それは 宇宙でいちばん大好きな者同士でしかできない
☆ こんにちは、ハイビスカスのつぼみさん。
* こんにちは:)
☆ 覚えてる? 葉っぱ一枚もない、棒切れみないな姿だったのを、お母さんが「ちゃんと花が咲くから、土を替えてあげて」って言って、わたしがあなたの土を替えたの。4ヵ月前に。
* 覚えてるよ:)お母さんはちゃんと、ぼくらの中のいのちを見つけてくれたんだ。それがうれしくて、見て、葉っぱもつぼみもいっぱい。
☆ うん、びっくりした:)でも、そのお母さんのいのちが、こないだ、肉体を卒業して、たましいに還ったよ。
* 知ってるよ。それは、本当は、お母さんのたましいにとっては素敵なことだけど、きみたちは、きっと悲しいだろうね。
☆ うん。どんなに宇宙のしくみを理解していても、お母さんのたましいが今、どんなに自由で幸せにしているかわかっていても、やっぱり淋しいし、悲しい。
* そうだね。
☆ こんなに早く逝くと知っていたら、あの時一時間でも長く一緒にいたらよかった、って、それが苦しい。
* あのね、お母さんはね、もうその時にはね、たましいがはんぶん肉体から抜け出していたんだよ。だから、きみの肉体がどこにいたって、きみのたましいがちゃんと近くにいてくれたこと、お母さんは知っていたよ。
☆ うん……。お母さんのいのちはお母さん自身が決めるものだからって思いながらも、でも、やっぱり、もっといい治療を見つけてあげられたんじゃないかとか、家のベッドの位置が鬼門だったから回復しなかったんじゃないかとか、何かできることがあったんじゃないかって、思ってしまう。
* そうやって、お母さん自身も、30年前に亡くなったお兄ちゃんのことで苦しんできたんだよ。でもね、誰のせいでもないんだよ。それぞれのたましいが、選んでいることなんだよ。
そのたましいの筋書きの後に、風水とか、いろんな解釈はあるんだよ。たましいの方が先なんだ。
☆ 苦しいよ。
* そうだね。苦しいね。でもね、苦しいと思っているのは、きみの肉体だよ。きみのたましいは、本当は、知っているでしょう。お母さんが今どれだけ幸せでいるか。最後の日まで、どれだけ幸せでいたか。だから今、きみの涙は、苦しみからでなく、愛から溢れているでしょう。
☆ うん、たましいはきっと知ってる。でもわたしのたましいは、まだ肉体の中にあるから、やっぱり苦しい。母に、“別の道”があったんじゃないか、って思ってしまう。
* “別の道”は、なかったんだよ。ひとつの道、お母さんが選んだ道しかなかったんだ。誰もそれに立ち入ることはできない。生き方も死に方も、すべて、その人自身が選んでいる。それにどう関わるかは、関わる人自身の道なんだ。道同士が交わることはあっても、それぞれの行く先は変えられない。どの道を行って、どこへ向かおうとも、それを最大限に尊重して、祝福してあげるだけなんだ。“別の道”は、なかったんだよ。
☆ そうなのかな……。自分が弱ると、何かが足りなかったんじゃないか、って思って苦しくなる。
* お母さんはお母さんの道、きみはきみの道を生きていて、交わり、愛し合って、光を放ってた。ものすごい光を。その光を、宇宙は、かみさまは、どれほど喜んだと思う? 「そんなんじゃまだまだ足りないよ」って、かみさまが言うと思う?
☆ うん、言わないね、きっと。
* 最後まで愛をいっぱい交換しあっていたきみたちを、まるごと、かみさまは愛していたんだよ。ちゃんと、ずっと見てたんだよ。
☆ うん、そう思う。感じる。
* いのちは、比べるものではないから。どれだけ、何時間一緒にいて、どこに何回行ったかとか、そうじゃないんだ。きみの(ぼくらの、でもある)お母さんは、苦しい体の中でさえ、とってもよく光ってた。今を受け入れて、目の前の小さな幸福に感謝して、とどこおることなく、かわいい笑顔で。
☆ うん。病院のベッドの上でも、小さい女の子みたいにニコニコしてた。
* 「病気で、車椅子で、かわいそうなお母さん」「平均寿命だと(平均なんてないんだよ)あと20年生きられたのに、かわいそうなお母さん」ってラベルを貼るのは、お母さんのことを何も知らないからなんだ。お母さん本人のたましいは、最後まで、キレイに光っていたよ。そのことを、きみが一番よく知ってるでしょう。だからこそ、愛おしかったでしょう。
☆ うん。
* それを知ってあげることも愛なんだよ。きみが生きてる中で、お母さんが光っていたこと、今、もっともっと光っていること、知ってあげて。それが、地上で生きているひとの役目でもあるんだよ。
☆ でもね、最後の三日間、お母さんはすごく痛がって、苦しんでた。それがどうしても納得いかない。“お母さんのたましいがそれを選んだ” と思えない。
* 一見そうとわからないところにも、光はある。
あの苦しみに寄り添うことで、寄り添われることで、きみは愛することを、お母さんは愛されることを、強烈に学びあったんだよ。それはね、宇宙でいちばん、大好きだった者同士にしかできない。ほんとうに本当に、素敵なことだったんだ。
☆ うん……。そうかもしれない。
* そして、そんな地上のいのちたちを、どれだけぼくらが、宇宙が、かみさまが、大事に大事に想っているか、覚えていて。
☆ わかった。まだ、淋しいけど、わかった。
* その “淋しい” も、大事にしてね。それがきみに染み込んでひとつになった時に、きみはまた新しいきみになる。それまでの道すじは、ときどき苦しいけど、ぼくたちがいつも、ちゃんと見ていること、覚えていてね。
☆ うん。ありがとう。
* きみにも、ありがとう。love:)
☆ love:)
※このおはなしはウェブマガジン「Cradle Our Spirit!」2014年8月号に掲載されたものです。