瀬戸大橋線架線切断トラブル総括
事故の概要
11月10日(日曜日)午前7時37分頃、高松7時8分発岡山行上り快速「マリンライナー10号」7両編成(JR西日本223系4両+JR四国5000系3両)が、児島駅約4㎞南側櫃石島付近(海上35m)の瀬戸大橋線上で停電により緊急停止した。乗客約150名は約6時間後、下り線上に横付けされた救援列車との渡り板によって移乗し岡山方面へ向かった。
7両編成列車屋根上にある3基全てのパンタグラフは損傷し、停車した列車の後方300m宇多津寄りの架線が一か所切断されていたことが判明。故障列車の児島駅収容と架線の復旧が完了し、全線で運転が再開されたのは午後8時頃であった。
事故発生時、茶屋町~宇多津間には当該マリンライナー10号のほか上り列車は上の町付近を特急しおかぜ4号が走行しており、幸い架線の饋電区分所が児島にあったため停電の影響は受けず岡山駅に到着した。一方児島駅手前の下り線を走行していた特急しおかぜ1号は、事故により抑止となり31分遅れで児島駅に到着後そのまま打切りとなった。
乗客救援までの経緯
11月14日一部の報道機関により、乗客救援までの経緯が明らかになった。これによると下記の状況であった。
7:37 下津井付近の瀬戸大橋線上で緊急停止
9:40 救援車両の横付けによる乗客救援が決定
10:30 救援車両を退行させ岡山方面へ救済することが決定
12:49 救援車両が児島駅を発車
12:59 救援車両の現地横付けが完了
13:29 事故車両から救援車両へ乗客の移乗が完了
13:48 救援車両の退行運転開始
14:15 救援車両の児島駅到着
乗客が救援列車に乗り換えた後、乾パンやチョコレートなどの食料と飲み物が配布されたが、緊急停車してから実に6時間後のことであった。また故障車両は停電していたため、トイレは使用できたものの水洗できず不衛生な状況であった。
救援までに時間が掛かった原因
対策本部が設置されたJR四国によると(故障列車が停止した位置の管轄・児島駅から北側がJR西日本)次の3つの救援方法が検討された。
①上り線に救援列車を接近させる
②下り線に救援列車を横付けさせる
③故障車両付近の高速道路上にバスを派遣する
①では切断架線が障害、③ではバスの手配と列車から高速道路上への移動ルート確保と道路上の規制が困難との結果、②の方法が決定された。⇒ここまでで2時間経過。
②の救済列車運転にあたり、JR四国側から派遣するよりもJR西日本からのほうが距離的に優位であったため、JR西日本との調整が必要となった。要請を受けJR西日本では、救援列車の乗務員と回送手配、誘導添乗員・渡り板・食料や飲料の手配に追われた。⇒依頼を受け救援列車発車まで3時間経過。
救済列車到着後、移乗の準備・実施退行運転開始。⇒約1時間経過。
今回の事象はJR2社の境界付近で発生しかつ故障車両も2社の車両が連結した編成であり、JR1社の対策本部だけの判断で意思決定が出来なかったことが原因であるのは明らかである。
影響・運休列車内訳
・特急しおかぜ:区間運休24本
岡山~宇多津間運休:㊦3~19号㊤8~28号、20本
岡山~多渡津間運休:㊦21・23号、2本
児島~宇多津間運休:㊦1号㊤6号、2本
・特急うずしお:区間運休5本
宇多津~高松間運休:㊦13・29号㊤6・20・22号、5本
・特急南風:区間運休25本
岡山~宇多津間運休:㊤4・8号、2本
岡山~多渡津間運休:㊦3~25号㊤6~24号、22本
児島~多渡津間運休:㊤2号、1本
・快速マリンライナー:全運休31本、区間運休20本
岡山~高松間運休:㊦9・13~19・23・25・29・33・37・41・45・49・
53・57・71号㊤12・14・18~22・26~30・34・42
・46・50・54・56・62号、31本
児島~高松間運休:㊦7・11・21・27・31・35・39・43・47・51号
㊤16・24・32・36~40・44・48・52号、19本
岡山~宇多津間運休:㊤10号、1本
・瀬戸大橋アンパンマントロッコ:全運休4本
岡山~高松間運休:㊦1号㊤2号、2本
岡山~琴平間運休:㊦3号㊤4号、2本
・全109本運休、15,000人に影響した。翌11日から当面の間、車両不足によりマリンライナー10号は7両編成から5両編成に、マリンライナー75号は5両編成から2両編成(全車自由席)にそれぞれ減車となっている。
折しも11月8日には東北新幹線古川~くりこま高原間ではやぶさ19号のパンタグラフと、新白河~古川間の架線損傷や架線金具2か所の脱落が発生し約3時間以上仙台~新青森間が見合わせとなった。電化設備の故障は復旧まで時間を要するため、日頃から復旧方法や乗客の救援方法の手順確認を怠りなく遂行して頂きたいものである。