オルタナティブ投資の「民主化」
日経新聞に以下の記事があった。
プロ向け投信、個人に照準 ブラックストーンが国内販売:日本経済新聞
趣旨としては米国の誇る運用機関のブラックストーンが、野村ホールディングスと組んで米国のコア不動産を対象とするオープンエンドの不動産ファンドであるBREITを、日本の個人向けに一口5万ドルで販売するというものである。
オープンエンド不動産ファンドは日本の私募REITに相当する。なお、日本の私募リートがスポンサー企業からの物件取得が大半を占めるのとは異なり、ブラックストーンの不動産運用部隊が投資の意思決定を行う。
今まで不動産ファンドへの投資は、投資口あたり最低でも500万ドル〜と高く、適格機関投資家向けのみ販売される等、機関投資家が独占的に投資できる領域だった。
しかし今回一口5万ドル程度と何ならファーストリテイリング株よりも買いやすい価格でリリースされることで、機関投資家の独占的な投資領域が個人向けに開放、すなわち「民主化」されたという点で意義深いと思う。
運用業界全般に関して一般化して考えてみると、これまでは、情報の非対称性・取引コストの関係で、年金や保険等の機関投資家のみがアクセスできる領域が大半だったわけだが、ETFは民主化を格段に高めたと思う。
ウォール街のランダムウォーカー、敗者のゲームなど読まれた方も多いと思うが、これらの本でも描かれているように、ETFで気軽にインデックス投信が買えるようになったことで、素人でもプロと同等の成績を出すことが可能になったからである。
株式投資はこれにより民主化がなされたわけだが、不動産の領域では、個人は現物投資するか、せいぜいリートを買うくらいしかできなかった。しかしリートは株式との連動性が高いため、ハイリスク・ハイリターンの株式に対してミドルリスク・ミドルリターンとされる不動産の良さを活かせてないという問題があった。
今回のBREITの個人開放は、株式に比して安定的な成績を出すことができる米国の私募リートに個人でも投資することができるようになったことで、投資の幅が一つ広がったと言えるだろう。
情報の非対称性がネットの便利なツールで解消され、また取引コストもテクノロジーにより低減されることで「民主化」される。この流れは今後も続くだろう。
個人的には不動産のみならず、道路や発電所などのインフラや、資源採掘権などの、いままで情報の非対称性や取引コストの関係でアクセスできなかった資産にも、ワンクリックで個人が投資できる世の中が到来したら楽しくなると思う。
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