鬼軍曹の黄色い薔薇
今朝、noteを開いたらこんな素敵な記事を見つけました。
大好きな耀さんのお写真と、秋薔薇のラベさんの御句の記事がありました。ご紹介のご許可をいただきました。ありがとうございます。
薔薇 って特別なお花のように思います。
可憐、優美、豪華・・・薔薇にもいろんな薔薇があって、春の薔薇、秋の薔薇、ぜんぜん違うよなぁと思います。
俳句には秋の薔薇がよく詠まれます。
どことなく色味も落ち着いた感じが俳人には好まれるようです。
耀さんのお写真をじっくり拝見していて、そういえばたった一度だけ大きな薔薇の花束を頂いたことがあったと思い出しました。
いつもながらの拙い文章ですが、良かったら読んでください。
文章書くのがほんと苦手で・・・すみません。汗
二十代、まだ入社して三年目に私は東京への異動を命じられた。
大阪生まれ大阪育ち、こてこての大阪人が東京へ。
こんなチャンスなかなかないで、と言われた。でも正直言うと
なんで私やねん、と思った。
友達もいない、道も電車もなんにもわからない、大都会東京。
田舎者だと、なにしにきたんだとバカにされるんじゃないか。
私なんかがちゃんとやっていけるのかなぁ、とは思ったものの、このような機会がなければ一生住むことなんかないわよ、と努めてポジティブに受け止め、頑張ってきてね、と言われたら妙に張り切るイタい性格だったから、まぁなんとかなるだろうと。
住んでみたら東京というところは私のような人がたくさんいるところだった。都会の冷たいイメージは一掃された。
地方から仕事のために東京へ来られた方々がたくさんいて、思ったよりもずっと快適なところだった。関西圏の方もたくさんおられる。
持ち前の図々しい性格が功を奏しすぐに馴染むこともできたし、入社式、新人研修以来だった同期たちがいろいろと気遣ってくれたのが本当にありがたかった。
私は人事部に配属されていたので、しょっちゅう他部署に顔を出す。
そんな折、お昼一緒に行こう、帰りにどっか寄ってこ、など、声をかけてくれる。プライベートでもいろんなところに連れて行ってくれたし、なにかあってもひとりじゃない、大丈夫。と安心させてくれた。
たくさん部署がある中で、少数精鋭の男性職員だけの部署があった。
ノックして入る。
失礼します、おはようございまーす。
全員振り返る、なんだこいつは??の視線。
仕事やねんて、そんなもん気にしてられへん。
トコトコトコ・・・と課長の前に行く。一礼してから、
人事部に配属されましたAlohaと申します。よろしくお願いいたします。
ではこちらの書類なのですが・・・
と一通りお話して、失礼しました。と下がる。
もう一度、失礼しました、と言って部屋を出る。
と、同時にその部署にいた同期の男の子が後を追って出てきた。
そして、誰にも引き継ぎを受けていないのかと言う。
書類を届けるだけのことに引き継ぎが必要なのか?と聞くと、
あの鬼軍曹に直接書類を届けにきたのはお前ぐらいだと言う。
鬼軍曹、課長さんのこと?
と聞くと、泣く子も黙る鬼軍曹らしい。見た目でわからないのかと言われた。
大阪にはもっと怖い鬼がいっぱいおるから、ぜんぜん鬼には見えんかった、と笑った。
これまでは鬼軍曹がいない時間を見計らって机の上に書類を置いておくのが当たり前だったらしい。なんて失礼なことをと思ったので、
私はそんなことはしないよ、いない時間狙うなんてめんどくさい。でもその方が課長さんがめんどくさくなくていいんだったら教えてね、とお礼を言って別れた。
その後止められることもなかったので何度かそのような機会があり、失礼しまーす、といつも通り入っていくこと数回、課の方々からも挨拶をしてもらえるようになった。
初めは変わった子だと思われていたみたいだ。この部屋で課長とくつろいで話をしていく社員はいないよとも言われた。そのうち、
アロちゃん来ましたよ、課長!!
アロちゃん、課長今日ご機嫌斜めだからなんとかしてよ。
なんて冗談を言ってもらえるようになった。
課長の席の横にはいつの間にか丸椅子が置かれていて、Alohaの椅子とのことだった。オレは甘い物食べないからとおやつをいただいたり、少し世間話をしてまた仕事に戻る。
たったそれだけのこと。
どの部署でもおなじこと。
挨拶をして、仕事の話をして、少しお話して。
でもしばらくしたら、この部署のみなさんの仕事に対する姿勢や、課内の信頼感のようなものが他の部署とは圧倒的に違うことに気づく。
こっそり同期の子に聞いてみた。
俺たちはさ、少数精鋭のエリートとか言われていろんなプレッシャーとかに押しつぶされそうになるんだよ。実際デカい仕事が多いし。
でも課長が言ってくれたんだ、なにかあってもあとのことは心配するな、しっかり仕事しろって。
万一オレの首が飛んだところで、幸いオレには養っていかなきゃならん家族はいない。こう見えてそこそこ金も持ってるから心配するな、って笑って言ってくれるんだ。
実際トラブルになったとき、矢面に立っても言わなきゃならない事は言ってくれるし、謝るときはきちんと一緒に謝ってくれる。
先輩たちもそうなんだよ、頑張ったらめちゃくちゃ褒めてくれるし、ポカしたら怒ってくれるしその後のフォローもしてくれる。
だからみんな自分の仕事にプライドを持って、いつだって真剣に頑張ってるんだよ。少数精鋭たるところを見せたくてさ。最近やっとその一員になれたような気持ちでいるんだ。
と言って照れくさそうに笑った。
ちょっとだけかっこよく見えた。
やっぱりすごい集団なんだ、ここは。
そしてチームワークもピカイチなんだ。
だからみんなが『あそこは違う、別格だ。』って言うし、実際別格なんだな、と思った。
鬼軍曹は課内の忘年会や新年会などに、一人は嫌だろうから同期の子も呼んでおいで、と私や同期の女の子の分の会費も払ってくださって、おいでおいでと言ってくださった。
お金取ってくれないんだよ、ほんとにいいのかなぁ、と課内の人に言ったら、そのほうが課長は嬉しいと思うよ、みんなもそうだけど。と言ってくださったのでたびたびお邪魔させてもらっていた。
そして、何年かして、とうとう私に大阪へ帰ってこいの辞令がでた。
このときはもうこっちで頑張りたくなっていたので、会社なんて勝手なもんだよと悪態をついてみたりしたが、サラリーマンの運命だ。
盛大に送別会をやろう、と言ってくれたのは鬼軍曹だった。
しかも、一回ぐらいアロちゃんの私服姿を見てみたいなぁ、という鬼軍曹のリクエストに課内のみなさんも、いいねぇと言ってわざわざ休みの日に集まってくださった。
何着ていけばいいんやろ、と思ったが普段どおりのジーンズにスニーカーで出かけた。もうすぐクリスマス、という12月初めのことだった。
魚が好きな私のためにおいしいお店を選んで予約してくださっていた課内のみなさん。みなさんの普段着が見られたのもいい思い出となった。
もう開始時間だというのに鬼軍曹がまだ来ない。
きっと何着ていけばいいのか、鬼軍曹なりに悩んでるんだよ。なんてみんなで笑って待っていた。
遅くなってすまん。
とやってきた鬼軍曹。
走ってきました、というのがわかる。
そして真っ赤な顔で恥ずかしそうに某有名店の大きな紙袋から取り出したのは、それこそ大きな黄色い薔薇の花束だった。
オレさぁ、花なんて買ったことなくてさぁ、なにがいいか迷ったんだがこの花がいちばんアロちゃんらしくていいやと思ってさ。
コイツ(私の同期の男性)に聞いても、Alohaは食べ物のほうが喜びますとか言うんだよ・・・まったくほんとに・・・恥ずかしいなぁ。
と言って早速手渡してくれた。
みなさんが、課長、そういうのはお開きのときですよ。と笑ってツッコんでいたが、そういう飾り気のない課長さんなのだ。
今までほんとに世話になったよ、ありがとう。
こんなむさ苦しい男ばっかの部署によく来てくれたもんだよ。
オレなんて今まで煙たがられて誰も挨拶もしなかったけど、初めて来た時びっくりしたもんなぁ。誰も教えてくれなかったのか、人事でいじめられてんじゃねぇのか、って思ったぞ。
大阪いやんなったら戻ってこい、この課始まって以来初めての女性職員として迎えてやるぞ。
おつかれさん、またな。
この人に会えた、この課の人達に会えたこと、絶対に忘れない。
と思った。
実際この後事故に遭って忘れてしまったことはたくさんあるが、この東京での日々のことはしっかり覚えている。
黄色い薔薇の花言葉、友情、思いやり、幸福、温かさ。
たくさんの優しさを頂いた日々に感謝している。
長くなりました。笑
そして本日の一句
季語 秋の薔薇
承和色の記憶の秋の薔薇開く
そがいろのきおくのあきのばらひらく
そのまんまです。汗
今日もへたっぴの文章、そして句をよんでくださり、ありがとうございました。
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