歌声

歌声

 なんのために
  雨の予報とは裏腹に、
   青空が広がっている。  
  薄い雲は舞台装置のようで、
  青空は大きなステージにも見える。

 人は歌うのだろう
  あの先には宇宙があって、
  月とかエウロパとかの星があって、
  無限のような真空世界でも、
  歌は響くのだろうか。
  
 畏れや祈り
  青空に鳥のシルエットが重なる。
  青とシルエットは溶け合って、
  永遠のように、
  羽ばたいている。

 歓喜や嘆き
   わたしは思い描く、
   青空にあなたを。
   風が上昇する、
   あなたのもとへ。

 理由はさまざま 
        この想いを、
  この風に乗せれば、
  青空のあなたへと、
  届くだろうか。
  
 けれど想いはひとつ
        この想いを、
  この風に乗せて、
  この心を証明するために、
  わたしは歌う。

 銀河の果て先や
        青空にのぼったあなたに。
  銀河の星のまたたきと成ったあなたに。
  ありったけの想いと、
  精一杯のリリコレジェロで。

 あなたの指先へ
        終わらないカノンを、
  どこまでも高音なリフで。
  たとえば、ハッピーバースデーを。
  たとえば、手向けのアヴェマリアを。
   
    この愛を
        すでに聞こえないのはわかっている。
  もう届かないのはわかっている。
  でも、歌わずには、
  魂が許してくれない。
  
    届けるために
  だってこんなに青空だから。
  すべての希望を搭載したような、
  あなたが言ってくれた、
  澄みきった青空だから。

 わたしは歌う
        コンクリートからでもいい。
  どこかの頂上からでもいい。
  心の中でいい。
  涙に震えた大声でいい。
  
    歌声よ
        そこにはきっと、
  花が咲いている。
  
    響け
        希望を宿した、
  ガーベラが咲いている。

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