クィンシー前日譚 第64章
【師匠】
草原の中に土煙が濛々と立ち込める。
天を裂くヒビ割れが少しずつ広がっていく。
ゼノ「さっきまでの威勢はどうした?」
リディア「、、、ふん、まだこれからだよ。そっちもチョロチョロしてないで突っ込んでこいよ」
ルイーズ「あんまりもう挑発は止めたほうがいいかもよ、、、リディアも結構ボロボロじゃない、、、」
ミルヴァ「じゃあ次は私と遊んでくれない?いいでしょう?お姉ちゃん」
リディア「しょうがない。ミルヴァに譲ってあげるよ」
そこに転移の光。
エーリカ「ちょっと待って。誰か転移してくるわ」
***
舞夜「、、、みんな、ルルイエに帰還するわよ!詳しい話はあとで。時間が無いの!」
ゼノ「人数が合わんな。何を企んでいるか知らんが、簡単に逃がすわけにはいかん」
舞夜「ああっ、もう!時間が無いってのに!、、、って、え?」
舞夜の背後に人影。
ウルスラ「いちいち手間がかかる連中ね!早くこっちに来なさい!帰還術式はもう出来てるわよ!」
***
ルルイエ、ゲート前にて。
ウルスラ「ゼノの反応がこっちでも検知されたのよ。だからいつでも撤退できるようにわざわざ行って準備しておいてあげたの!感謝しなさいよ!」
ルイーズ「、、、ウルスラ、やっぱり本心は優しいのね、、、好き♡」
ウルスラ「気持ち悪いわね!涙目でこっちを見つめるんじゃないわよ!それよりも状況を説明しなさいよ。なんでクィンシーとロゼットがいないの?それと、クィンシーの師匠はどうなったのよ」
***
クィンシー「そろそろ舞夜さんが転移してから3分ですね」
私は師匠の向かいに座りじっと目を見つめる。
師匠「、、、あの、じっと見つめられるとちょっと恥ずかしいです」
照れ顔で少し顔を伏せてしまった、、、か、かわいい!この師匠もイイ!
ロゼット「クィンシー様」
ロゼットの冷たい声に我に帰る。彼女の背後には嫉妬の焔が見えた。そうだ、変な事を考えている場合じゃない。
『コホン』と一度咳払いをして、再度師匠を見て話し始める。私を燃える村から助け出してくれたこと、一緒に暮らしてクィンシーになるための訓練をしてくれたこと、2人で何度も死線をくぐってきたこと。最後に、師匠が撃たれてしまった最期の日のこと。
師匠は目を瞑って眉間にシワを寄せて聞いていたが、暫くして深いため息をついた。
師匠「、、、、、、、、はぁ」
クィンシー「師匠、思い出せませんか?」
師匠「、、、、、、こんな」
クィンシー「師匠?」
師匠「こんなところまで、お前は、、、まったく、本当に、昔からそういうとこあるよな」
ああ、あの日の師匠の顔に戻っている。涙で視界が滲む。
クィンシー「ああ、師匠!師匠!」
師匠の胸に飛び込んだ。優しく頭を撫でてくれた。
ロゼット「クィンシー様、お師匠様、すでに帰還術式は組んでおりますゆえ、お早く」
ああ、やっとこれで、、、
ゼノ「、、、貴様ら、こんなところにいたか」