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クィンシー前日譚 第13章
【情報屋】
なぜ師匠は命を狙われたのだろう。クィンシーが邪魔な存在だというのは、大昔から魔術士から言われていた。と共に、なるべく触れてはいけない存在だとも知れ渡っていた。それが今になってどうしてか。
最近のクィンシーを取り巻く変化といえば、弟子を持ったことが考えられるが、恐らく関係無いだろう。元々クィンシーは単独なのか集団なのかすら明らかになっていない。
そうなるとクィンシーよりも世界の変化に目を向けるべきなのか。魔術の研究は日進月歩で次々に新しい術式や特殊な力を持つ魔術士が誕生している。その中に、クィンシーを野放しに出来ない者が出てきたのではないか?自己の魔術を極める為には、一般的に危険思想と判断されクィンシーに狙われるような事を侵さなくてはならないような。
、、、うん、それなら繋がりそうだ。
まずはその方向で情報を集めてみよう。身分を隠したうえで情報屋に接触してみるのが手っ取り早いのだが、『そんな情報を集めている人物がいる』と、いうのも情報屋に渡すことになってしまうが。まあ、『危険思想持ちで、噂ではクィンシー殺害に成功したらしい人物』というワードだけなら、ただたんに凄腕魔術士を探しているだけという言い訳がつくかな?
師匠の残したメモの内容を思い出して、もっとも信頼出来そうな『コンフィズリー』という情報屋に接触してみることにした。
***
師匠のメモ通りの手順でコンフィズリーと直接し、話をする機会を得ることが出来た。場所は東洋の島国、日本のトーキョー。空港に着くとターミナルのすぐ出口でコンフィズリーの助手と名乗る女の子が待っていてくれた。座席から彼女まで一本道で助かった、、、
そのままタクシーに乗り込み、彼女に連れられるがまま移動する。着いた場所は、いわゆるカラオケという大衆向けのお店のようだ。
「ふぅ、長旅お疲れ様!私はリィン•アルビテル。正真正銘の世界一の情報屋、コンフィズリーだよ。リィンちゃんって読んでね♡」
『、、、はい?え?このコがコンフィズリー?』
リィン「周囲の目があったから黙っていたけど、ようやく話が出来るね〜!キミはクィンシーの生き残りの方だよね~ よろしく〜」
『、、、は、はいぃぃ!?どういうこと!?』
リィン「あ~、わたしばっかり喋っちゃってゴメンネ〜。あ、ここの個室は完全防音だし情報屋として完全に事前チェック済みだから盗聴盗撮の危険は無いよ。ダイジョブダイジョブ」
***
クィンシー「えー、ゴホン。挨拶が遅れました。はじめまして、私は悪の組織に所属していまして、有能な魔術士を探しているニャンコスキーと申します。今、かの有名なクィンシーを抹殺したという方を探しているのですが、ご存知ないでしょうか?」
私はなんてバカなんだろう、、、事前に考えた台本通りに喋ってしまった、、、
リィンはジトーっとした目を向けながら、
リィン「あのさ、バカにしてる?」
クィンシー「バッ、バカになんてしてないです!私がバカなだけで、なんか、ホントにもう、ごめんなさい!」そして続けて聞いた。
「で、あの〜、なんで私の情報をそんなに知っていらっしゃるのでござるのでしょうか、、、」
なんかめちゃくちゃだな、、、
リィン「ん~ふ〜ふ〜♪ わたしはこう見えても世界一の情報屋だよ~、独自のルートから入手したり、自分の足で稼いだりしてるんだよ」
そして続ける。
「わたしにとってクィンシーは本当に謎の存在だったんだよ。悔しいけど、毎回毎回情報を手に入れてもすでに古くなっていて、全然追いつけなくってさ、こっちも半分意地で追っかけてたんだよね〜」
クィンシー「はぁ、それが今になってどうして。先代が亡くなったのはついこの間ですし、裏社会にもまだほとんど流れていない情報かと、、、」
リィン「情報源はリィンちゃんのトップシークレットだから言えないけど、たぶんこの事を知っているのはわたしだけだよ。ま、今のキミ、、、クィンっちがいたおかげで色々尻尾を掴めた感じかな。銃火器ショップで買ったライフル弾の入った紙袋を持ちながらから、映画館でニャンコ・ザ・ムービーを見ている不審者がいた、とか。ライフルでも入ってそうな大型のアタッシュケースを背負いながら、公園の猫に3時間くらいニャンニャン話しかけている不審者を見た、とかね」
、、、師匠、私はクィンシーを継げそうに無いです。
リィン「まあまあ、そう落ち込まないでよ。条件次第でこのことはわたしの胸の中だけにしまって置いてあげるからさ〜」
クィンシー「え!?あ、ありがとうございます!、、、、、で、その条件って何でしょうか?」
もうなんでも聞くしかない。
リィン「ん〜ふ〜ふ〜、じゃあ今からトーキョーデートに付き合ってよ♡」
***
ああ、天国とはここの事を言うのでしょうか。ありがとう、お父さんお母さん、お師匠様、リィン様。
リィン「やっぱりニャンコはかわいいよね〜 ずっと見ていたい気持ち、わかるわ~」
私達はいわゆる『猫カフェ』なる場所に来ていた。雑誌やネットで見て存在は知っていたのだが、天国過ぎてむしろ都市伝説や宗教勧誘の類なのでは無いかと疑っていたのだが、まさか本当に訪れる事が出来るなんて、、、
リィン「で、クィンっちさ、ちょっと話を戻すんだけど、今回の依頼の件、例の魔術士の件だけど、、、」
クィンシー「にゃ~ん、にゃ~んにゃ~ん、ふにゃ~ん、ぷにぷに〜、うにゃ〜ん」
リィン「あのね、可愛いのは分かる。でもかれこれ2時間だよ?頼むから話を先に進めよ?」
ハッ!まだ5分くらいしか経ってないと思っていた!これがニャンコの魔力か、、、
クィンシー「ごめんにゃさいリィンさん、つい我を忘れて、、、」
リィン「ん、まあデートに誘ったのはわたしの方だし、楽しかったからいいんだけどさ〜。で、例の魔術士の話だけど、、、」
小声で口元に手を当ててヒソヒソと話し始める そんなんでいいのか?
リィン「たぶん、防疫修道会を破門になったやつの関係者が怪しい」
防疫修道会と言えば、魔術実験で漏れた魔物を徹底的に浄化する、時には街ごと浄化する(ようは皆殺しだ)かなり危険な連中の集まりだ。その中ですら破門される人物とは、、、
リィン「人体実験が3度の飯より好きなヤツだったらしくて、修道会でも手に負えなくなって追い出されたらしいんだけど、追放された先でも密かに自分の研究室を構えて懲りずに人体実験を繰り返していたんだって。孤児を攫って、強化して、壊して、もう完全に狂人だよ。
とっくにブラックリストトップ10に入っていたんだけど、最近になっていい感じのまともな強化人間造りに成功しちゃったみたいなんだよね。ちゃんと人格があって話が通じる最強の人間。この研究成果を欲しいと思う組織は多いだろうね〜、それこそクィンシーを使って殺してでも欲しいよね~」
確かに。でも研究成果が欲しいだけならば、スナイパー集団を雇ってまでクィンシーまでも殺す必要は無いのでは?
リィン「で、まず第一にクィンシーを片付けたいのは誰か?って考えたわけなんだけど、間違いなくその狂人だよね。実験成果を目的にクィンシーを派遣して殺されるだろうって、狂人だとしてもすぐに思い付いたと思うよ。そこで、研究成果を報酬として、どこかの財閥にクィンシー抹殺依頼を持ちかける、と」
なるほど、そうすると仇はそいつで決まりか。
クィンシー「なるほど、分かりました。貴重な情報をありがとうございます。私が欲しかった情報はだいたい掴めました。
、、、では、お代はどうしましょう?」
リィン「いらないよ。さっきまでのデートがお代だよ~」
クィンシー「え、でも、、、」
リィン「いや~、同い年くらいの女友達と一緒にブラブラする時間って貴重じゃない?情報屋なんてやってると、たいてい強面のオッサンばっかりだからね。今日のクィンっちとのデートは一生の宝だよ!」
どうしたらいいものか戸惑っている私に、リィンは顔を近づけてきた。そのまま唇に、、、
クィンシー「んんっ!ぷはっ!」
リィン「かわいい〜 お近づきの印だよ♡」
そして更に付け加えた。
リィン「それとね、さっき話した狂人の魔術士なんだけど、すでに自分の作った強化人間に殺されちゃってるよ~」
『、、、え?じゃあもう仇は、、、』