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クィンシー前日譚 第20章

【休息】


南米での激務が終わり、その後も続けて呪術師、魔術士、テロリストグループの暗殺をこなした。徐々に慣れてきたのか、それとも麻痺してきたのか、仕事中は自然と私情をシャットアウト出来るようになってきた。

少しペースを上げてしまった気がする。今は一人、隠れ家のベッドに腰掛けている。街で買い物を済ませて帰ってきたところだ。少しの間、休暇を取ろうかな。

テーブルの上に置いた、まだメンテしていないリボルバーを見つめる。師匠と買いに行き、私が頑として譲らなかった物だ。今持っているものは2丁めで、ステンレスシルバーのモデル。師匠に買ってもらった時はブラックのモデルだった。

『護身用でマグナムはいらん!もっと小型のものにしておけ!』師匠との会話を思い出す。

『だって、すごく綺麗なんですよ!エジェクターロッドのラグからバレルに繋がる曲線は絶対に外せません!』師匠はため息を付いて『じゃあせめてシルバーじゃなくてブラックにしてくれ。そこが妥協点だ、、、』なんだかんだで優しかったな、、、

その時のものは、師匠の隠れ家近くの湖に手向けとして沈めた。そして代わりにシルバーモデルが今の愛銃になっている。

スナイパーにとって護身用の拳銃はアクセサリーみたいなものだと思っていたが、かなり使い込んでしまったな、、、少し表面が剥がれてきたラバーグリップを見て思う。

さて、一通り片付けをやってしまってから夕飯にしよう。食材といっしょに、にゃんこのDVDをまとめ買いしてきたのだ!さあ、思いっきり羽根を伸ばすぞ〜!

***

カーテンの隙間から射し込む朝日で目が覚める。テーブルの上の飲みかけのワイングラスを見て思い出す。グラスの中はほとんど減っていない。昨夜は久しぶりに戴き物のお酒を飲んだっけ、、、でも口をつけてすぐに寝てしまったようだ。記憶がほとんど無い。『やっぱり弱いなぁ、もう少しは飲めるようになっておいたほうがいいかなぁ、、、お水を飲もっと』ボーっとした頭でフラフラしながら洗面所に向かい、鏡に向き合う。

全裸だった、、、顔が真っ赤になるのが分かる。その場でしゃがみこんだ。一人だったからよかったものを、これでは貞操の危機だ。もうお酒は絶対にやめよう。

そのまま隣の浴室でシャワーを浴びた。さっぱりしてリビングに戻ると、更に愕然とする光景が、、、 脱ぎ散らかした衣服に、ちょっと恥ずかしい痕跡、、、これ、一人で致しちゃった跡ですよね、、、もう、恥ずかし過ぎて死にたい、、、

(ちなみにワインは舞夜から頂いたもので、ルルイエに行った時のお土産との事、、、)

《シルヴィ「くふふ、これは効果抜群だったようだね♡」》

汚れた衣類を洗濯して、部屋の掃除をして一段落付く。ふぅ、久しぶりにスッキリしたな、、、

ベッドに横になり、ニヤける。体の火照りがまだ少し残っている、、、昨夜は致してしまったのに記憶が無いのは勿体ないですよね、今日はオフって決めましたし、たまにはいいですよね。

布団を頭から被り、まったりもう一度♡

《カティア「格闘ゲームはROUND2からが本番ですよ!真剣にヤッて下さいね!」》

***

色々溜まってたのかなぁ、、、途中から夢中になってしまい、まったりのはずが汗だくになってしまった、、、

改めてシャワーを浴びて一息つく。今度こそはバッチリスッキリサッパリした!さて、にゃんこの動画を思う存分見よう!と、テレビをつける。と、まずはニュース番組が流れてきた。最近は仕事ばかりで端末しか見ていなかったから、世界情勢に疎くなっているかも知れない。そのまま眺めてみる。

『アジアの実験施設で2千人を超える職員が謎の大量死』

『欧州の犯罪組織が壊滅、組織内で実験に使われていた子供達も全員死亡か』

『中東の都市壊滅、防疫修道会によるものか』

『ラヴクラフト財団から一部の強化魔術士が逃亡し組織、暴徒化』

はぁ、嫌なニュースばかりだ。防疫修道会、、、ラヴクラフト財団の強化魔術士、、、

あれ?なんだろう、この嫌な感じ。

そういえば、ブラジル戦での別れ際にルイーズさんにお願いしたけど、あれから全く連絡が無い。彼女の事だから忙しくて調べていないだけかもしれないけど、調べた上で連絡できない事情があるのかもしれない。あの仕事熱心な人だから、何も掴んでいないとは考えにくいのだが、、、

『真実に近づくなって事?』

そういえば思い出す。師匠の隠れ家を片付けた時に見た、ラヴクラフト財団からの手紙、、、ラヴクラフトはクィンシーを手駒にしたかった、しかし師匠はそれを断っていた。ラヴクラフトは強化魔術士を育てている。師匠暗殺の首謀者は強化人間の実験を成功させていた、、、

全てが噛み合う、、、ルイーズが何も言ってこない理由も分かる。私の身を案じてくれているのか。

世界最大の組織を敵に回すのか、、、

そしてそこには舞夜さんも、、、

師匠、私はどうすれば、、、

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