと想定される。

主要立地としては、APACだと東京やシンガポールがプライマリーマーケットにあたる。データセンターの制約条件は電力であり、発送電インフラが乏しい小国ではデータセンターの安定稼働に必要な電力を賄うことが難しいとのことであることから、高圧電力を安定的に供給する事ができるというのが重要となる。
日本でもデータセンター銀座と言われる印西や彩都など高圧電力が供給可能な特定のエリアに集積しているが、東京の電力キャパシティはAPACではシンガポールに次ぐ規模であるようだ。
電力キャパシティの乏しい国では政府による制限を受けており、シンガポールでもデータセンター開発を停止するモラトリアムを発動するなど政府による制御を受ける可能性がある。シンガポールでさえそうなのだから新興市場では政府による制御確率が高くなるだろう。

JLLレポート

それにしてもマップではUSのNorthern Virginiaのキャパシティが圧倒的にでかい。
Digital Realtyはデータセンターの場所を公開しているが、それによるとNorthern Virginiaに多くのデータセンターを設置しているようだ。ちなみに近隣にEquinixも数多くのDCを設置している。
不謹慎な事言うけど、ここら一体がテロ攻撃を受けたら世界にかなりの影響を及ぼしそうだ(バックアップはあるんだろうが)。

https://www.digitalrealty.com/data-centers/americas/northern-virginia
GOOGLEマップで位置を確認
さらに近隣で"Equinix"で検索するとかなりDigital Realtyの設置場所と被っている感じ

4.個別記事

・2024/7/11 ケッペル傘下のREIT、東京でデータセンター買収(関連:2024/3/11 KEPPEL TEAMS WITH MITSUI FUDOSAN ON DATA CENTRE OPPORTUNITIES, EYES FIRST JAPAN PROJECT)
→シンガポールKeppelが日本のDCを取得するニュース。関連記事では三井不動産とJVを締結している模様。詳しくは知らないが、J-REITの場合設備割合や導管性要件上、現法制上はREITでDCを買うのは難しい?と思われるが、シンガポールはできているということなので、現状インフラリートが太陽光リートとなってしまっている日本で、本格的にインフラリートを設立する場合は参考になるかもしれない。

・2024/6/24 NTTデータ、データセンターのREIT参入 1000億円規模
→NTTデータがREITの運用会社を新設するとしている。現状だとビークルは私募ファンドになるのだろうか?どういう形態になるか非常に興味がある。趣旨としてはおそらくNTTデータはEquinix, Digital Realtyのようなアセットベースのキャッシュフロービジネスを志向しているということなのだろう。

・2024/5/27 GAW CAPITAL ADDS THIRD SITE TO TOKYO DATA CENTRE CAMPUS, SET TO DOUBLE CAPACITY(NFM 2024/7/1 【開発】府中でデータセンター投資を倍増、ガウ・キャピタル)
→日本でイケイケで投資しているGAWキャピタルがデータセンター投資をしているニュース。"Gaw Capital, which declined to disclose the acquisition price or the identity of the vendor, completed the purchase less than two months after the fund manager inked a partnership with Shanghai-based data centre developer and operator GDS to redevelop the campus’ initial two buildings, with that portion of the project set to provide 40 MW of capacity when operations commence by the end of 2026."とのことで、どうやら上海のDCデベロッパー&オペレーターのGDSとパートナーシップを締結して開発したらしい。つまり不動産の運用はGAW、データセンターのオペレートはGDSがやるという分業体制となっている。こうしたオペレーショナルアセットに投資する際は良質な専門のオペレーターと締結するのが重要となる。

・2024/5/1  Brookfield and Microsoft team up for 10.5GW renewables push
→"ハイパースケーラー"のマイクロソフトが不動産運用がBXについで世界2位のBrookfieldとコラボするというニュース。Brookfield的には良質テナントであるマイクロソフトからの安定な賃料収入を獲得でき、マイクロソフトは低コストでキャピタルの支援を受けながらデータセンター事業を行えるWin-Winのアライアンスであると見られる。

・2024/4/10 マイクロソフト 日本事業に約4400億円投資へ 生成AI需要拡大で
→マイクロソフトがデータセンターを建設するという意味であるならば、今までのパターンから何かしらの不動産会社とJVを締結するのではないかと思う。ただデータセンターアセットを扱う際は外資に一日の長があるためどういうアライアンスに基づきハイパースケーラーが参入するのかは注目である。

・2024/3/7 MCデジタル・リアルティ、印西で“AI対応”の「NRT12」データセンター開業
→三菱商事と米Digital RealtyのJVであるMCデジタル・リアルティによるDC。総合商社は不動産事業もすでに強いが、こうした海外のノウハウ獲得やオペレーショナル色の強い被伝統的アセットクラスにおいては、総合商社は不動産デベロッパーにとってはより強力なコンペティターになるのでは?という気がする。

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