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恋多き髑髏伯爵
黄金城は今日も空を征く。
「イゴール!イゴールよ!」
大広間に髑髏伯爵の声が響く。黒装束。マント。異形の髑髏銀仮面。
「どこに向かっているのだ!北へと向かえ!」
「我が主よ。アドリアナ夫人に求婚に向かわれるとのことでしたので、メキシコへと」
「それは過去の話だ!私は新たなる熱情を求めている!」
彼は善人ではなかった。
「彼女は己の道を歩むであろう! そうだ、ソビエトだ!彼の国の女王を一目拝みたい!」
だが彼は欲望のままに行動して尚も女を幸せにし、そして男を不幸にしなかった。それは稀有なる才能だ。
「我が主よ。一つにソビエトに女王はおりませぬ。二つにソビエトは30年前に滅びております。」
「であるか!ならば、ラス・アダルペ嬢を拐かしに米国に戻るぞ!」
イゴールは黙って黄金城の舵を取る。
彼らには日常茶飯事だ。
例え求める女性が、米国最悪のマキシマムセキュリティ刑務所に囚われる連続殺人鬼であろうと、所詮は些事だ。
(続く)