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ザ・ダムド・インタビュー・1976

ダムド・インタビュー

 ザ・ダムド。メンバーはブライアン・ジェイムス―リード・ギター、デヴィッド・ヴァニアン―リード・ヴォーカル、レイ・バーンズ―ベース、ラット・スケイビーズ―ドラムス。マネジャーはアンドリュー・コワルスキーである。ダムドは結成して日も浅いが、ブライアンにレイ、ラットは次号に登場予定のニック・ケント率いるバンド、サブタレイニアンズに所属していた。デヴィッドはダムドに入る前は歌ったことがなく、つまり経験豊富な人間と清新かつ若々しい感性を持つ人間との麗しき融合なのである。以下の内容はごちゃごちゃしているが、それもまたよし。1,2,3,4―。

SG そんなにたくさんのギグはやってきてないね。いったいどうして?
ラット パブでなかったなら、どこでだってやるつもりだよ。
SG パブ以外?
ラット パブでやると、クソ忌々しいハクが付くようになっちまって、そっから抜け出せなくなるんだよ。パブに来る連中は大概、座って一杯やって、世間話に興じてばかりで・・・・。まあ俺たちってパブでやるには音がデカすぎるんだよ。
SG 実際のところ、やれる場所がないし。
ラット ナッシュビルのようなところなら、大丈夫さ。ツアーとかならうまくいくだろうけどな。
SG 君らがやってる曲・・・・。
ラット 全部オリジナルだけど・・・・、‘ヘルプ’とかドールズの‘イッツ・ツー・レイト’にあとはストゥージズの‘1970’とかは除いてね。
SG どんな曲を聴いてるの?
ブライアン ストゥージズやドールズだ。
アンドリュー 全員、影響を受けた音楽は同じだから一緒にやるようになったのさ。
ラット 同じなわけじゃ・・・・。
ブライアン おまえはデイヴ・クラーク好きだよな!
ラット いやそれは・・・・、まー、そうだな。デイヴ・クラークがこの道に入るきっかけになったけど・・・・、デイヴ・クラークに入れ込んでたのはまだガキの頃さ。
SG パブで流行ってるような曲についてはどう思う?
ラット 面白くもなんともない。
ブライアン あそこで流れてるものには、何も得るものはない、っていうか、普段巷間で耳にするものってことかい?
SG ウチラにとって、お粗末な、酷い・・・・・
ラット 世間にはびこってる・・・・
SG バンドをあれこれ抑えつけるのはいけないよ。何かに挑んでるバンドはいいけど。
ラット ここ最近じゃ、一番いいのはロッズだ。ピストルズが潰してやろうとしてるみたいだけど、どうなんだろうな。この2つだけだな・・・・。シスター・レイは聴いたことがないから、なんとも言えねえな。
SG 君はロッズについてはどう思ってる?
ブライアン あれはいいよ。もうチョイ、進取の気性が欲しいね。保守的過ぎるきらいはあるけど、まあでもいいよ。
デヴィッド あれは、いいと思うぜ?
ラット エディ・アンド・ザ・ホッド・ロッズはマジで好きだぜ。あのバリー・マスターズな・・・・。俺たちは全員、影響を受けてるものが違うのさ。もとになってるものがな。レイはイギー・ポップを知る前は、マーク・ボランだったもんな。
デヴィッド イギーのTシャツを手に入れるまでは、だろう。
SG 俺と交換しようとしたんだよ・・・・。イギーのシャツとマーク・ボランのTシャツとをさ!
ラット おまえ・・・・。
レイ 有益な取引だろ。
ラット これが、俺らのベース・プレイヤーなんだからな・・・・。
SG 線に濃淡のある、なかなかなデザインだよ。
レイ これ5ポンドで買えたんだぜ。信じられるか?
ラット いいや、てんで・・・・。俺らは爆走しまくる演奏をしてるから、互いに・・・・。
SG 皆、自分の事そう言うよ!
ラット マジな話さ・・・・。周りの事なんざ、誰も気にもとめちゃいないさ。
SG ダムドに入る前は何をしてたの?
ラット 俺は何も・・・・、直近は。皆それぞれ違うことやってたよ。
ラット(訳注:正しくはレイであろう) 俺はトイレの清掃員さ・・・。ああこれ書いといてくれ!
デヴィッド 俺は今も墓堀人夫をしてるよ。墓を掘るってことで、人を埋めるんじゃないぜ。墓の穴さ・・・・。
ラット まあ、互いの生活には介入しないようにしてるんだ。昼間からうだうだしてるのを見たくねえし。(デヴィッドを指して)もし見かけたら、アタマに一発かましてやるさ!

パンク・ロック?

ラット パンク・ロックと皆言ってるけど、俺にとってパンクって・・・・わかんね!
ブライアン 皆が使ってる言葉だよな・・・・。
ラット そう。けどそれってあだ名みたいなもんで、そう言うのと大差ないもんだと思うけど、わかんねえな。パンクってなんだろな?
SG ならず者だろ?
デヴィッド 杓子定規な定義付けなんて、無意味さ。
ブライアン バンドにいて、何もしないのと同じさ!
ラット ステージに立つからには、ある程度腕を磨かなきゃな!
ブライアン 仮にパンクと言うとして、それは別に、アタマ空っぽって意味にはならないだろ・・・・。
ラット 人を見下げるって意味があるんだろう。あだ名付けにも同じ要素があるけど。俺のあだ名には当てはまらないけどね。
デヴィッド 皆十羽ひとからげに見なされてるよな!
SG 君たちの音楽を言い表すなら?
デヴィッド うまい呼び方はないな。
ラット ロックンロールじゃないな。けど、なんていうか・・・・・。
デヴィッド 「今」を映す音楽!
ブライアン パワー・ミュージック・・・・。
ラット 気合注入の音楽!ナッシュビルに来れば、いてもたってもいられなくなるよ!
SG S.A.L.T.の前座でナッシュビルの出た時、周りは唖然としてたね。
ラット サポートは何回か・・・・そう2回。2回目のとき、何人か野郎どもがボトルか何かをぶん投げた以外は何の手ごたえもなかったね。終わってからアンコールがかかったよ。やってた時にはてんで受けなかったのに、終わるころになって客は熱狂してた!
SG ナッシュビルでは立ち回りをやったね?ドラムを蹴っ飛ばしたろ?
ラット やらせじゃねえよ。ひどい演奏だったんだ。どうしようもなくてさ。こりゃあ無理って。わかっていたさ。最初はかあっとなってはいても、ちょっと落ち着けば少しはまともになるってさ。やれていたんだよ。それがS.A.L.T.が、俺たちの目の前に幕を下ろしやがって。最後の曲をやってる最中にだぜ。でもさ、考えてみたら、あれでよかったんだと言いたいよ。後になれば、笑って済む。あいつら友好的なヒッピーだったんだろうがな・・・・。
SG ほんとのところ、S.A.L.T.は君をつまみ出したかったんじゃ・・・・。
ラット ・・・・いやあいつらを脅し上げることはできなかったよ。
デヴィッド 50分もやれなかったけど。
ラット 1時間の契約だったのにな。それでもいいことあったよ。チズウィックのロジャー・アームストロングがやって来て、契約しないかって。
SG 契約するのかい?
ラット レコード1枚の単発だろうね。
SG チズウィックはいまや、ロックロール一色のレーベルだよ。
ラット ロックンロールは・・・・101´ナーズだけじゃないか?
SG あと、カウント・ビショップス。あれはいいよ!

ザ・ロンドン・シーン

SG 45歳のお年を召したロックスターで見に行きたいのは?
ブライアン 45歳の庶民のほうがましさ!
ラット 俺たちが相手にしてるのは、暮らしにも事欠く16歳のガキどもだよ。
アンドリュー 若い連中が楽しんでくれればいいのさ。
SG 今必要なのは、ロンドンで毎晩観に行けるクラブだよ!
ラット ニューヨークじゃ、たくさんあるんだろ・・・・。
ブライアン 3つか4つしか・・・・
ラット こっちじゃな。それくらいしかねーわな。
ブライアン それが現状さ。土壌の違いだな。
ラット ジョーイ・ラモーンが言ってたけど、向こうじゃ皆知り合いで、張り合ってもいるけど、仲もいいんだとさ。
SG そういう空気が、ここでも必要だよ。
ブライアン 『スニッフィン・グルー』がやってること・・・・、これだよ。
デヴィッド それだよ。お行儀よく座っておしゃべりじゃなくて、行動を起こすこと、そういう方向にもっていきたいよ。
ブライアン 今は、なにもないな。
ラット ロンドンは、どこ行ってもしなびちまって。俺たちのめざすこともピストルズと同じさ。「お上品な」でないことをやり、他のバンドにけりを入れてやったのさ。だろ?
ブライアン でもジョニーはいいよ。
ラット ああ、ジョニー・ロットンは好きだ・・・・。
SG ロッズに、ピストルズをどう思うか、聞いてみろよ!
ラット あいつら、あんまり気に入ってねえんじゃねえの?
ブライアン 由々しきことだ。ストラングラーズもだろ。
デヴィッド なんだかねえ。ほんと、若い連中は上手くやればいいのにな。シーンもまとまるぜ。
ラット 他のバンドと上手くやってるのは俺たちだけだ・・・・。S.A.L.T.は別だ!相手と上手くやれば、こっちだって恩恵に与れる。持ちつ持たれずだよ。なのに、わかってねえんだな。
アンドリュー パンクという呼び名が根付くには、これが肝心だ。
SG シスター・レイと交流は?
ブライアン シンガーとギターはあるよ。
SG あいつらはマジでいいよ・・・・。
アンドリュー ちょっと古臭いけど。
SG モット・ザ・フープルにすごい似てるよ・・・・。
アンドリュー あと、60年代のR&Bだ!
ラット ギターはいいよな。
ブライアン ああ。ケルヴィンな。ギターもいいよ。
SG 話を戻すけど、君らのシングルには、どんな曲がいいだろう?
ラット スローな12小節のやつがいいと思うね。マジで。「俺の女が行っちまった。もうすってんてんだ」っていうね。ドゥ、デ、ダム、ダ、デ、ドゥってな感じの、EからAに、そっからBフラット、そしてEに戻るやつさ!
 
それで?
 
ラット なんていうか、悪循環だよ。・・ギグじゃ嫌がらせがずっとだし、・・・・。エージェントに掛け合おうとするだろ。「こっち来てくれ。おまえさんが頼みなんだよ」って言うと、「OK。なんとかする」当然、奴等は動かねえで、デモテープを送ってくれってなる。送ってやると、「お答えできません」だ。奴等の本分はギグの手配なのに、ちっともしやがらねえ。これぞ悪循環だね!
 
可憐なツラも、地獄行
 
ラット デイヴ・ヴァニアンよ、うまい(tick)じゃねえか?
デヴィッド チク、チク、タク!ステージじゃ、イメージに縛られないようにしてるんだ。いつだって、つまり・・・・。
レイ チャック・ベリーみてえだ!(一緒になってチクタクすることになった)
デヴィッド ・・・・イメージっていうのは、あれこれ作為的にやるのは好きじゃないんだよ。イメージは自然に出てくるもんだ。その時々でさ―それを客にぶつけるんだ。乱暴かな?大体さ、俺は客嫌いなんだよ。いやマジで。パンクスは好きだけど!
ラット 皆、ギグをやらしてくれ・・・・。
レイ レコード買ってくれ!
ラット どこもかしこもマガイものばっかりで・・・・。
アンドリュー 全くだ、レコード業界はな!
デヴィッド 皆、イメージを真面目に考えすぎだよ。音楽のことじゃないぜ。俺たちはちょいと楽しみたいだけさ。
ラット やりたいことをやれ。だから俺だってやってるんだ。こうしてな!
 
ひとつの真面目なパンク記事?
 
 周囲は戦々恐々としていた。日曜の午後、我々7人はウィンピー・バーの店内に座っていた。ダムドは誰よりも目立っていた。―往来でいきなり喧嘩をおっぱじめる与太者とは同類ではない雰囲気であった。
 バンドのベーシストであるレイは、ラットに無理強いされて店の間取りを調べさせられ、チーズバーガーにありつけないままであった。「俺たち7人、玄関からダッシュしても逃げるのしんどいぜ!」
 さほどギグをこなしていないが、彼らは良いバンドだ。レイはマーク・ボランのTシャツを着ていたので(これを彼は脱いで、私にくれた―ⅯP)、ボランを何故好きなのかと聞いてみた。「‘ゲット・イット・オン’が好きでさ。あれイイよな」と返事が返ってきた。バンドでボランが好きなのは自分だけで、影響を受けたのはボランだけだ、ベースを弾き始めて1~2年だが、きっかけはボランが‛トップ・オブ・ザ・ポップス’に出たからだと主張する。
「でも、ボランはベースじゃないけど」
「そうだな」ゆっくりレイは返事をした。
「けど、俺のベースは誰にも似てないぜ」
「ああ。確かにな」と、ラットが笑う。
 バンドは結成以来、本番だろうと練習だろうと、大音量且つ猛スピードでプレイしている。今日は機材を「貸してしまっていて」、練習は休みである。しかしレイにとってはチーズバーガーにありつけない方が腹立たしいようであった。彼は静かに座り、インタビューにはやる気がなさそうだが、自慢話はする。
「練習なんて必要ないんだ」
「バンドにとって、いい観客とは?」
「覇気のある奴!」と、ラットが厳然と答えた。来年、どんなところでプレイしたいか聞いてみたら、
「ストックウェルだな」と、ラット。「アンドリューの家で連続講演してえな!」
「そうだな。俺の親父のガレージでやりたいね」とデイヴが調子を合わせてきた。「客のいないところでやりたいね」
「客に気を使いたくないと?」と聞くと、
「そうさ!」とデイヴ。
「客にはウンザリかい?」
 これについては、ラットが引き継ぎ、明快に説明してくれた。すなわち、「ウンザリな客っていうのは、反応のない奴らだけさ」
「そういうときは、どうする?」
「シカトさ。客の方で、投げ返す、これが筋だろ?気に入ったら、ちゃんと返す。内容の良しあしにつけ・・・・それが反応ってもんなのさ!」
「たいていは、反応ないからな」デイヴが割って入る。
「あれはセント・アルバンズだったよな?奥の方でガチャガチャやってたけど」
「いやいや」と、他のメンバーが答えた。「ビールとビンをぶん投げていたのさ。ゴキゲンだったぜ!」
 一息ついたところで、ラットに、演奏を初めてきっかけを聞いてみた。
「イレヴン・プラスに落第したんで、どうにかしなきゃなって・・・・まあ何でかね・・・・。モノをぶったたくのが大好きなんだよ―不満がたまってんだな」
「もう行くか?」誰かが、声をかけた。
「ああ、いいアイデアだ」
                          スティヴ・ミック
 
 さて、私の知るうちで最も真剣な記事だと言わなくてはならない。今後決して起こり得ないことが、ウィンピー・バーで実際あったことは受け合おう。
 
ラット 俺が一番、貢献してるメンバーだぜ。
SG 静かに!来年はどこで演奏したい?
ラット ストックウェルだ。アンドリューの家で連続公演といきたいよ!
デヴィッド 俺の親父んとこの倉庫でやりたいもんだね。
SG 観客を一杯にして?
デヴィッド 客はいらないよ。ゴキブリだよあいつら。
SG 客は嫌かい?
ラット 反応なけりゃな。
SG 反応なければ?
ラット シカとさ。ビンでも投げ込んでくれりゃ、真っ当な反応だけどな。だろ?
ブライアン どのみち、反応があるってことだが・・・・けど反応がまるでないのは・・・・。
SG 煉瓦の壁に向かってプレイしてるようなもんだ。
ブライアン ああ、まさに!
デヴィッド 反応なかったら、普通はもっと激しくやるようにしてるよ。
ブライアン たいていそういうときは、何らかの反応はあるかな・・・・。
ラット あー、でもセント・アルバンズだったよな、たしか?
ブライアン ああ、ビールとビンが投げ込まれて・・・・、あれはよかったよ。
SG バンドにとって、いい客とは?
ブライアン 覇気のある奴。
ラット そいつが重要なところだよ。
SG じゃあ、ステージづくりに貢献してる人間じゃあないってことだ?
レイ 客も、俺たちの事は気に入ってる・・・・。
ラット ステージの盛り上げ役ってこと!
レイ 客には俺たち、気に入られてるよ。
ラット レイ、あいつらどこが気に入ってるんだよ?
レイ 俺のグラサンを見に来るのさ。
SG 毎晩違うのをかけてるのかい?
レイ しょっちゅう失くすんだよ。
(いろいろ喋くっているうちに音楽の話になり、我々は打ち解けて会話をするようになった)
SG 今日は練習なしで、不満は?
(何者かに機材を「貸してしまった」)
レイ いいや。
SG 気にならない?
レイ なるさ。けど、滅入ることはないよ。
SG 楽器初めて、どれくらい?
レイ 1~2年くらいかそこら・・・・。
SG 誰から影響を受けたか言えるかい?
レイ いいや、誰からもさマジに・・・・。
SG こんな風に弾けたって人は。
レイ 俺の弾き方、誰にも似てないだろ?
SG チーズバーガーにありつけないんで、イラついてるの?
レイ ああ、そうさ!
SG 練習は?
レイ 全然!
SG おやまあ。今のバンドではってこと?
レイ そうさ、練習なんて必要ないね。
SG 楽器の才能あるって思う?
レイ 全然だな・・・・ボランを‛トップ・オブ・ザ・ポップス’で観たからさ。
SG ボランはベース弾いてないよ?
レイ そうさな。
SG 演奏に取り組むようになったのはどうして?
ラット イレヴン・プラスの試験に落っこちて、なんとかしねえとなって・・・・、まあなんだろね・・・・モノをぶったたくのがマジで好きなんだよ。欲求不満解消のためだよ!
 
終わり
 
ザ・ダムド 未公開分
アンドリュー・コワルスキーはマネジャーを辞め、現在は100クラブに‛パンク・ロック‘を解禁したロン・ワッツが就いている。理由は不明。またバンドはスティッフとシングルをレコーディングすることになり、チズウィックではなくなった!詳細は次号で・・・・以上。
 
訳者後記
 
 上記の記事は、おそらく『スニッフィン・グルー』に収められたとおぼしきダムドへのインタビューである。インタビュアーの名前であるSGがスニッフィン・グルー、ⅯPはファンジンの編集長であったマーク・ペリーだと思われる。この記事の存在を私が知ったのは、編著者も版元も不明な『The History of the Damned Part2』という本においてである。
 インタビューの行なわれた時期は、マネジャーがアンドリュー・コワルスキーであること、チズウィックと契約するつもりと語っていること、レイがまだキャプテン・センシブルと言われていないところからして、76年の8月中であろう。違和感を感じさせるのは、インタビューが『The History of the Damned Part2』に収録されていることである。『Part2』が対象としているのはサブ・タイトルにあるように77年8月から79年12月までの、ダムドが登場した新聞・雑誌記事であって、結成直後のそれらではない。収録するなら『Part1』にすべきであったところだが、収録に間に合わなかったのであろうか。
    この『The History of ~』はシリーズものの本であったようで、続刊としてキュアー、ゲイリー・ニューマンにストラングラーズも公刊される予定だったようである。しかし私は見かけたことがない。ともかくもこの本に関しては、全く情報がない。
    本を手に入れたのはいつであったのか、値段はいくらで、どこで手に入れたのか、全く記憶にない。おそらくは大学3年か4年の時、つまり80年代末のバブル真っ盛りな時、吉祥寺の、すでに潰れてしまった中古レコード店であったのではないか。店の名前すら憶えていないその店には、レコードの他に得体のしれない本や雑誌もたくさん置いてあった。70年代の音楽新聞のバックナンバーも置いてあったりした。今にして思えば、もっとその店で買い物をしておけばよかったとも思う。とはいっても、80年代当時の私は金欠で、自分の思い通りに買い物はできなかったのだけれど。
 
 

仲が悪かったとされるキャプテンとブライアンがこうしてつるんでいる写真というのは・・・・相当な演技達者なのか?いやそんなに器用じゃないだろう、などとつまらぬ想像をしてしまう


 

この直前のページが(最初の)解散ライヴの記事で、この後に再結成されたことを知らせる記事が並ぶ


オールバックでないデイヴというのも・・・・

 それはそうとして、インタビューの内容は、すこぶる面白い。ライヴに来る客は大体がノリが悪いから気に入らない、反応があるとなるとビンを投げ込んだりされて、それはそれで肯定すると言っているところ、編集者が「奴等は与太者ではない」と弁護するように書いているところが笑える。デイヴが、客のいないところでやりたいと語っているのも、後に人を避けようとする行動を盛んに取る彼の性向をすでに表しているし、ラットが「イレヴン・プラスに落ちたからドラムを始めた」というくだりは、イギリスでひとかどの人物になるにはサッカーかアーティストになるしかないというよく聞くエピソードを地で行くところがある。キャプテン(レイ)はというと、ベースを初めて1~2年と語っているところは、さっそく嘘をかましていると思わせる。ベースはまだ始めて間もなかったはずだ。ブライアンの語りは少ないが、メンバーの中で彼が一番理知的という印象を受ける。一番饒舌なのはラットで、しかも相当ガラが悪い。キャプテンのマーク・ボラン好きは当時から既に公表されていたわけで、パンクの間ではボランは嫌悪の対象ではなかった証左となろう(メンバーの中ではキャプテンだけがボランのファンであるのも目をひく)。また、インタビュー本編のあとに、おそらくは収録を見合わせた分を(あるいはそうしようとしていた分を)堂々と再収録してしまうところも、いかにも何でもやってやれ的なパンクの精神を感じさせてしまう。 この時点でバンドはまだ結成されて2ヶ月前後であり、パンク・ムーヴメントもマイノリティーな展開にとどまっていたころだ。既にレコード会社と契約をかわそうとしていること、こうしてメディアからのインタビュー―ごく内輪のファンジンだが―受けるほどに注目を浴びているのは画期的なことといえるだろう。彼らは初めてレコードを出した―シングルもアルバムも―ブリット・パンクであり、また海外で初めてプレイしたブリット・パンクであることは広く知られているが、巷では彼らの存在が、既に人々を惹きつけるものをしっかり持っていたということである。『The History of the Damned Part1』には早くも76年7月のライヴ評の記事が載っていたりもするくらいであったのだから。 このインタビュー、さらに『The History of ~』は、70年代パンクの貴重な第1次史料であることは間違いない。今後何らかの形でアーカイブ化できないものか、思案のしどころである。