PAS TASTAの楽曲『turtle thief』について (和訳あり)
音楽プロジェクト・PAS TASTAの楽曲『turtle thief』が素晴らしすぎるので解説します。
あくまで全て筆者の解釈ですので、ご了承ください。
PAS TASTAとは
PAS TASTAは、hirihiri 、Kabanagu 、phritz 、quoree 、ウ山あまね 、yuigotの6人のアーティストによる音楽ユニットです。見る人が見れば目をパチパチさせちゃうような超豪華メンバー。メンバー各々の音楽性を活かした、多種多様で鮮やかなアレンジメントがその魅力です。
これまで4曲のSingleをリリースし、その度にネット上の多くのコアな音楽リスナーを虜にしてきました。この記事の投稿日の前日には、1stアルバム『GOOD POP』をリリース。これがハチャメチャな名盤。今年の名盤ランキングにも上がってくるでしょう。
そんなPAS TASTAの、1stシングル『turtle thief』を、今回は紹介したいと思います。
タイトルの元ネタ(?)
この記事のサムネイルの時点でお分かりでしょうが、本楽曲のタイトル「turtle thief」の元ネタは、2012年にYouTube上に投稿された動画『トンビにカメパンぬすまれた』だと思われます。
両親と一緒に海辺に遊びに来た少年が、大切に食べていたカメパンをトンビに攫われて、母親の腕の中で泣くという内容です。状況のシュールさ、少年の可愛さ、家族の愛情が感じられる、いつまでも我々の心に残り続ける名作です。
ということで、この動画が元ネタだと思われる理由を以下に羅列していきます。
曲名
曲名の「turtle thief」を直訳すると”亀泥棒”となります。そのまんまですね。
アートワーク
亀…というよりカメパンに似た絵が、空に浮かんでいるこのジャケット。
盗まれたカメパンの行方なのでしょうか。
歌詞
曲の終盤、一番盛り上がる部分の歌詞です。
トンビ視点の描写(?)ですね。
”OUT NOW”動画
本楽曲がリリースされた時に、PAS TASTAのYouTubeチャンネルで公開された動画です。
少年が猛禽類にカメパンを奪われて涙ぐんでいます。そのまま『トンビにカメパンぬすまれた』のあらすじですね。
細かいことを言うと、元ネタでは海辺にいたのに対してこの動画では川辺にいますが、細かいことなのでどうでもいいでしょう。
と言うことで、元ネタが分かったところで、次は歌詞の和訳を見ていきたいと思います。
歌詞について・和訳
この曲の歌詞は英語の部分と日本語の部分に分かれていますが、その英語部分を和訳したので紹介したいと思います。私は英語が得意ではないので、翻訳ツールや英語が出来る友人などに助けられながら和訳しました。正確性は必ずしも保証出来ませんが、大体あってると思います。
この部分はコロナ禍について歌っている気がしますよね。今でこそほぼ収束ムードですが、この曲がリリースされた2022年1月は、まだコロナ禍の最中でした。
この部分の前半(Fourteen days~bit of paper)は、コロナ禍において若者が置かれた状況を暗喩しているような感じがします。2週間(Fourteen days)は、かつてのコロナの隔離期間と一緒ですね(こじつけかも知れませんが)。
つまりフォアグラを食らっている”They”は…結構強烈な揶揄ですね。
後半部分(Hop teens~You don’t even know)は、そんな不憫な状況に置かれた若者を励ますような内容になっています。
ちなみにこの訳における前半部分の「牢獄」は"cell"という「独房・監房」という意味の単語から訳していて、後半部分の「牢獄」は"behind the bars"という表現からで「鉄格子の中で・獄中で」という意味です。同じことを意味していても、別の表現を用いています。
これはあくまで一例として挙げただけですが、つまりこの歌詞を書いた人はかなり英語が出来る人なんじゃないかということです。
ソロのディスコグラフィから考察するに、英語部分の作詞はphritzさんによるのではないかと思われます。
全体的にかなり高度な暗喩になっていますね。日本語部分は特に難解です。
注釈をつけれそうなのは「いきざし」という言葉。”息づかい・呼吸”と言う意味で、 特に嘆きや不満などの激しい感情が表れている場合に用いるそうです。
編曲においては「さあ名前を付けよう」から軽快なドロップに入ります。
「みかん色に~in the whole entire world」を経て、「急降下して攫う 天から」はこの曲の一番盛り上がる部分です。ここの編曲がマジ最っ高…!何度かフレーズが繰り返され、ゆったりとしたアウトロへ移行します。
全体を通して、抽象的にして難解な歌詞ですが、それでいてセンスに溢れています。PAS TASTAのスゴポイントと言えばやはり真っ先に編曲が挙がる気がしますが、歌詞も凄いです。
<追記>
イントロ後の英語部分(Fourteen days ~ You don’t even know)はphritzさん、曲後半の英語部分(I’ve never ~ in the whole entire world)はhirihiriさんによる作詞であることが分かりました。
Kabanaguさんが”PAS TASTA”として出演されたラジオで話していたことによると、『turtle thief』に関しては「その人が歌ってるパートは、その人がメインで手を加えている」そうです。
曰くphritzさんは、ネットスラングから英詩の解釈、細かいニュアンスの違いまで、ほぼネイティブレベルに理解できている人だそう。マジでかっこよすぎる。phritzさんは神奈川県出身だということで、その英語力が何に由来しているのかがめっちゃ気になります。
hirihiriさんの経歴については、lilbesh ramkoさんとのユニット・142clawzとして出演した、ニート東京のインタビューで語られています。
生まれは日本で、中学生の時にマレーシアで暮らし、ブータンとカナダにも居住経験があるとのことです。HoodがTwitterとSoundCloudだという語りはなんかめちゃくちゃ良いっすよね。
両名の楽曲、『ijustwannagoout』が全編英語詩なのも納得です (この曲も『Cyaton』も両方最高なので聴きましょう)。
<追追記>
なんと本日(2023/12/26)、『トンビにカメパンぬすまれた』の続編が投稿されました。
『トンビにカメパンぬすまれた』(2012/03/24)から実に11年と9か月と2日ぶり、成長した少年がピアノを弾く動画(2015/08/05)からは8年と4か月と21日ぶりになります。
原作の撮影者である父親は、車に荷物を入れに行ったのでこの場にいないのだという説明が冒頭でされます。砂場でトンネルを作ろうと提案する母、まだカメパンをあきらめきれていない少年、その少年を諭す母。
そして少年が立ち上がりまだ幼い足取りで海に向かって歩き始めたとき、少年と母親の大きさの違う手が砂浜に置かれたとき、私は泣きそうになってしまいました。
この母と子の素朴な空間が、これこそが幸福の情景だとは思いませんか。
これは今後、『turtle thief』の続編がリリースされてもおかしくないのではないでしょうか(とか適当なこと言っとく)。
<追追追記>
ていうかこのマーク、よく見たらめちゃくちゃダジャレだな!{(shooting star(流れ星) と shooting star(星を撃ち抜く)}
”2単語のイニシャルが共通している”という条件も満たしていますから、『PAS TASTA - shooting star』、本当にあるかも知れません。知らんけど。
以上、PAS TASTAの楽曲『turtle thief』についてでした。
ここまでお読み頂いてありがとうございます!!
関連リンク
聴いて!!
PAS TASTA - 1st アルバム『GOOD POP』
PAS TASTA - 1st シングル『turtle thief』
本記事のSpecial Thanks : アンドロメダ(@and_ro_meda_)
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