<ネタバレなし>マーベルシネマティックユニバースにおれはただ伏して感謝するだけだ
<NO SPOILER!>
ここからしばらくはネタバレが一切なく、あなたは安心してそれを読むことができる。言うまでもなくインフィニティ・ウォーについては一切触れない
今でこそおれたちはあまりにも当たり前にブラックパンサーも面白かったぜとテンションを上げたり、インフィニティウォーの予告編を24時間で二億回くらい観たりしているが、これはほんの少し前までは考えられないことだった。
おれたちは間違いなく、ゴールデンエイジだったと40,50年後に呼ばれる時代をリアルタイムで体験しており、それはもはや感謝で答えるしかない。
今の状況は奇跡そのものだが、何よりも恐るべきは奇跡を日常に変えてみせたことだろう。
かつて、スーパーヒーロー映画は独立していた。面白い作品も面白くない作品もたくさんあったが…とにかく独立していた。
スパイダーマンはただ一人のスパイダーマンだったし、バットマンはジャスティス・リーグ抜きでジョーカーやペンギンと戦っていた。(ロビンとバットガールのことは一旦忘れろ)
この映画のこのシーンには、別のヒーローの実家の紋章が映って…とか、この一瞬映っていた地名はあのヒーローの本拠地で…とかはあったが、それだけのことだった。
15年前にこう言われたらどうしただろう。
「なあ友人、アメコミ映画のアイデアがあるんだけどさ、まずキャプテン・アメリカやアイアンマンやソーの映画をそれぞれ作って、それから最後にアベンジャーズを映画化するんだ!続編でスパイダーマンが出てもいいな」
おれは間違いなくこう答えていたはずだ。
「アベンジャーズにたどり着く前に3本も4本も退屈な単独ヒーローの映画を観なきゃいけないような映画、誰が見るんだ?大体、そんな莫大な予算と権利調整、現実的に出来るわけないだろう。ハッ、二作目くらいで大コケして撤退するか、百歩譲ってアベンジャーズまで辿り着いても二時間でまとまる訳がない。破綻した映画になって終わりさ。スパイダーマン?おいおい、どこが権利持ってるか考えてみろよ」
こんな会話が世界中のオタクの間でなされていたはずだ。10年前までは。
誰もが一度は妄想し、そして余りのバカバカしさに自分自身ですら鼻で笑っていた『理想のヒーロー映画』。だが彼らは心底諦めなかった。それは今、妄想すら遥かに超えた形で、あまりにも当たり前におれの目の前にある。
おれはずっとアメコミというやつに、あのクールなジャンルに、憧れを抱いていた。スパイダーマン、バットマン、キャプテンアメリカ、グリーンランタン、ジャスティスリーグ、ゴーストライダー、スポーン…鮮やかなコスチュームと力強いアートに彩られたヒーロー達の神話…そしてそれがユニバース毎に共通の世界を持ち、当然のように共演し、対立し、世界を巻き込む超巨大なクロスオーバーが巻き起こる…なんとクールなのだろう!
だがアメコミはまた、おれにとっては軽々と入り込めない領域でもあった。星の数ほどの独立誌、スピンオフ、大型クロスオーバー、世界設定のリランチ…原書を追うには果てしなく、続きが出るかも怪しい邦訳を気兼ねなく買い続けていたら三代続いた呉服屋も容易に傾くだろう。
インフィニティ・ガントレット、シークレット・インベージョン、オンスロート、エイジ・オブ・アポカリプス、クライシス・オン・インフィニット・アース、シビルウォー、ワールド・ウォー・ハルク…勿論これらは邦訳もされているが、それだけを単体で読んでも映画のラスト30分のアクションシーンだけを見るようなものだ。ベストな体験とは言い難い。
だからおれはどうしても我慢できない邦訳本だけを時々買い、カプコンの格闘ゲームやスパイダーマンのゲームなどをプレイし、思い出したように個別映画化される作品を見ながら、ガラスケースの向こうのトランペットを眺める少年のように、アメリカンコミックという文化の豊穣な恵みを羨みながら生きていた。
だが、マーベルシネマティックユニバースはおれのような男にチャンスをくれた。アイアンマン、キャプテン・アメリカ、マイティ・ソー、ハルク、スパイダーマン…彼らの始まりから結集まで、おれが憧れ諦めていた、『ユニバース』はいつのまにか目の前にあった。それもわずか映画20本やそこらの形で。
いったい誰に感謝をすれば良いのだろう。マーベル・コミックスの連中はいつ、自分たちが握っているものは世界最強のキャラクター・コンテンツであり、黄金の林檎なのだと気づいたのだろう?ケビン・ファイギとかいう謎のおっさんが全て糸を引いていることは明白だ。だがジョン・ファブローがアイアンマンを成功させなくては、シリーズはもっと早くに頓挫していたかもしれない。最大の大型タイトル、アベンジャーズをあれだけの凄まじいプレッシャーの中で軽々とマスターピースにしてみせたジョス・ウィドンの貢献たるや、計り知れない。
もちろん、俳優たちの演技は言うに及ばずパーフェクトだが、キャスティング担当者も同じくらい賞賛されるべきだろう。スターロードにクリス・プラットだと?スパイダーマンにトム・ホランド?そして何よりロバート・ダウニーJrだ。彼はヒュージャックマンが完璧なウルヴァリンを再現し、そして新たなウルヴァリンを定義づけてしまったのと同じことをしてみせた。
エドワードノートンのブルース・バナー降板という痛恨事を、マーク・ラファロなんて連れてきて大成功に変えてみせた人間はいったいどれほどの天才だ?
更にクリス・エヴァンズ!今となっては彼以外のキャプテンなどどうして考えられようか。
シネマティックユニバースの全てのイナジマリーもマーベル・コミックスの育んできた歴史の遺産を土台にしており、それらへのリスペクトと感謝も溢れて止まらない。おれはつい最近、マーベル展に行ってきた。撮影用のスーツや、実物大のアイアンマン・アーマーも最高だったが、スパイダーマン初登場のコミックとか、X-MENの第一号とかアベンジャーズの第一号とか、そうしたレジェンダリー級のアーティファクトで溢れており、おれは気づけば泣いていた。
スタン老への愛と尊敬と感謝をかき集めたら、それだけで太平洋は埋め立てられてしまうだろう。
この文章の中でおれは何回でも繰り返すが、感謝しかない。功労者はあまりに多すぎる。こんな途方も無い妄想金を突っ込む契約書にサインをした、どこかの高層ビルの重役室で高級スーツを着たクソ野郎も。これらの作品群を声高らかに賞賛し、惜しげもなく金を使ってくれた世界中の観客達もだ。
マーベルシネマティックユニバースが素晴らしいのは、複数の作品がリンクしているスケールの広さだけではない。ただ単純に、作品が全部面白いのだ。
『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』(Thor: The Dark World)は、マーベル・スタジオが製作し、ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズが配給するアメリカ合衆国のスーパーヒーロー映画である。
言いすぎた。だいたい面白い。
アイアンマンとアベンジャーズの二作がキッチリ大傑作だったことは本当に重要で、もしアイアンマンがコケていればアベンジャーズまで続くことはそもそもなかっただろうし、アベンジャーズがアレだったら、マーベル・シネマティック・ユニバースは美しい思い出、鮮やかな夢として終わっていた。
アベンジャーズが面白く、そして大当たりしたからこそ、フェイズ2以降の本当に粒揃いの作品群は好き放題やれて、そして傑作になった。
アベンジャーズの面白さは本当に偉業としか言いようがない。
舌が肥え果ててしまったあなたも、エクスペンダブルズを観終えて劇場を出た時の優しく穏やかな気持ちを思い出してほしい。
「ああ…こういう映画というのは存在そのものに"ありがとう"なんだよな…!中身に文句を言ったら野暮ってものだな!ありがとう!君がここにいてくれるだけで充分だ!」
(※エクスペンダブルズ2は掛け値なしにサイコーだった 3はスパイダーセンスが反応したので観ていない)
イベント的な映画とはそういうものだったし、それで充分だった。だが、アベンジャーズは、とんでもなく面白かったのだ。
公開当時を思い出す。確かにアベンジャーズは楽しみだし、アイアンマンは傑作だったが、それ以降の作品は面白いは面白いがgood~not badという線での面白さだった。アベンジャーズについては、公開そのものがランドマークであり、内容はさほど問題ではない。
筈だった。
だが、ワールドプレミア以降、全米公開以降、世界の空気が明らかに変わっていた。海外の連中が、大ヒット作ではなく、大傑作としてアベンジャーズを扱っていた。ホワット、ザ、ファック?アベンジャーズだぞ?
この作品は『アイアンマン3』であり「マイティ・ソー2』であり『インクレディブル・ハルク2』であり『キャプテン・アメリカ/ザ・セカンド・アベンジャー』でなければいけないのです。
この『アベンジャーズ』は
・単独の作品
・複数の作品のクロスオーバー
・複数の作品の続編
引用:男たち・野獣の輝き
byビューティー・デヴァイセス @Devaisethさんより
であり、どう考えたって成立するわけがないプロジェクトだった。
そしておれは凄まじい期待と半信半疑を胸に映画館に行き・・・ブッ飛び・・・・まだ帰ってきていない。
商業的な大成功と、広がった世界観はマーベル・シネマティック・ユニバースを共通としつつも、作風の幅を大きく広げた。
スパイアクションからヒューマンドラマ、ハーレクインロマンス、スペースオペラに戦争映画、オカルトからコントまでよりどりみどりだ。肝心要のアベンジャーズがこれ以上ないほどド直球のスーパーヒーロームービーなのも素晴らしい!
ヒーローもまた多様性を持ち、彼らが集まり、画面に映るだけで華やかになる。
たとえば髭面で傲慢な白人男性のアイアンマンとか、髭面で傲慢な白人男性のソー、それに髭面で傲慢な白人男性のドクター・ストレンジ、更には髭面で傲慢な白人男性のスターロードまで…アー…ともかく。
マーベルは完全なポジティブ・フィードバックに入っている。才能が金を呼び、金が才能を呼ぶ。本当に自分たちの持っている遺産の価値をわかっている連中が、金と才能をしっかり握って好き放題やっている。
『ふむふむデッドプールなんてキャラクターは観客に受けないので口を縫い付けて目からオプティックブラストを出すようにしないと収益計算上投資できませんね』なんてことをほざくスーツ野郎の入り込む余地はもはや欠片もない。
おれたちはたぶん今、伝説をリアルタイムで体験している。スターウォーズが現代の神話となった時のように。ファンタスティック・フォーにギャラクタスが始めて登場したときや、インフィニティ・ガントレットのシリーズが展開された時のように。
そうした伝説をリアルタイムで体験してきた先人たちへの素直な嫉妬をおれはこれまでずっと抱えてきたが、その屈折はもはや消え去った。おれも、ユニバースを追いかける側にようやくなれた。
自分が物心付く前でもなく、老いさらばえてくたばる後でもなく、人間がこの世にへばりついていられるほんの僅かな間に、こうしたプロジェクトと出会えたことはそれでもやはり奇跡でしかない。
マーベル・シネマティック・ユニバースにおれはただ伏して感謝するだけだ。
<SPOILER ALERT!>
以降、スクロールした先では個別の作品について触れる。粗筋をつらつら語るようなことはしないが、内容についても、配慮せず触れていくので、ネタバレを最大限避けたい方は注意されたい。
なお、ここでもインフィニティ・ウォーについては一切触れないので、あなたは安心して読むことができる。
<ネタバレ注意!>
アイアンマン S+
今見直すと、マーベル・シネマティック・ユニバース以前の単種単独のヒーロー映画の空気感をかなり受け継いでいる。トニー・スタークのキャラクターが強烈なので、コスチュームの活躍が少なくても楽しい映画だが、やはり特筆すべきはマーク1の圧倒的格好良さだろう。マーベル・シネマティック・ユニバース10年の歴史でも、スーパーヒーローのスーパー・パワーとして、そしてコスチュームとして圧倒的にカッコイイのはマーク1だ。
アイアンモンガーとの決戦は、両者ともに不完全という状況での戦いでありフラストレーションが溜まるが、それは今後の展開を見据えたものだろう。
あと、エンドロールへの入り方がこれ以上ない作品でもある。
I Am Iron Man
インクレディブル・ハルク B-
かなりオーソドックスな仕上がりだが(フェイズ1の単独映画の作りは全て王道で良い)、アン・リー版よりは遥かによい。アボミネーションはコレ一作で終わるには惜しい相手だった。
ところでリーダーはどうなったんだ?
アイアンマン2 B
アイアンマンの続編だが、残念ながら余り出来がよくない。親父の遊園地の模型をなんかすると新元素が出来て病気が治る下りはヤクでもやってるのかという感じで嫌いではないし、スーツケース・アーマーも最高だが、アレだけクールなウィップラッシュが終盤、何の面白みもないアーマー・ヴィランになってしまったのは本当にガッカリだ。
マイティ・ソー B+
ヒーロー映画としてはカタルシスに欠けるが、異文化ラブコメとしてみると実に面白い。これはおれが元々ソーには思い入れが薄く、デストロイヤーやロキのようなヴィランにもピンとこなかったのがデカい。
キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー A-
フェイズ1の作品群の中では特異な構成をしており、国債売りマンなのは笑えるが、中盤でダイジェストで流される『キャプテン・アメリカと仲間たちの大活躍』が一番面白そうで困る。そこもっと見せてくれよ! ヒューゴ・ウィーヴィング演じるレッドスカルは超クールなので、続編含めてもっと観たかった。
アベンジャーズ SSS
大傑作。
本編は全てハイライトシーンであり、ヘリキャリアの登場ですらめちゃくちゃテンションが沸騰する。キャプテンとアイアンマンの顔合わせは、わかっていても手を握りしめてしまうし、ちょっとしたギャグは一々しっかりと笑える。
ラストの大決戦、宇宙人の大群に襲撃されるニューヨーク、白昼堂々の市街戦で立ち向かうアベンジャーズを完璧に描ききったクライマックス・アクション・・・おお!バナー博士の『いつも怒ってる』からのハルクのパンチ、そして6人を回り込むカメラワークまではマーベル・シネマティック・ユニバースの中でも最もお気に入りのシークエンスだ。
それにラストカット、ST”A”RKタワーにただ一つ残った『A』の文字も完璧だ。
初公開の際、余りの興奮と感動で劇場が完全に一つの空気となっていたエンドロールをおれはよく覚えているが、それが一気に温かな爆笑へと変わり、清々しい解散となったシャワルマのシーン、おれは決して忘れることのない映画体験だろう。誰もが本当に満足そうな顔で座席を後にしていた。
ところで・・・・キャプテンアメリカ2?アイアンマンならともかく、アベンジャーズの後に今更キャプテンアメリカの単独続編なんか、一体全体どこの暇人が見るんだ?
アイアンマン3 A+
トニー・スタークの物語としての完結編としてよく出来ており、中盤の空中救出シークエンスはマジで最高だ。ただ、ヴィランが発光して運動神経の良い人というのがどうにもインパクトが弱すぎたというのが正直なところだ。
マイティ・ソー/ダーク・ワールド E-
なにも悪いところはない。脚本は破綻していないし、アクションは存在する。演技が終わっているわけでもないし、視覚効果もBGMも決して悪くない。減点法なら60点は下らない映画だ。ただ致命的なことに、全く面白くない。
キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー SSS
キャプテン・アメリカ?アベンジャーズは確かに面白かったけど、キャプテン自体は別に・・とか言っていた世界中のボンクラが土下座することになった。
ポリティカルサスペンスの雰囲気漂うスリリングなストーリーに、超ソリッドでスピーディな格闘戦、そしてマーベル・シネマティック・ユニバースで一番クールな敵役のウィンター・ソルジャーを相手に回した超エモーショナルなクライマックス。ストイックに行くかと思ったら盛大に大爆発も振る舞い、ユニバース最高傑作論争から決して外れることのない作品となった。
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー SSS
マーベル最近めちゃくちゃ面白いなあ!新作は、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』?聞いたこともないマイナーヒーローだしスルーしよかな・・・まあサノスに絡みそうだし一応観とくか・・・・とか言っていた世界中のボンクラが土下座することになった。
80’s洋楽をバックにはぐれ者たちが人生を取り戻す映画で、とにかくカラフルで、キュートで、死ぬほど笑えて、ボロボロ泣いてしまうし、凄まじく燃えて超スッキリする。マーベル・スタジオが正真正銘無敵だということを証明したタイトルだ。
おれは宇宙のはみ出し者たちが、最後、手をつなぐあのクライマックスで2リットルくらい涙を流した。
あと、引用される音楽がとにかく話題に登るが、この作品はオリジナルのテーマ曲も最高だ。
アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン S-
大傑作二作に続いて、満を持してのアベンジャーズ2ということで、当然面白かったが、ハルクバスターこそ2億万点であるものの、やや印象が薄い。それは、ウルトロンが悪役として、退場も含めて今ひとつ仕上がりきらなかったこともあるし、今作登場のスカーレットウィッチ、クイックシルバー、ヴィジョンがやはりイマイチ思い入れの薄いキャラクターだったとこともある。
だがやはり最大の原因は同時期に公開されていたのが、よりにもよって『マッドマックス 怒りのデス・ロード』だったせいだろう。相手が悪すぎた。
アントマン SS
アベンジャーズから一気にスケールを落とし、久しぶりの個別のヒーロー誕生譚だったが、期待以上に面白かった。クライマックスの超小スケールの戦いもだし、オリジン→訓練までの流れもめちゃくちゃキッチリしているので、二時間の映画としての纏まり方がとても良いのだ。おれはこの映画に全く文句は無い。満足している。ただ、ただ、それでも、エドガー・ライトだったらどうなっていたんだろうと思わずには入られない。
シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ SSS
ウィンター・ソルジャーときて、もう流石にこれ以上はないだろうと思ったら、シビル・ウォーというトンでもない大ネタをぶっ込んできたキャプテン・アメリカ3にして実質アベンジャーズ2.5。
冒頭の新生アベンジャーズでのキレキレのアクションからブラックパンサーの素晴らしいデビューのチェイスアクション、言わずもがなの空港での大決戦に、実に心が痛むクライマックスの死闘まで、とにかくアクションの品質が高く、なおかつそれが全てシナリオと有機的に絡み合っている。
白眉の空港シークエンスは、美味しいところを持っていきまくるアントマンの”大”活躍もだが、一にも二にもスパイダーマンだろう。この偉大なシリーズに(誰もが無理だと思っていたにもかかわらず)満を持して登場したスパイダーマンは、登場だけでも既に興奮の頂点だったにもかかわらず、期待を遥かに上回る(ともすればこれまででベストの)スパイダーマンだった!
そして、キャプテン・アメリカというキャラクターを完璧に完成させて締めるラストカットも素晴らしい。
ドクター・ストレンジ S+
既視感のあるシナリオにも関わらず、余りに強烈なビジュアル・イマジネーションの奔流によってシリーズの中で確固たるアイデンティティを確立している。
悪役に関しては、率直に言ってミッツ・マケルソンの無駄使いだが、マーベル・シネマティック・ユニバースの世界を更に拡張した本作は貧弱な悪役を覆い尽くすだけの魅力に満ちあふれている。
それに、ビジュアル・エフェクトに負けないだけのベネディクト・カンバーバッチの顔芸も。
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: リミックス SS
タダでさえ”一作アベンジャーズ“だった前作から更にキャラが増加し、纏まりきるのか心配だったが、キャラクターを二人一組のコンビとして配置するというアイデアで見事に難題を達成した。(それはそれとしてひどい邦題だ)全体としては前作の方が好きだが、それは本作が劣っているということでは決してない。悪役に関しては、率直に言ってカート・ラッセルの超有効活用だが、何よりあの男を、スタローンをマーベル・ユニバースに参戦させるという偉業をやってのけただけで称賛するしかない。
スパイダーマン:ホームカミング S+
サム・ライミ版、アメイジング版ときて三度目のスタートとなったスパイダーマンだが、本作は実に清々しい作品となっている。
ヴァルチャーは極めて魅力的な悪役で、中盤”家庭訪問”のシークエンスでは、本作の明るいトーンに油断しきっていた劇場の空気が一気に激変するのを肌で感じるという稀有な体験をさせてもらった。”後部座席”のシーンも素晴らしい。
しかし、ヴァルチャーが素晴らしいヴィランであるのはマイケル・キートンが素顔を晒しているシーンであり、最後の戦いは、戦闘というよりも、スパイダーマンが追いかけている内にヴァルチャーが自損するという、まるで田舎の暴走族と警察のカーチェイスのような顛末となった点にはいささか不満が残る。
ただ、最終決戦仕様のスパイダーマン・スーツはとにかく最高で、アイアンマンマーク1にも匹敵する素晴らしさだ。
マイティ・ソー バトルロイヤル SS
おれはソー・シリーズについてなんともじれったい思いを抱いていた。偉大なアイアンマンに最高なキャプテン・アメリカに対して、平々凡々な1にアレな2と、ソーについては個別作品のクオリティが明らかに低く、それがアベンジャーズにおけるソーの存在感すら脚を引っ張っていた。
本作は無事、三度目の正直をやってのけた。まず、とにかく退屈なアスガルドを早々に放棄するという英断に合わせて、ハルク・ロキといった超魅力的なキャラクターを脇に据え、ダメ押しのジェフ・ゴールドブラムでとにかく笑える楽しい作品になっている。この映画は隅から隅まで楽しんだが、マット・デイモンに気が付かなかったのは生涯の痛恨事だ。
ブラックパンサー S-
世間的な大絶賛ほどはハマらなかったが、それでもマーベル・シネマティックユニバース相当のクオリティとなっている。中盤のチェイス・シーンが白眉であり、アクションのテンションは徐々に落ちていくが、悪役であるキルモンガーの強烈なキャラクターがそこをラストまで補っている。
以上です。思い出し、見返しながら感想を書いているだけでも素晴らしい体験であり、連中が積み上げてきた10年間の偉大さを噛み締めている。
インフィニティ・ウォーについて、今語ることは何もない。
マーベル・シネマティック・ユニバースにおれはただ伏して感謝するだけだ。