まんまる堂にて
哀しい旅の帰り道で
一軒のカフェを見つけた
林の中の古い民家を
若い夫婦が改装したそこは
(店主の名は一開一打という)
木のあったかさと
夫婦の愛のぬくみに満ちていて
席に着いたわたしは
やっと息をできた気がした
メニューの中から
おまんじゅうを頼んだ
店の名前の通り
まんまるのおまんじゅうは
両手で捧げ持ちたくなるような
神聖な白の求肥の中に
細やかな粒子のこしあんが詰まっていて
お皿の上でその身の半分を
透明な蜜に浸かっている
齧った瞬間に
さらりとした蜜と
柔らかな求肥と
こしあんが
奇跡のように
ひとつになって
わたしの命と
ひとつになって
ああ
ただの
命なんだ
おまんじゅうもわたしも
ずっとずっと
太古の昔から
遺伝子の螺旋を
繋ぎ続けて
ここに辿り着いて巡り合った
ただの
ひとつの
あたりまえの真実の
あまりの美しさと美味しさに
涙がつらつらと
頰に流れて
その塩味と一緒に
わたしはおまんじゅうと
ひとつになり続けた。
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