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山本寛斎さんの名言「誰だって人生に前例なんかない!」

山本寛斎さんが亡くなり、思わず連投です。
いずれnoteに書こうと思っていた、インタビューした著名人たちの印象的な言葉の数々。寛斎さんの名言を思い出していた矢先の訃報でした。

圧倒的なド迫力 だけど温かい

山本寛斎さんに取材したのは、15年くらい前、女性誌の生き方企画のインタビューページでした。
青山の寛斎さんのオフィスの広い応接間で、大きな窓ガラスの向こうに外苑の緑が茂っていて、その大きな外風景をバックに身を前に乗り出す、大きな声の寛斎さんの姿を、今でも鮮明に覚えています。

もちろん寛斎さんにお会いするのは初めて。
ファッションデザイン同様、人柄も激しい印象があったので、もし私がトンチンカンなこと聞いて、怒られたらどうしよう…とヘビににらまれたカエルというよりノミの心境で、いつも以上の緊張感でした。

話し出すと、意外にも人懐っこい方でホッとしましたが、でもやっぱり人としての迫力はものすごいものがありました。
それは怖いとか人を威圧するものではなく、経験してきたエネルギーの塊、そんな印象です。

「前例がない」は最低な理由だ!

「前例がないからできないって言う人いるよね。前例がないってことを理由にするヤツ、バカじゃないのかと思うよ。最低な言い訳。
だって、誰でも自分の人生に前例なんかないんだよ。自分にとって人生は初めてのはずでしょ。誰にとっても自分の人生には前例がないんだよ!他の人のコピーを生きてるわけじゃないんだから」

一気に話される寛斎さん。
唯一無二のデザイン、奇想天外な仕掛けで、まさに前例のない発想で驚かせてきた寛斎さんらしい言葉でした。
とかく日本は「前例」を気にする社会。出る杭が打たれ、打たれないよう躊躇してしまう風潮に一喝したい思いがあふれていました。

私にとって「前例がない」は不本意なブレーキだった

私がこの言葉に共感した理由は、社会人になってからその日まで、ずっと心の奥に引っかかっていた疑問だったからです。

社会人1年目の私は、なんと銀行員として、それもお堅い部署で備品の購入なども業務の一つでした。
ある日、銀行の一大行事の記録写真(紙焼き写真)を大量保管するためのアルバムの調達を命じられました。参考例として、歴代のアルバムを見せられたものは、あまりにも使い勝手の悪い、古すぎるタイプでしたが、このタイプにこだわる理由もなさそうでした。

そこで私は、出し入れも増減も自由にできるファイルタイプで、安いアルバムを探し出し、「これなら1冊で済みますし、値段も安いので、こちらに変えませんか?」と思い切って提案すると、
私に指示した先輩は「確かに…。でも前例がないから、上司に聞いてみる」。そして答えは「前例がないからダメだって。去年と同じものにしておいて」。

「前例がない」という理由は、私にとって初めての衝撃でした。
使い勝手が悪そうに見えても、他に合理的な理由があるなら納得できたと思います。
それに、経営を左右するような大ごとなら慎重になるのはわかるけど、たったこんな備品一つにさえ、利便性よりも、前例の有無だけで判断する世界が私には解せず、新社会人の私には、重しのような疑問になっていました。
(後にこの銀行はやめますが・苦笑)

「前例がない」ことにあまり躊躇がない私は異端児なんだろうか…?

疑問を抱きながらも、それを否定できるほどの強さも自信も自分にはなく、半信半疑のまま私自身は、いつの間にか、まさにあまり前例のない人生になっていました。

「みんな前例がない道を生きていると思えば、怖がることはない」

あれから10年経って、その重しを寛斎さんが大声で吹き飛ばしてくれました。
私の疑問はヘンではなかったんだ!

あまりに感動してしまい、私自身の長年の疑問だった、と告げると、寛斎さんは得たりとばかりに満面の笑み。
「自分の人生は自分は生きたことがないんだよ。それって前例がない道を生きてるってことだよね。そう思えば、前例がないって怖がることじゃないよね」
腑に落ちました。

今は、「前例がなくてできない」というお役所の対応を時々ニュースで見ては呆れていますが、世の中では「前例がないからこそやる」という人がとても多くなり、そういう人が何かを成し遂げている、私はそんな確信に至って勇気づけられています。

寛斎さん、天国でも前例のない奇抜なファッションで熱く激励してください!




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