世界の始まりと終わりの螺旋を描く本
夜の橋をそのひとと渡っている。
向こう岸を仰ぐと
空を覆うほどに巨大な金色の土星と
青光りするメタリックな地球が浮かんでいる。
世界の終わりか始まりを見たかのように
興奮して隣のひとを振りかえると
「あれは、バルーンだよ。
あの街のカジノのが空に浮かべてるんだ」
そのひとはとても背が高くて
顔を埋めると胸にも届かなくて
それがおかしくてわたしは
エレベーターの中で何度も
彼の腰に腕を回しては笑った
彼は一冊の本の創り手だった
重厚な表紙はクリーム色に銀の箔押しで
題名が刻まれており
霧のように薄い紙がかけられている
描かれているのはこの宇宙そのもので
1ページごとに1階層の世界が凝縮されていた
そのあまりの美しさと
吐き気がするほどの濃密さに
頁をめくるごと螺旋階段を上るがごとく
恍惚のまま彼の脳内に囚われて
その巨大な物語を紡ぐ一文字として
そこに存在し続けたい、
そう願わずにいられなかった
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