出所追究vol.3|中間支援組織って、何?
よく理解していないのに、知ったかぶって使っている言葉。以前恥をかいて(怒られて)以来、意味や定義をきちんと理解していない言葉は使わないようにしている。
で、今回取り上げるのが「中間支援組織」。非営利団体で働いているとこの言葉をよく見聞きする。自己紹介の際に「中間支援組織です」と名乗ることもあった。よく理解せずに。
「それ以上、いけない」
と呉さん<1>も言っている。そう。いけない。言葉は正確に用いなければ。
というわけで、この記事はインターネットで調べた内容を自分用の備忘録である。
青木孝弘<2>は、
と述べている。intermediaryの訳語ということは、元々は海外で使われていた言葉(概念)を輸入した、と予想。
次に「intermediary NPO」で検索してみる。さいたまNPOセンターの情報紙<3>には青木とは異なる記述が出てくる。
二つの英単語の和訳は、
intermediary・・・「仲介者」
infrastructure・・・「社会基盤」
であり、意味が異なる。果たしてどちらなのか。青木は日本での中間支援組織の起源に言及<2>しており、
と述べている。いくつかの主導的団体が報告書を出しているということで、日本NPOセンターの報告書をインターネットで検索すると、「NPO法制定10年の記録」というサイト<4>が見つかる。渡辺元へのインタビュー記事の中に、intermediaryとinfrastructureの意味合いについて言及している部分があった。長いが、重要な部分なので押さえておく。
つまり、日本のNPO法の制定に関わった民間サイドの人たちは、日本にもNPOを支援するNPOが必要だよね、という議論をした際、infrastructure=「NPOが活動しやすいインフラ(社会的基盤)」という思想を採用して中間支援組織という言葉を生み出したと解釈できる。また、さいたまNPOセンターの情報紙<3>には
との記述もみられる。
ここで、中間支援=「NPOが活動しやすいように支援すること」とした場合、その逆(for profit=営利企業)はどうだろう。つまり「営利企業が活動しやすいように支援する」の場合はどうか? を考えると、平成13年に内閣府が出した調査報告書<5>には次のような記述がある。
NPOも活動するためにはお金が要るし、人材育成もしないといけないし、活動には様々なノウハウが必要。だから、営利企業にとっての銀行や経営コンサルに代わるものとして、NPOを支援するNPO=中間支援組織、ということになる。
《参考文献》
<1>久住昌之=原作、谷口ジロー=作画、「孤独のグルメ」扶桑社、1997年
<2>青木孝弘「ソーシャルビジネスの基盤強化に向けて ―中間支援組織による2つのアプローチの考察―」会津大学短期大学部研究紀要第72号、2015年、https://www.jc.u-aizu.ac.jp/research/activity/2015/r_02.pdf
<3>特定非営利活動法人さいたまNPOセンター「さいたまNPOニュース さんぽ」No.57、2010年12月、https://sa-npo.org/wp-content/uploads/k_57.pdf
<4>NPO法人まちぽっと「NPO法制定10年の記録」、https://npolaw-archive.jp/?page_id=355
<5>内閣府「平成13年度 中間支援組織の現状と課題に関する調査」、https://www.npo-homepage.go.jp/toukei/2009izen-chousa/2009izen-sonota/2001nposhien-report
以上、『中間支援組織』という言葉の出所を自分なりに整理してみた。この内容と、自分の経験的感覚に照らし合わせると、中間支援組織=NPOを支援するNPO、というのはある程度納得がいく。
個人的には、中間という言葉からintermediary(仲介者)の方が起源かと思いきや、infrastructure organizationが意味合いとしては本質的な起源である、ということがおさえることができ、スッキリした。
意外にも内閣府の資料が置き換えて考えるヒントになった。銀行やコンサルとの違いの一つは営利/非営利だが、この「営利/非営利」も説明が要る。それも言い出すと、説明が長ったらしくならざるを得ない。営利/非営利は置いておいて、まずは infrastructure organization の意味合いから説明を試みたい。という訳で……
Q.中間支援組織って何ですか?
A.「NPOを支援するNPOです。銀行が企業に融資して事業を成長させたり、コンサルが企業に専門的アドバイスをする感じで、中間支援組織はNPOの活動がうまくいくようにいろんな支援をします」
う〜ん、長い。とりあえず、NPO自体をよく知らない人には「中間支援組織はNPOにとってのアドバイザー」くらいで捉えてもらう程度でよい……か。
NPOとNPO法人、そしてNPOの本質
最後に。誤解が生まれるといけないのだが、NPO法人はすべて中間支援組織ではないし、中間支援組織はNPO法人という法人格に限定されない。
この投稿ではNPOとNPO法人を分けて書いたつもりだが、馴染みのない人には「どっちやねん」「何が違うねん」と思われるかもしれない。
以前、とある行政から仕事を受託した際「おたく、NPOなんでしょ? じゃあボランティアなんだから、委託料いらないよね?」と宣う、もとい、ぬかされたことがあった。あまりにムカついて脳内血管が沸騰し、ハゲ散らかしそうになった。
法律に基づいて仕事をしている人たちでさえ、この体たらくだし、NPOという言葉はまだまだ市民権を得ていないと断言する。だって、みんな本質を知らないで使ってるんだもん。
NPOという言葉の狭義・広義はインターネットにゴロゴロ転がっているが、これに関しては自分なりの言葉で別の記事で書きたい。
NPOを使い勝手のいいボランティアだと思っている行政職員、首をキレイキレイして待っておきましょうね~。
出所追究は、主にまちづくり界隈で見聞きする言葉やフレーズの出所(出典・初出時期・起源・語源など)を追究していくシリーズです。