ギターを持つ
堀です。今日は「色即ラグーン」に続くスタジオアルバムの3回目のレコーディングでした。熱狂冷めやらぬうちにメモしときます。
いや、熱狂ではなかったです。けど、
なんか環境が良すぎてとても気持ちよく、
一日を終えました。
今日一日を振り返っていこうと思います。
その一日は、気持ちよく始まりました。
場所は世田谷、amuse studio。
藤井くん(以下トーイ)の仕事の縁で
使わせていただきました。
今回はドラムとベースのレコーディングでした。
ギターである私は基本録ることはないので、少し気楽でした。
とりあえずカメラマンをやりました。
Bassのとーいは、小指に絆創膏を巻いてました。スチール弦って、指削れるらしいです。
Drumsの桒原幹治(以下かんじ)はいつも通りでした。彼はいつも、いつも通りです。
二人練習を重ね、だいぶ仕上がった状態で迎えたレコーディング。おもむろに始まりました。
私と志門はでかすぎるソファーに座りながら、その悪くないムードを感じていました。
一曲目は、かんじ作曲の新曲。楽しい曲です。緊張をほぐしてくれたと思います。これはちょっとおかしな曲で、アルバムの中で、確実にいいアクセントになってくれる曲だと感じています。
順調にレコーディングは進んでいきました。
続いてトーイ作曲の新曲。速いテンポ。ベースがグリングリン動きます。その点すこしThe Whoの考え方を感じます。Drumsかんじがゾーンに入っていたのか、肩慣らしのテイク0がかなりよくて、ほぼ一発でキマりました。体力を使う曲だと思うので、長引かなくてよかったです。演奏直後のカンジの三角筋は、気のせいかパッキリとパンプアップして見えました。かっこよかったです。
一曲ずつ語り出すとキリがないのでこのへんにしておきます。この日は、トーイの旧友でありシンガーソングライターの小西くんが、運転手をしてくれていました。だけでなく、楽曲ごとに的確なディレクションもやってくれていました。おかげで自分はカメラ側になることができました。ありがとう。
順調に一曲ずつ録り終えていって、想定より時間に余裕ができたので、前回撮り損ねたボーカルのレコーディングもやりました。志門の出番です。
彼は、おのれの出番が近づくにつれ急激に元気を取り戻していました。彼は本番に強い方だと思います。おそらく、興奮するのでしょう。
その曲、作曲は大野志門、本人です。前回のレコーディングでは、納得のいく「歌」が得られませんでした。なので今回に持ち越しました。
しっとりと歌い上げる曲です。彼は今日に向けて「しっとりバイブス」を作ってきたようです。録音が始まりました。私は「バチクソかっこよく撮って」と言われ、カメラ、頑張りましたが、どうだか不安です。
何回かテイクを重ね、納得のいく歌が録れました。
荒野にて、茫然と立ち尽くす少年の姿が見えました。よくやりました。
時間がまだ余っていたので、トーイと僕のコーラスも録ることになりました。
とーいはよかったんですが、僕がちょっと悪いゾーンに入っちゃって、声が出ませんでした。時間も少しずつ押していました。
そこで、誰の発案か、突然ブースのドアが開いて、ギターを渡されました。
「ギター?」
ギターを持った瞬間、なんかすごくホッとした気持ちになりました。別に弾くわけでもなく、ただ抱えて、ギターを抱きしめながら、歌ってみました。
すると、声が出ました。不思議ですね。
自分にとっては、このシーンが今日のハイライトとなり、そのままこの日のレコーディングは終わり。首都高を駆け抜けました。景色がAKIRAすぎて田舎者としては、テンションが上がりました。そのまま世田谷から某駅へ。
腹を減らした5人は、某駅の「武蔵家」へ直行。
以前へろへろの状態で食べたその味が忘れられず、あの衝撃的な感動を追体験するべく、「ほうれん草ラーメン中」を注文。
「お先にライス」
硬めに炊かれた米に、しょっぱいたくあんを乗せ、掻きこむ。うまい。しばらくして、
「ほうれん草ラーメン 中」
来ました。あの時感じた感動は夢だったのか、おもむろにすすりました。うまい。夢じゃなかった。
なんかその時に感じました。今日一日が終わったのだと。そしてこのラーメンは確かに美味かったのだと。
各々が今日一日の余韻に浸る中、
「普通じゃなかった?」
という志門の発言に、私は冷静さを取り戻しました。
と同時に、けたたましい路上ミュージシャンの叫び声が聞こえてきました。
「すけべな!すけべな!すけべな!」
高架下、髭面の彼は、地べたにあぐらをかき、アコギをかき鳴らしながら、素晴らしいハイトーンボイスを放っていた。オーディエンスは一人、白髪のお爺さんが、寄り添うように正座してたたずんでいるのみ。
「すけべな!すけべな!」
そして、向こう側には、若い男性と、それを取り囲むファンらしき女性たちの姿。この不条理を嘆くように彼の声が響き渡る。
「すけべな! 女の子!」
我々は感動に包まれながら、気づいたら拍手していました。
たった一人の熱狂、たった一人の聴衆、見向きもしない人々、足を止めた我々、それぞれの人生が、この一瞬に重なり合い、爆発していました。熱狂し、シカトされ、焦がれ、失っていく中で、僕らも3rdアルバムを爆発させていこうと思います。
概ね、こんな感じでした。
まだまだレコーディングは残っています。
とにかく、3rdアルバムが産まれようとしています。
お楽しみに。
追記
日が変わり、昨日のレコーディングを聴いています。
怖いくらい良い音で録れています。
素晴らしい環境でレコーディングできたこと、
スタジオの方々、ありがとうございました。
完成が待ち遠しいです。
堀