13 一心不乱
「一心不乱」
「これを聞いて、何か思い当たることはありますか?」彼女はしんみりと私に聞いた。
彼女のその声の質で、何か切ない、つらいような感じがした。
「一心不乱」
私の行動のパターン。。。。。
何か目標を定めたら、横目を逸らすこともなく、突き進む。
それを達成するために。
全く思い出せない。
何を言われても、私の感覚へ何も響かない。
暗闇の洞窟の中にいるようだ。
何の音すらも聞こえない。
シーン。。。。。
再び彼女が話始める。そして彼女は聞いた。
「今、話した内容に何か聞き覚えがあったり、感じることはありますか?」と。
私は、聞いてみる。
静かに、聞いてみる。
でも、再びその静寂な中に何の感情も、音も、言葉も聞こえない。
あまりにも何も感じない自分に不安を感じ、一言。「ごめんなさい。何も。」
そうすると、彼女は「では、私の言うことをそのまま繰り返してください。」と。
彼女の意味の分からない文章を繰り返した。まるで呪文のようだった。見覚えもない。
そして、突然それはやってきた。
頭がガクっと垂れ下がり、私は眉間に手を当てた。
まるで松果体に何か刺激が入って起動させているかのような鋭い衝撃が鈍痛のようにやってきた。
それが何なのかもまったく分からない。
嗚咽のようなイメージが湧いてくる。
そこに座り込みそうだ。
その感情のエネルギーは果てしなく重く、まるで厚い岩の扉のようだ。
それをこじ開ける。
「これは、ダブル封印。」
一つの封印の解除を妨げるための、更なる封印がされています。
そして、それには呪いが掛けられている。
その呪いと解きます。
「これを見て。」彼女は自分のつけているネックレスのペンダントヘッドを私に見せてくれた。
「これ、覚えているでしょ。大丈夫です。」
私は、そのペンダントヘッドを覚えていた。
今ならできると確信した。でも、それが何なのかは分からない。
本当に、深い深い海の底に封印している何かを解除するようだ。
深刻なことだけが分かる。
私は地面にうな垂れていた。
全てを失って。
私は、みんなを失った。
守ることができなかった。
横には私の最愛の白い馬が真っ赤な血に染まって横たわっていた。
私は最愛の人々を守ることができず、そして失った。
彼女は言った。
「みんなは、貴方の事を憎んでもいません。みんなは貴方が最善を尽くしたことを知っています。それを受け取ってください。」
私の心の深いところで声がする。
「最善を尽くしたはずはない。最善を尽くしたのならば、私はみんなを失わないで済んだはずだ。」
彼女は続ける。
「みんなは、貴方に感謝をしています。貴方がみんなを守るために一心不乱になって戦ったことを。」
私は泣き崩れた。
思い出した。
あの時を。
許されるべきことではない。
私は一生、この魂を背負って生き続ける。永遠に。
許されるべきではない。
彼女が言った。
「もう、許してあげていいのですよ。」
私は、その全てを失った悲しみを思い出した。
私は、私を許さないと決めたのだ。
その時、みんなの声を聞いた。
「私達は感謝しています。」
「私達は知っています。逃れることはできなかった。」
「私達は貴方が最善を尽くしたことに感謝しています。」
私の最愛の白馬の声を聞いた。
「私も貴方に感謝しています。愛しています。今も変わらずに。」
私は再び立ち上がった。
みんながそこに笑顔で受け入れている景色を見た。
彼女が私に剣を授けてくれた。
両手にその剣を掲げた。
その時、私の騎士団は蘇った。
遠く、遠く遥か彼方までその騎士と馬たちが見えた。
私の大切な仲間たち。
最愛の仲間たち。
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