14年越しに初めて見た光、それはオーロラ。
BUMP OF CHICKENが好きだった。多分、初めて聴いたときから。
僕が初めて彼らの音に触れたのは、多分中学2年か3年だった。jupiterというアルバムを、友人がMDに焼いてくれたのをおすすめしてくれた。それが出会いだった気がする。ハルジオンという曲が僕のお気に入りだった。
既にその頃から、天体観測は「いい曲」というのがはばかられるような曲……言ってしまえば「ベートーベンの第九、良いよね!」とわざわざ言わないような、そんな感覚のする名曲になっていた気がする。
程なくして、僕はBUMPにハマった。……と言ったら嘘になるかもしれない。
僕はその頃、「音楽」というものそのものに初めてハマったのだ。
親が聴いていたMr.Childrenのベストアルバムを借りて、innocent worldのリフが弾けるようになりたくてエレキギターを買ってもらったりもした。ミスチルに関してはI♡Uツアー東京ドームが僕の人生初のライブだ。あの頃の僕に一番何が好き?と聞いたら、きっとミスチルだというはずだ。
だからあの頃、BUMPは僕がハマった「音楽」というでっかいものの一部に過ぎなかった。
でも、その頃からずっと、BUMPは寄り添い続けてくれていた。何も言わなくても一緒に帰る友達みたいに。
ある時、車輪の唄のストーリーに涙した。情景が浮かぶ。主人公の感情が僕のものになっていく。別れの切なさ。それでも確かに残る微かなぬくもり。
あの時から僕は、音楽を聴いて泣く人間になったのだ。
程なくして、音ゲーにハマった。ポップンで叩きながら泣きそうになる僕の感性は、間違いなくBUMPが目覚めさせたものだった。
そしてクラブにも通うようになった。ハードコアを浴び、アニソンリミックスを浴び、アイドルマスターにもハマり、ライブにも行った。僕はいつしか音楽という点でもオタクになっていた。そうしたのはきっと、隠しトラックまで聴かせてくるBUMPだ。でもライブに行く機会はなかった。
それでも、僕が一度もライブに行かなかった間もずっと、BUMPは音を鳴らし続けていてくれた。時々は休みながら。
そしてRAYがリリースされた。BUMPは新しいことをしようとし続けているんだ、という衝撃を受けつつも、やっぱり僕のライブのパッションはアニクラとか、アイマスに向いていた。
そもそも、ライブというのは行くのが難しい。当選確率もそうだけれど、アルバムツアーはアルバム発売日から申し込みが一週間しかできなかったりして、発売日に買うような熱心なファン以外は行きづらいのだ。それで一般が絶望的な人気のバンドはなおさらである。
そうやってなあなあで過ごしていくうちに、アルバムのRAYが出て、Butterflyが出て、そしてaurora arcが出た。
新世界という曲でロッテとコラボしていた。その曲はRAYにもまして衝撃的だった。あっけらかんとした、湿度0%のラブソングをBUMPが歌っていたのだ。そんな事があるなんて!
BUMPがSpotify配信を始めたのもこの頃だった。僕には過去の名曲を振り返る時間が突然与えられた。
僕の曲だらけじゃないか、と思った。
高校生だった僕に寄り添い続け、僕のことを歌い続けてくれたBUMPは、大学を卒業し、いい年になった僕にまだ寄り添って歌い続けてくれていたのだ。
GOの「強くなくたって面白い」のは僕だ、と涙した。でこぼこ丸い地球の上、チケットもないのに夢を追っているのは僕だった。チケットがないと気付いたからこそ泣ける曲なのだ。一体いつまで彼らは僕の人生を追い続けてくれるんだろうか?
そしてなんとなくライブBDもついてくるし、という動機でaurora arcを買い、先行に応募した。
当選のメールが来た。
こんなに発券の日までウキウキしていたライブはなかっただろう。いい席だった予感でもあったのだろうか。緊張する保護者会をこなし、バイト先から近所のファミマに発券に行った。
14時からだった。早とちりしていた。
14時、ついに発券した。Aブロックの7列目だった。
信じられないという気持ちと、こみ上げる嬉しさを連番の友人にぶつけたが、半信半疑といった反応のまま当日を迎えた。
近い。しかも花道からかなり近めの、真ん中よりの列だ。
初めて来たライブでこんないい席をもらっていいものだろうか、と思いながらも、今日と言う日を忘れやしないだろう、と思った。
そして流れるaurora arc、Aurora。しかし、僕はまだ信じられなかった。ここで今2019年に、僕の目の前で歌っているのが高校生から好きだったBUMP OF CHICKENなのだろうか?こんなに長い間、いい曲を作り続けてきたのだろうか?
そして天体観測が流れた。その瞬間、僕の目の前で音を鳴らしている奴らは、BUMP OF CHICKENになったのだ。
僕の中で、14年間がひとつに繋がった。
だから、今はこう言える。