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クィンシー前日譚 第0章
【プロローグ】
遥か昔、魔法学と科学が対立していた時代。
世界規模で、魔術、科学、もしくは同種間での争いが絶え間なく起こっていた混沌の時代があった。世界中で戦火は絶えなく殺し合いは日常茶飯事となっており、次々に強力な魔術や兵器が投入された。次第に世界中は有毒物質や疫病に覆われ、徐々に文明も崩壊し、人々は飢餓で苦しみ、魔術も科学も関係無く全世界が疲弊、衰退していった。
やがて人々は理念よりも生き抜くことを選び、魔術士も科学者も関係なく手を取りながら平穏な生活を求めるようになり、混沌の世は落ち着きを取り戻していった。
そして永い年月が経ち、文明は復興し人々から古の大戦の記憶が忘れ去られていった。それでも世界各地では突発的な紛争は絶える事なく起こっていた。
傭兵や武器を供給して富を得る死の商人達は、時に人道や倫理を無視し、一国を滅ぼし兼ねないほどの強力な魔術を編み出し、それを扱える強化魔術士を人工的に作り出した。そしてそれは時に大規模テロに繋がる事もあった。
世界中で安寧の日々に暗雲が立ち込み始めた中、世界の均衡を保つ為に、とある組織が秘密裏に動き出した。
魔術士暗殺の為の専門家、総称『クィンシー』。
この誕生を機に世界中の強化魔術士によるテロ行為は減っていき、300年という永い時間を経て世界はもう一度ゆっくりと落ち着きを取り戻していった。
ここで、「組織」と記したが、はたしてそれが集団なのか個人なのかは誰も知らず、表社会ではもちろん、裏社会でも噂話や伝説として扱われる事がほとんどで、『クィンシー』の実体を把握している者はもはや誰もいない、、、