クィンシー前日譚 第62章
【合流】
クィンシー「え?今見えたのは何?師匠の想い出なの?」
舞夜「どうやらそうみたいね」
気がつくと先ほどの草原地帯。幼い師匠と彼女が先生と呼んでいた女性。
クィンシー「あ、車イス、、、」
師匠「ここだと先生は車イスじゃなくても歩けるみたいなの。何でか分からないけど、、、」
幻夢境の力か。気がつくと先ほどまで幼かった師匠が、少し成長した姿に変わっていた。
師匠「、、、、あ、そっか、先生は私にクィンシーを託して、いなくなってしまったんだ、、、あれ?じゃあここにいる先生は?」
少女の姿の師匠は突然表情を歪ませて、頭を抱えてうずくまった。空には暗雲が立ち込めてきた。遠くに見えた山々が、ゆっくりと暗闇に飲み込まれていく。『ピシッ』という音とともに、空に一筋のヒビ割れが入った。
クィンシー「師匠。あなたは私達のことを思い出せませんか?先生と別れたあなたがクィンシーの名を継いだ後の仲間なんです」
舞夜「やめましょう、クィンシー。思い出さないと言うことは何か理由があるはずよ。無理に思い出させるとこの空間にどんな影響があるか分からないわ」
クィンシー「でも!」
もう涙声になっていた。
その時、突然雷鳴が轟き例のデブリ、『ゼノ』が現れた。
ゼノ「やめておけ。この娘にとっての一番平和な記憶がこの領域なんだ。余計なことを思い出させようとするな。それこそこの領域の均衡が崩れてしまう」
クィンシー「邪魔しないでください!私は師匠の記憶を取り戻して、幻夢境から連れ帰ります!」
ゼノ「ならばしょうがない。排除するしかないようだな」
ゼノが剣を構える。接近戦では不利だし、彼女には一度一方的にやられている、、、
その時、甲高い銃声が響きとっさにゼノは横に飛んで弾丸を躱した。
リディア「へぇ、やるじゃないか。ボクの弾を避けるなんて」
クィンシー「リディアさん!みなさん!」
ルイーズ「間に合ったわね〜。でも初戦でゼノ相手は運が悪いわね〜」
運の悪さはルイーズさんがいるから、、、
エーリカ「で?どうすればいいのかしら、デブリさん?」
少し離れたところにいたゼノが、手に持っていた剣を納めた。
ゼノ「ふぅ、私はこの幻夢境の均衡を保ちたいだけだ。いらぬ戦闘は避けたい。特にそこのデブリになりかけの少女の前ではね」
師匠は状況が飲み込めず困惑している。ゼノが剣を引いてくれたのは助かったが、さてここからどうするか。
ルイーズ「取り敢えずその子をルルイエに連れて帰る?」
舞夜「だめよ。そうしたら断片的な記憶しか持たない状態になってしまう。彼女には全てを思い出して貰ってから連れ帰りたい」
エーリカ「でもそうすると、この領域全てが彼女に飲み込まれてしまう事になりそうね。彼女も私達もろともそのまま何もない虚無に堕ちてしまうのではないかしら?そして、そんな事はそこのデブリさんは見逃してはくれないのでしょう?」
エーリカがゼノに目を向ける。
ゼノ「、、、当然だ」
ミルヴァ「あら?おかしいわね。デブリさんの気持ちに甘さを感じるわ。ひょっとしたらどうしようか自分でも悩んでいるの?」
リディア「ふーん、ずいぶん偉そうな身なりをしているくせに心の芯は弱いんだね。ブレブレじゃないか」
ゼノ「なんだと!」
エーリカ「図星かしら。痛いところを突かれてしまったようね。デブリと言っても案外人間臭いのね」
ゼノ「私を侮辱するか!」
彼女たちの言い合いの間に、そっとロゼットが近づいてきた。
ロゼット「クィンシー様、リディア様達が気を逸らして下さっております。お師匠様をお連れになってこの場を離れるのは今しかないかと」
クィンシー「でも、そうすると皆さんが!」
舞夜「せっかく作ってくれた隙だもの。無駄にしないようにしましょう!」
すでに舞夜は師匠を連れてきていた。
舞夜「転移するわ。お願いロゼット、ひとまずあなたの記憶から創る領域に行かせて。あなたの記憶にある場所を強く想って!」