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「おいでーーーーー!!!!!!」

二年前の今日
ビクトリアのBeacon Hill Parkで。
わたしは絶叫していた。
比喩ではなく、文字通り腹の底から叫んでいた。

その日は雲ひとつない青空で
緑の海のような公園は
太陽と愛し合うひとがにこにこと行き交い
野生のリスや孔雀や鳥たちが
木漏れ日と遊んでいた。

散歩道を抜けると突然
岩肌が露出した丘があった。

さっきとうって変わって人影は少なく
しんと空気が澄んでいて
オレンジ色の土岩には
太古の壁画のように影がくっきりと染み込む。

生まれたての地球みたいな場所だった。

ここだ、とわたしは思った。

心臓が波打つ。
丘の上に立って。
息を深く吸って。
叫んだ。

「おいで〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」

のうのうと降り注いでいた光が
一万分の一瞬、静止した。

もう一度。

「おいで〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!」

空の青の粒子が震えた。

声が、波になって
わたしの細胞と世界を揺らした。

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「雲ひとつない青空の日に、
 空に向かって『おいで〜!!!』って
 思いっきり叫ぶの。
 そしたら、赤ちゃんが来てくれるよ」

そう教えてくれたのは稲美さんだった。

「ここだよ!!」
「もう準備できてるから、来ていいんだよ!!!」

雲の上で待ってくれている赤ちゃんに
そう知らせるの。

葛藤して、戦って、泣き伏してきていても
ず〜っと、小さな命は待ってくれている。
お母さんがほんとのほんとに準備ができる時を、待っている。

その命に向かって、知らせるんだよ。

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人生で、あんなに叫んだことはなかった。
たぶん、この世に生まれた時くらい?

腹の底どころか、
足の裏の下のずっとずっと下の…
地球の真ん中から、叫んだ。

自分でもびっくりして、おかしくて、
ひとりで泣いて笑った。

それから。
雲の上で見ていた命は
わたしのおなかの中にやってきて
今、おふとんの雲の上でぐうぐう眠っている。

あのとき。
聞こえたのかなあ。

もう少し大きくなったら、聞いてみよう。

ありがとうね。


愛より愛こめ。

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ふなと愛|ギブネスを生きるひと・言靈吟遊詩人
ここから愛を感じたら、愛を循環させてみてください^^ LOVE & HUG!! 愛より愛こめ。