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西ドイツモノ作りの粋。【Kaweco Elite 48 1.18mm】

0.今回はヴィンテージ品を。

こんにちは、鬻です。noteを開設してから早6ヶ月、たくさんの人の目に留めて頂き、大変嬉しく思います。これからもよろしくお願いします。
さて、これまでは現行品の紹介が多かった当noteですが、今回の記事では廃番、ヴィンテージもののシャーペンを取り扱っていきます。
あまり見ることの出来ない、貴重な逸品ですので是非最後までご拝読を。

1.燻銀のEliteシリーズ

さて、今回ご紹介していくのはKaweco社のEliteシリーズ。

KawecoといえばSpecialシリーズを真っ先に思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。万年筆好きな方はSportsなどなど。
それらに比べ本シリーズは同社製品の中ではマイナーな部類ですね。
初代は1950年代から製造されていたそう。(1940年代との説も。)
当モデルは1960年代に廃番。2010年には後継モデルが発売、それに伴い、女性向けの少し小さいEleganceシリーズも登場しました。
ですがその2シリーズもそれぞれ2019年、2020年に廃番となりました。

直近のシリーズ。
画像出典:https://preco-corp.co.jp/wp-content/uploads/2018/11/KAWECO-PDF_14-20.pdf


後継モデルでも現在はそこまで流通しておらず、僕が最後に見かけたのは2022年の東京インターナショナルペンショーが最後になります。
さて、そんなただでさえ知名度が低く流通量も少ないEliteシリーズ。
初期のものとなると中々お目にかかれないのですが、先月神戸の元町にある590&Co.という文房具屋さんで購入することができました。

文房具好きの聖地。


「調べてもほとんど情報が出てこないので、どうせなら…」ということで
今回は少し詳しくご紹介。

2.スペック

まずはサラッとスペック紹介。

  • 全長:115mm

  • 最大径φ:0.8mm

  • 重量:12g

  • 素材:プラスチック

  • 芯径:1.18mm

  • 色:黒・金

  • ノック方式:ツイストノック(単動式)

一言でまとめると、"短くて軽い"実用性に長けたスペック。
ノック方式はツイストノック方式(上の天冠を回すことで芯を繰り出す方式)なのですが、現在のシャーペンに組み込まれている方式とは異なる"単動式"が採用されています。 仕組みや概要に関してはまた追々ご説明を。
また、芯径は今では滅多に聞かない1.18mm。こういったヴィンテージのシャーペンが作られた時代は、現在ほどの細さのシャー芯を作る技術が確立されておらず、1.18mmがメジャーな芯径として広く親しまれていたようです。
軸のカラー展開に関しては調べた限り、黒×金以外に万年筆で緑色のマーブル柄の存在が確認できました(おそらくセルロート製で、原料は異なりますがアクリル製のArt Sportsのような感じでした)。
さて、軽くスペックをご覧いただいたところで細かい部分を見ていきます。

3.解剖

.全体

全体を通してかなりシンプルなデザイン。ですが、最近はあまりこういったフォルムのペンは見ないような気がします。(なんでなんでしょう)
色はロングセラーの万年筆などでよく見られる黒と金の組み合わせ。
このカラーリングが一番シンプルでかつロマンの感じられてとっても好み。

ちなみにペン上部に巻き付いているシールを剥がすと、軸に刻まれた48という刻印が姿を現します。(Kaweco Elite 48の部分ですね。)
あと、シールに書かれている325という数字はおそらくこのペンが当時西ドイツ通貨であるドイツマルク単位での価格が3.25だったことに由来しているものと思われます。(325の3だけが少し大きいのはその為?)
また、これは小話になりますが同時期に販売されていたSpecialスペシャルシリーズのヴィンテージモデルとデザインが瓜二つなんですよね。
調べても、ヴィンテージモデルのSpecialをお持ちの方に伺っても理由はよく分かりませんでした。有識者の方がいらっしゃいましたら教えていただけると幸いです。

.天冠

少し画質が悪いですが、 天冠部分の画像です。

天冠部分には、Kaweco社のアイコニックとして現在も広く知られているベンツマーク(笑)に”KA/WE/CO”とそれぞれ書かれたロゴがあしらわれています。とっても小さかったので、カメラ越しだと中々ピントが合いませんでした笑

.ペン先・口金

ペン先は綺麗に曲線を描いていて、とっても握りやすい設計。
口金は金色の金属製で、切れ込みが2本入っています。
この切れ込みはおそらく、シャー芯が繰り出される時の摩擦を減らすための工夫だと思います。

4.分解

お次に内部機構について。

ペン先を回転させてあげることで内部機構を見ることができます(ツイスト部分は怖いので分解しません)。
現代のほとんどのシャーペンは芯タンクと、そこから出る芯の長さを調整するチャックを搭載していますが、このペンは先ほど紹介した通り"単動式"と呼ばれる繰り出し方式。一癖も二癖もある構造です。
では、その方式についてご説明。
まず真っ先に目を引く本軸から出る金属棒ですが、この棒は上のツイスト部分と連動しており、ノック部分を回転させることによって軸から繰り出したり収納したりすることができます(画像は繰り出した状態)。
そして、棒が繰り出されることで写真左側の口金部分に収納された芯が押し出されるといった仕組みになっています。ちなみに、現代のツイストノック式とは異なり、繰り出す芯の量を調整できたり、金属棒が降りてきた状態で芯をしまえないので、戻す際はわざわざツイスト部分を逆方向に回して、芯を指で引っ込ませてあげる必要があったり。

イメージ。

口金に入っている芯を押し出す、ということはつまり芯は口金部分の長さのものしか使えないということになります。

これだけ。

流石にこれじゃあ芯がすぐ無くちゃうし、芯タンクがないともなれば芯の取り替えも面倒!
ですがKaweco、考えました。
Kaweco社員:「芯タンクがないなら、本体にぶち込めばいいじゃない」(アントワネット風)
ということで、本軸部分に替え芯を収納する用のスペースが組み込まれています。

どうしてもピンボケしてしまいました…すみません。

この軸内部に見える赤矢印で指し示した黒い部分、ここが空洞になっていて数本の替芯を収納することができます。
こういった、極限までシンプルかつ、なるべくユーザーが不自由にならないようなモノ作りへの姿勢に、モノ作りの国ドイツ(正確には西ドイツですね笑)としての意地や思いやりが感じられます。

5.あとがき

さて、久々の長編となりましたがいかがでしたでしょうか。
ヴィンテージものはやはりロマンがありつつ、現行品との比較をした時に色々と個性が見つかって面白いですね。
また今回、恐らく単体のペン紹介では最長の記事となったかと思います。
僕自身あまりコレクションは多くないのですが、何かリクエスト等あればできる限りお答えしたいと思いますのでコメント欄に是非。
また、前回の記事から結構増え、フォロワーさんが70人目前です。いつもありがとうございます。
これからも毎月投稿目指して頑張ってまいりますので、末永くご贔屓に。それでは。

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