日本の中絶はどんな道をたどってきたのか①
いま、「 #経口中絶薬の高価格設定に反対します 」という声が日本のTwitterトレンドに食い込んでいる。現時点(2021/12/24/02:43)では12,396件ものツイートがなされている。フェミニストのみならず、主婦や漫画家まで幅広い層を巻き込んだ、大きな渦が出来上がっている。
本記事は、「#経口中絶薬の高価格設定に反対します」というTwitterトレンドの盛り上がりで争点になるのは何か、そして経口中絶薬の話題が日本に渡るまでに、日本国内の中絶の歴史はどう進んできたのかを述べるものである。
本記事で経口中絶薬論争ついての更なる知識や、議論の切れ端を提供できたら良いと思っている。積極的にシェアやコメントをしていただき、更なる議論の発展になることを望んでいる。
今回は、経口中絶薬が日本と世界でどう扱われているかを比較していこうと思う。
経口中絶薬とは何か
イギリスの製薬会社ラインファーマは12月22日、厚生労働省に経口中絶薬を承認申請した。
ラインファーマはイギリスに本社を置き、女性の健康と安全な生殖ケアを推進するため、主に妊娠中絶薬を開発している製薬会社である。
会社からのメッセージとしてこんなことが載せられていた。
「日本で求められる医薬品を開発して提供していく製薬会社です。
特に、女性の健康と安全な生殖ケアに貢献するため努力します。」
リプロダクティブライツを意識した、フェミニズム的な会社だと見受けられる。
【イギリスのラインファーマのサイト】
【日本のラインファーマのサイト】
今回、ラインファーマが厚生労働省に製造販売承認申請したのは、「ミフェプリストン」と「ミソプロストール」という2剤の人工妊娠中絶薬だ。
「製造販売承認申請」というのは、日本でも海外の医薬品を正規に出荷させるための申請である。
わが国で医療品を市場へ製造販売することは、医薬品医療機器等法で規制の対象となっている。医療品医療機器等法というのも名前の通り、医療品や医療機器の品質や有効性、安全性の確保に関わる法律だ。
つまり、人工妊娠中絶薬を日本で出荷するためには、医療品医療機器等法のもと安全性等が確認された後、厚生労働省や各都道府県の許可・承認を受けなければならない。
今回承認申請されたのは、「ミフェプリストン」と「ミソプロストール」の2剤(2種類)には、どんな作用があるのだろうか。
まずミフェプリストンを1錠服用し、その36〜48時間後にミソプロストールを4錠服用する。母体は合計5錠を服錠することになる。
「ミフェプリストン」は、妊娠継続(妊娠の維持)に必要な黄体ホルモン(プロゲステロン)の働きを抑える。そして「ミソプロストール」は、子宮収縮作用がある。
この2剤を服用することによって、子宮内膜が剥離し、子宮伸縮とともに胎盤や胎児が排出されるという仕組みだ。
ミフェプリストンとミソプロストールを併用投与することによって、人工妊娠中絶の成功率が高まる。対象(適応症)は妊娠9週までの妊婦であり、服用24時間以内の中絶成功率は93.3%にものぼる。
【米国食品医薬品庁からの説明】
Q. ミフェプレックスは何の薬ですか?
A. ミフェプレックス(ミフェプリストン)は、ミソプロストールという別の医薬品と併用されて、妊娠初期の中絶の用途で使用されます。妊娠初期とは最後の月経開始日から70日以内を指します。最後の月経開始日70日後以降の妊娠の中絶の用途では承認されていません。ミフェプレックスは妊娠状態を保つために必要なホルモンの働きを抑える作用があります。
中絶したとき、通常の生理よりも重い出血及び腹痛が見られます。ミフェプレックスを服用した女性100人中2~7人程度が、中絶を完了するため又は膣からの多量出血のため、手術を必要とします。
Q. ミフェプレックスを服用してはいけない人は?
A. 次のような人は、ミフェプレックスを服用してはいけません。
・ 最後の月経開始日から70日以上を経過している妊娠している人
・ 子宮内避妊具(IUD)を装着している人(ミフェプレックス服用前にIUDを外す必要があります。)
・ 子宮外妊娠(卵管妊娠)と診断された人[注(添付文書より訳出):子宮外妊娠(卵管妊娠)に対する中絶効果はない]
・ 副腎に障害がある人
・ 抗凝血薬を服用している、又は出血傾向がある人
・ ステロイド剤を服用している人
・ ミフェプリストン、ミソプロストール又は同種の薬に対するアレルギーがある人
Q. 服用後どのような症状に注意すべきですか?どのような副作用がありますか?
A. 腹痛や出血は中絶時に予想される症状です。しかし、流産、手術による中絶、薬剤による中絶又は出産の後に、まれに重篤で生命を脅かすような出血、感染症又は他の問題が起こる可能性があります。このような状況では、できるだけ早く医師の診察を受ける必要があります。重篤な感染症により、ごく少数ですが、死亡した女性もいます。ミフェプレックスとミソプロストールの使用がこれらの死亡の原因であるという情報はありません。質問や懸念、問題がある場合、副作用や症状が心配な場合は、医師に連絡してください。
次のような症状が見られた場合は、必ず速やかに医療機関に連絡してください。
(1) 膣からの多量出血 (約100人に1人の割合で、重度の出血のために手術を要する場合がある。)
(2) 腹痛、吐き気、おう吐等(重篤な感染症、その他重大な問題(子宮外妊娠含む)の兆候の可能性がある。)
(3) 発熱 (重篤な感染症、その他重大な問題の兆候の可能性がある。)
腹痛と膣からの出血は、薬剤による中絶において予想される症状です。通常、これらの症状は薬剤の効果があることを示します。しかし、時には腹痛や出血が認められても、中絶が完了せず、妊娠が継続していることがあります。このため、使用者はミフェプレックス使用後約7~14日後に医師を受診し、フォローアップを受ける必要があります。
最も一般的な副作用は、吐き気、脱力、発熱、悪寒、おう吐、頭痛、下痢、めまいです。
(米国食品医薬品庁(FDA)の公表する、ミフェプリストン(ミフェプレックス)に関する患者向け情報(MIFEPREX Medication Guide(2016年3月)より抜粋)
日本で経口中絶薬の製造販売承認申請は認可されていないが、日本で経口中絶薬は使えるのだろうか?
薬の個人輸入は特例的に、税関の確認を受けたうえで輸入することができる場合がある。
①毒薬、劇薬及び処方箋薬を除く「24個以内の外用剤」
②毒薬、劇薬又は処方箋薬「用法用量からみて1ヶ月以内の分」
③上記以外の医薬品・医薬部外品「用法用量からみて2ヶ月以内の分」
以上の範囲内では、輸入者が個人的な使用だけに留めることを前提にして、「薬の個人輸入」ができる。輸入した医薬品等を他の人に売ったり譲ったりすることは認められず、また他の人の分をまとめて輸入することも認められていない。
詳しくは厚生労働省のホームページを参考にしてほしい。
そしてわが国では、経口中絶薬の個人輸入や使用は、推奨されていない。米国食品医療品庁(FDA)では「数量に関係なく、医師の処方せんまたは指示書に基づき必要な手続きを行わない限り、個人輸入することはできない。」と書かれている。
(個人輸入したとしても、医師でない者が勝手に使用してしまうと、刑法の堕胎罪に抵触する。)
厚生労働省では平成16年、経口中絶薬の健康被害を懸念して、注意喚起や個人輸入代行監視指導の強化が行われている。
個人輸入される経口妊娠中絶薬(いわゆる経口中絶薬)について
国内では承認されていない経口妊娠中絶薬は、ときに手術が必要となる出血を起こすことが知られており、欧米でも医師の処方と経過観察が必要とされる医薬品であるため、安易に個人輸入され、使用されることによる健康被害が懸念されます。
そのため、医療機関を受診しないで個人で使用することの危険性を厚生労働省のホームページや報道機関を通じて呼びかけるとともに、個人で輸入して安易に使用されないよう、以下の措置を行うこととしましたので、お知らせします。
1 厚生労働省のホームページの掲載による注意喚起等
1) 経口妊娠中絶薬を医療機関を受診せずに安易に服用することは危険ですので避けていただくよう、厚生労働省のホームページにQ&Aを掲載して、広く呼びかけることとしました。
2) 健康被害の実態を把握して、注意喚起の対応を進めるために、(社)日本医師会等の関係団体あてに協力を依頼しました。(参考)
2 個人輸入代行業者に対する監視指導の強化
個人輸入代行と称している場合でも、不特定多数の者に希望を募る広告を行う等、その形態によっては、薬事法違反に該当するおそれがあるため、あらためて
1) 各都道府県に対し、個人輸入代行業者のインターネット上の広告等について、監視指導の徹底を依頼
2) インターネットで広告を行っている個人輸入代行業者やプロバイダに対して警告メールの送付
を行い監視指導の強化を図りました。
3 個人輸入に対する制限
経口妊娠中絶薬については、これまでは少量であれば厚生労働省での手続きが無くても個人で輸入できていた取扱いを改め、原則として、医師の処方に基づくことが地方厚生局で確認できた場合に限って輸入が可能となるよう、個人輸入を制限することとしました。
(参考)個人輸入を制限し、注意を喚起する経口妊娠中絶薬の商品名等
一般名: ミフェプリストン(Mifepristone)
販売名:
(EU) ミフェジン(Mifegyne)
(米国) ミフェプレックス(Mifeprex)
(中国) 息隠(米非司酉同片)
(台湾) 保諾(Apano)(平成20年5月追加)
開発時の名称である「RU486」とも呼ばれています。
(厚生労働省ホームページより抜粋
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/10/h1025-5.html#qa)
ただし、医師が患者の治療に用いるために、未承認薬を日本へ輸入する行為は合法であるため、医師による治験が、日本でも行われた。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210422/k10012990551000.html
それに対して、世界保健機関であるWHOによる、人工妊娠中絶方法の扱いはどうであろうか。
WHOが推奨する人工妊娠中絶方法は主に二つある。
①真空吸引法
②経口中絶薬
(http://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/70914/9789241548434_eng.pdf?sequence=1)
To the full extent of the law, safe abortion services should be readily available and affordable to all women. This means services should be available at primary-care level, with referral systems in place for all required higher-level care.
全ての女性が容易に利用できるような価格で、安全な人工妊娠中絶方法は保障されなければなりません。中絶が優先的に保障され、全ての女性が高度な医療にアクセスできる状態が整っていなければなりません。
例えば、以上の文を抜粋しても経口中絶薬は「比較的安全な方法である」という前提のもとに、その普及が推奨されている。ただし、それでもやはり母体への危険は伴う。
その中でも経口中絶薬について記載されているのが以下である。
(https://apps.who.int/iris/rest/bitstreams/1251758/retrieve )
ここでは、中絶の医療管理について、とくに経口中絶薬の使用方法と処置の注意点が書かれている。
例えば、この表には妊娠期間に合わせて、どれだけの薬をいつ服用すれば良いのかが記載されている。(※MIFEPRISTONEというのはミフェプリストン、MISOPROSTOLというのはミソプロストールのことである。)
検索方法としては
①WHOのホームページに飛ぶ
② Publications(出版物)に進む
③Overview(概要)に進む
④記事を選択する
⑤Download(ダウンロードする)
という風に資料にたどり着くことができる。より情報の幅を広げるため、ぜひ皆さんにも海外の記事に挑戦してみてほしい。言語表記に日本語はなかったため、英語が苦手な方はGoogle翻訳片手になってしまうかもしれない。
次の記事は「#経口中絶薬の高価格設定に反対します」というハッシュタグで、何が問題視されたかについて述べていこうと思う。
※当記事はあくまで「おおまかな説明」であり、薬の作用について断言するものではありません。詳しくは、厚生労働省のホームページや専門家に頼ることをオススメします。
うーたゃ
ただいま不法行為に悩まされ、裁判のお金を作るのに苦しい状態が続いています。 当方も学生身分で、大学受験を控えた高校生の身分なのでお小遣いがとても厳しいです。そこで、ここまで読んでくださったみなさまに、ご協力をお願いしたいと思いまた。 もし、「記事がわかりやすいな」と思ってくれたり「裁判頑張れ!」と応援してくださる方がいらっしゃいましたら、是非「投げ銭、スキ、シェア、サポート」をよろしくお願いします🙇♀️
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