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その苦しみの中でこそ、知るものがある

☆ こんにちは、むらさきのおはなさん。

* こんにちは:)

☆ あのね、また、お母さんのことなんやけどね。

* うんうん:)

☆ 亡くなってから、一ヵ月経ったよ。お母さんのたましいと、もっとつながりたい、おしゃべりしたいって思う。どうしたらいいかなあ?

* うん、今のお母さんはね、今までのお母さんと違うから、同じやり方では「触れない」「話せない」と思うかもしれない。けどね、新しいやり方でつながればいいんだよ。

☆ 新しいやり方って?

* もっと、じいっと、“見つめて”。見えるものを見るための2つの目と、見えないものを見るための第三の目。どっちも使って、お母さんを見つめて。見つめ るっていうのは、集中するっていうこと。集中するっていうのは、その一点に愛/エネルギーを注ぐっていうこと。虫メガネで太陽の光を集めると、熱が発生し て火がおこるでしょう。それと同じだよ。

☆ “見つめる”……。

* 光を集めれば、熱が生まれる。その温度を感じることが、“在る” ということのしるしなんだよ。目に見えても、見えなくても、すべての存在は “あまねく普遍” なんだけど、もしもそのうちひとつを、きみがもっとよく見てみたいと思うなら、たくさん “見つめて”。イメージして。

☆ イメージする、お母さんの姿を?

* そう、たくさんたくさん、イメージして。過去の記憶をたぐりよせて恋しがるだけじゃなくて、“今のお母さん” をイメージして。肉体を卒業して、自由に飛び回っているお母さんを。この世界の、すべての生命の中にいるお母さんを。話しかけて、おしゃべりして。今こうやっておしゃべりしてるみたいに。やがて、集中する必要すらなくなる。そうなったらね、わかるよ。お母さんがほんとうに「いる」っていうことが。

☆ わかるといいなあ。

* お母さんはいるよ。ただ、今までとはかたちが違うだけ。だから、もっと一緒にいたいなら、お母さんが “変わった” ように、きみも “変わる” 必要がある。肉体を卒業するのはね、時に苦しみをともなうものなんだよ。お母さん、“変わる” ために、たましいに還るために、すごくがんばったでしょう。それを尊重してあげて。

☆ うん。。いろいろ考えても、やっぱり、哀しいし淋しいけどね。

* お母さんは、いるよ。でも、哀しみや苦しみで視界を閉ざすと、お母さんの方から、きみにアクセスできなくなる。きみとお母さんをつなぐのは、愛だよ。

☆ 愛。

* たましいの世界にはね、愛しかないんだよ。お母さんは今、100%、愛の状態なんだよ。だから今、きみがこの地上で、同じように愛の状態でいれば、お母さんといっぱいつながれるよ。ラジオのチューニングを合わせるのと同じだよ。

☆ でも、ときどき、むずかしいよね。

* むずかしいけど、簡単なことだよ。そのやり方を、お母さんが教えてくれている。それが、どんなに大きな愛か、わかる?

☆ けどやっぱり、泣きたいときもあるよ。

* うん。そうだね。それは、サインなんだよ。「そっちじゃない、そのやり方じゃないよ」って、教えてくれてる。でも、否定はしないで。責めないで。淋しさも哀しみも、ちゃんと味わって。

☆ うん。でもどうして、 “そのやり方じゃない” 方へ、引き寄せられてしまうのかなあ。泣きたくなるし、苦しくなる。止められないよ。

* あのね。宇宙の正体は、“愛そのもの” だけど、“愛そのもの” が何なのかを知るために、一度自分自身を、“外側” から見る必要があった。そのために、宇宙の分身(たましい)たちは、“肉体”という “容れ物” に 入れられた。それが、人間なんだ。すべての苦しいことは、肉体という限界あるものと、限界を持たないたましいとのギャップから生まれる。でもね、その苦し みの中でこそ、愛の本質を知るんだよ。ひとりひとりが、それぞれの人生を生きて、苦しみの中に、愛を見つけて、もう一度もとの場所、“愛そのもの” の世界に還ること。その過程のぜんぶが、人間の役割なんだよ。

☆ そうなの? じゃあ苦しいっていう気持ちにも、ぜんぶ意味があるということ? 

* そうだよ。この地上のぜんぶの苦しみは、そういう意味で、“役割を果たしている” んだ。きみが苦しいのも、同じなんだよ。苦しみの中だからこそ、大きな大きな愛を学んでいるでしょう。

☆ うん……。そうかもしれない。でも、あまりにも、ひどいこと、ひどすぎることが、この地上にはあるよ。戦争とか、環境破壊とか、国同士の陰謀とかさ。

* そうだね、それを今、宇宙は見てるよ。

☆ 宇宙は、哀しんでる?

* ううん、ただ見てるよ。黒い渦巻きは、長くは続かない。きみたちから見たら、長いと感じるかもしれない。救いようのないことに思えるかもしれない。でもね、宇宙の大きな大きな目から見たら、ほんのひとしずくの出来事なんだ。だから、飲み込まれすぎないで。

☆ うん…。

* その黒いひとしずくよりも、君がお母さんからもらった愛は、その無限大倍くらいの光と強さがあるんだよ。ものすごいパワーなんだよ。

☆ そうなの? 名もない親子の愛が?

* そうだよ:)覚えておいて、闇より光のほうがずうっと強い。

☆ 闇の方にこそ、よく影響されちゃうけど。怒りとか、嫉妬とか、後悔とか。

* 闇の正体は、何だと思う? 単なる影だよ。肉体から生まれる幻の壁が、影をつくる。影も幻なら、壁もまた幻なんだ。“存在しない壁と影” にさえぎられて、光が見えなくなっているだけなんだ。

☆ そうなの? こんなにありありと感じることも?

* 影は目隠しが上手なんだ。“ほんとうのこと” を見えなくしてしまう。どんなに大きな災いに見えることも、きみの心の中の苦しみも、同じしくみで生まれる。“ほんとうに存在する” のは、光だけなんだよ。

☆ でも、毎日を生きていると、難しいこともあるよ…。24時間、光でいられないよ。

*いいんだよ。その “難しい” も、過程なんだよ。「できない」って責めないで。そのギャップの中で何を感じるかが、大事なんだよ。湧いてくる感情は、ただ感じて。感じ尽くして。でも、“ほんとうのこと” を、決して忘れないで。

☆ “ほんとうのこと” かあ。

* “お母さんはいる” よ。ただ、今までとは違うかたちで。純度100%の愛で。だからそれに触れるには、きみ自身が愛の状態でいないとなんだよ。そしてそれを、きみ自身が生きることで、描くことで、表現して、伝えて。それがきみの役目。

☆ うん。

* きみとお母さんの、共同の役目だよ。何も欠けていなかったし、今も欠けていない。お母さんはしあわせだったし、今、もっとしあわせなんだよ。それを知ってあげて。

☆ それは、なんとなくわかる。だから、今わたしは、“大丈夫” なんだと思う。だから、お父さんにも、このこと知って、“大丈夫” になってほしいなあ。

* お父さんには、お父さん自身のペースと、お父さん自身の道がある。教えるんじゃなくて、まずはきみ自身が、お母さんを感じて生きること。そのエネルギーはお父さんにも伝わるし、他のひとにも伝わる。大事な大事な役目だよ。

☆ わかった。がんばるよ。

* “みんな” 見てるよ。応援してる。お母さんもね、いつもそばにいるよ。

☆ うん:)ありがとう。

* きみにも、ありがとう:)



※このおはなしはウェブマガジン「Cradle Our Spirit!」2014年9月号に掲載されたものです。


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ふなと愛|ギブネスを生きるひと・言靈吟遊詩人
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