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Ep寥廓たる地の参銃士 第6章

【無限書架】


ノルン「到着だね」

当たり一面、広大に広がる本棚。まさに無限の書架だ。

アサカ「何も難しく考える事は無いわ。強く念じて本を開けば自然と目的に繋がるはずよ」

ダイブと同時に亜紗花はアサカに変わっていたようだ。

クィンシー「では、試しに一冊開いてみますね」

一番近くにあった本を適当に引っ張り出して開いてみる、と、光が広がっていった。

***

夜明け直後の薄明るい森の中。師匠が倒れている。そこに泣きそうな顔の舞夜と一緒にいる。

そうか、これは私の記憶。ああ、そうだ。舞夜と初めて会ったのは師匠が倒れた時、、、

そして場面が変わる。

人混みの中を歩く隣には、、、リィン。

スコープを覗いた先には、、、タバサ。

、、、次々と、走馬灯の様に場面が映り変わる。

アンナやホリィと一緒に戦った南米。アーデル司祭やロゼット、ブリジット達と協力したリンの救出、、、最後に、幻夢境の底に落ちる師匠と、私。後ろからはロゼットの悲痛な叫び声、、、

ああ、たとえノルンの企みだったとしても、どうしてこんな大事な想い出を忘れていたのだろう。

『ロゼットさんの事は一生忘れません。離れていてもずっと思っていますからね』

きちんと約束したじゃないか。

***

ノルン「おーい、大丈夫か?クィンシー」

アサカ「今はまだ膨大な記憶が流れ込んできてるところみたいね。下手に起こさないほうがいいわ」

パトリシア「みんな、ヴィジョンが集まって来たわよ!」

ノルン「邪魔させるか!今回は私の罪滅ぼしでもあるんだ!」

そこに一陣の風が吹き、ヴィジョンが全て薙ぎ払われた。2つの人影が現れる。

ベストリーサ「皆さん、大丈夫ですか?」

ノルン「ああ、助かったよベアト。ところで隣の人は?」

ベアトリーサの隣には長髪を一つに束ねた赤毛の女性。

ベアトリーサ「彼女は私の古い友人です。私が聖女として幻夢境に行くことになった時に、必ず会いに来ると言ってくれたんです。それが、本当に来てくれたなんて」

???「まあ、約束したからね。一度デブリになって記憶のほとんどを失ってしまったけど、この無限書架で思い出す事が出来たよ。あれ?この倒れている子は、、、」

赤毛の女性はしゃがみ込んでクィンシーの顔をマジマジと覗き込んだ。

???「ああ、今代のクィンシーだね!私の教え子を師匠と呼んでいた」

***

全部思い出した。ゆっくりと目を開けると涙で滲んだ視界の中に女性の顔、、、

ああ、この人は師匠が先生と言って慕っていた先々代のクィンシーだ、、、

ノルン「気がついたかい!?記憶の方はどうだい?思い出せたかい?」

クィンシー「、、、はい、おかげさまで。それと師匠の先生、ご無事だったんですね」

先生「はい、こちらもおかげさまで。ところでお師匠さんは?」

クィンシー「今は記憶を全て取り戻したあとで、ルルイエで休んでいます。ああ、私、早くルルイエに戻ってみんなに謝らなきゃ!」

ノルン「いやいや、今謝ってもみんな何のことか分からないよ。これからクィンシーが思い出した人達を順にここに連れてくるからさ。みんなが思い出したところで大団円といこうじゃないか」

すると突然、

ダナ「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

ダナが一冊の本を放り投げて、頭を抱えて叫び出した。

ダナ「誰か殺して!あの頃の私と今の私を!」

ノルン「あーあ、なんで読んじゃうかなぁ、、、」

亜紗花「落ち着いて!大丈夫よ!眼帯の下の邪眼とか、包帯に隠された龍の刻印とか、誰も信じていなかったから!」

ダナ「ぐふおぉぉぉぉぉぉ!!」

パトリシア「傷口に唐辛子を塗り込みましたね」

ダナ「ううう、パトリだって、パトリだって、ずっとボッチだったクセに!」

パトリシア「うぐ!」

ベアトリーサ「大丈夫ですよ!友達が誰もいない一人っきりの暗い青春時代でも!たぶん誰か一人くらいはパトリシアさんの事を覚えていてくれていますから!」

パトリシア「ふぐぅ!!」

ノルン「亜紗花もベアトも悪気が無いから始末が悪い、、、ダナとパトリを連れてきたのは失敗だったか、、、何の役にも立たなかったし、、、」

興醒めしてしまった。ルルイエに帰ろう、、、

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