雪光
雪光
淡く、ひかりのような雪が明滅し
セイヨウハナズオウが春の風に揺れる。
川の水面をなでた風は、
優しい世界そのものだ。
僕は動けずにいた
君がくれたバルバのシャツ一枚だけで快適で、
丁寧に撚られた衣服は、
滑らかに肌まで浸透する。
古臭いペンダントには
北西には大聖堂。
午後の鐘は、
市街中に鳴り響いている。
慎重に切り抜いた君の微笑みが
白鳩が走り、
コダックの黄色いフィルムがそれを追う。
正面にはマクドナルド。
冬の星のように張りついて
木々の緑が影に揺らめき、
呼吸のように、
青空はその奥で静かだ。
冷たい
透明な呼吸と光線。
世界を織りなす根幹が、
ただこれだけならいいのに。
だから降り注ぐ雪を
路上の絵描きは、
ハナズオウの誇らしい、
紫色を表現できずに下を向いて立っている。
せめてものひかりで
春の風が川の流れに沿って、
芽吹く小花や生まれる微生物の、
新しい命の匂いを乗せている。
せめてもの思い出で、暖めて
どうか血反吐が流れる争いの場所にも、
この匂いが届いてくれまいか。
この、美しさに満ちた、
誕生の匂いが。