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クィンシー前日譚 第15章

【新生クィンシー】


「よし!いい感じ!」

かつて師匠と住んでいた隠れ家と環境が似ている場所に、新たな隠れ家を構えた。そこそこ深い森の中で周辺からは全く目につかない。小川も近く、人家からは遠く、土も肥えていて簡単な野菜なら作れそうだ。

流石に小屋づくりは私には出来ないから、信頼できる人を選んで猟師の休憩小屋という名目で建ててもらった。

私の顔と身分を知っているのは、この世界でたった2人。舞夜とリィンだ。舞夜さんにはいつも通り資金援助を(本当に無限に出してくれるけど、いいのかな、、、)。リィンには、信頼できる大工経験がある人の紹介と、小屋づくりを依頼してもらった。(後で聞いたところルイーズだったらしい、、、)

価格交渉は舞夜に任せてしまったが、シッポを振って速攻で完璧な状態の小屋(というか、お洒落なロッジ)を作ってくれた。場所などは完全機密でその口止め料も代金に入っている旨も伝えてもらった。

街までの移動手段はサイドカー付きのドイツ製のバイクだ。以前師匠が乗っていたものと同じ型のものだが、昔またがらせてもらった時にふらふら転びそうになって『お前は3輪車にでも乗っとけ!』と言われてしまったので、、、

そして、衛星通信型の携帯端末。裏社会専用の請負業務掲示板を利用する。IDとパスワードは師匠のものをそのまま使わせて貰う(というか、このシステムが出来て以来歴代クィンシーはみんな同じらしい)。

最後に、最も重用な仕事道具、というかもう体の一部であるスナイパーライフルだ。

元々は師匠のお古を使っていたのだが、心機一転で新調した。(とは言え、ベースは同じでよく手に馴染んでいるから仕事に支障は無い)

『師匠と同じ深いグリーンのストックで、銃砲店で見つけてビビッと来ちゃったんです。私だって女子なので、みんながブランドバッグを衝動買いしちゃうのと同じ感覚ですよね♪』

護身用には短い銃身のリボルバー銃。いちおうマグナム弾も撃てるものだ。シルバーで目立ちやすいが、あくまでも護身用なのでここは目をつぶって貰おう。綺麗だし。可愛いし。

荷物も一通り片付き、ベッドに腰掛けてぐるっと部屋を見回す。

当然師匠の気配は一切無い。だが何故だろうか、どうもすぐそばにいてくれる気がするのだ。

ハンガーにかけたスカーフを見て、一人呟く。

「師匠、ここから始めます」

端末の画面が光る。依頼主からの返信。仕事が決まった。よし、早速明日の朝出発だ。

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