第9話 おしゃべり オバケ、、『ゴ』
語り手:ネコのきなこ 挿し絵:猫野 サラ
危ないことをすると背中のあたりがピクピクするほど興奮する。そんなボクを見て、マリアちゃんは悲鳴をあげる。で、もっと楽しくなる。ボクたちの生活は彼女の悲鳴が絶えない、ふふふっ。お仕事の偉いおじさんに、彼女は「ゲサ子」って呼ばれてるらしい。すぐギャーギャー騒ぐんだ。確かに大げさだよ。
彼女は臆病なところもある。人間がときどき恐いって言ってた。人間の世界でもノラネコみたいに恐いヤツがいるんだね。マリアちゃんも外で追いかけられたり、、、噛み付かれたりしてるのかなあ? 彼女なら反撃するぐらいの力はあると思うけど、どうだろう?? 一度、外の世界にいる彼女を観察してみたいな。
今日はボクたちのお家に出てきたお化けの話をしてあげるね。
恐いよ〜〜〜、心の準備はいいかい?
ある晩、だいぶ遅かった。ボクはウトウトしてて、マリアちゃんはお風呂へ行った。いつも本ってやつを持って行くんだ。ものすごく長いことお風呂で遊んでる。
目が覚めて退屈だったから、ダメって言われてるあそこへ行こうと思いついたんだ。こういう冒険は彼女のいない夜が最高だ!真っ暗だったけど、一歩一歩、用心しながらいろんな物が置いてあるところから、ゆっくりと目的地へ。
忍び足で、そっと、そっと登った瞬間、
ボクの足下からそいつが唸り出したんだ!!
すごい恐い女の声だった!!
ごっ、ごっ、ごっ、ごっ、ごっ、ごぉ〜〜〜
そいつはずっと、唸ってるんだ。もうボクは恐くて恐くて、足も動かない、マリアちゃ〜〜〜〜〜ん、助けて〜〜〜〜
のんびりお風呂で本と遊んでた彼女が飛び出してきた、裸で!!! 何も見えないらしく、きなこ???きなこ??どこ〜〜〜?
ここだよ、早く早く!! お化けが出てるんだよ〜〜〜。
ボクの叫び声、お化けの唸り声、そして、マリアちゃんがぎゃあぎゃあ騒ぐ。すごい状態だった‼︎
電気をつけることを冷静に思い付いたのはちょっとしてからだった。こういうときのマリアちゃんは残念なんだ。判断能力が鈍いっていうのかなあ。
ボクの足元にいるお化けはずっと
五、五、五、五五五〜〜五〜
って唸りながら、今にも噛みつきそうだったよ!
パッと電気が点くと、
ポカーんって彼女はしてた。で、豪快に笑い出したんだ!
キナちゃん、電話はやめてぇ〜〜〜!
ベッドに入ってから、お風呂で遊べなかった彼女はまた本と遊び始めたんだ。ボクが側にいるのに。文句を言っても無視してさ。ボクは怒ってベッドから跳び出したんだ、でね、暗くて広いお部屋へ。
すると、あの好奇心が。今回はそっとね、忍び足で、、、でも、失敗!!!
そいつがまた唸ったんだ、
七、七、七 … 七、七、七
やばいって思ったけど、すでに遅し! マリアちゃんの悲鳴、
きなこぉ〜〜もうお願いだから止めて〜〜!!
ボクにとって、お化けとマリアちゃんのどっちが恐いか?って?? ふふふ、
もうどっちも恐くないよ。
あ、それから間もなくしてね、その電話は死んでしまった。マリアちゃんは新しい電話をもう連れてこなかった。そこを僕のお気に入りスポットにしてくれたんだ。ちょっと高いところにあって世界を見下ろせる。もうあの女の叫び声を聞くことはなくなった、ふふふっ。