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クィンシー前日譚 第9章
【"その時"は唐突に】
初陣以降、何度も依頼を受けて徐々に自信もついてきた。大きな建物の中では毎度の事ながら師匠に手を繋いで貰っているが、、、
但し、まだ魔術士がターゲットの仕事はやらせて貰えない。師匠は『いつか、必ずその時は来る。だからまだ私に任せてくれ』と言っているが、『その時』とはつまり、、、考えたくもない
しかし、それはいつもの任務中に突然訪れた。
***
『カウンタースナイパー』
危険人物とみなされたスナイパーを倒すため、偽の依頼を出してクライアントがホストを殺す。昔からの手法だ。
クィンシーとあらばその程度の罠は想定内で、対処法も当然知っていた。だが、今回の任務ではイレギュラーが重なり過ぎた。
悪逆非道の魔術士を暗殺したあと、囚われていた子供を救い出す事が今回の任務。クィンシーとしては少しイレギュラーだが、今は師匠と私の2人体制なので何とかなりそうだった。夜明け前に、師匠が魔術士を片付けたあと予め近くまで接近しておいた私が人質を連れ出す。綿密に打ち合わせをして想定通りに事は進んだ、、、はずだった。
突然、救出したの子供が私に襲いかかってきたのだ。すでにクライアントによって洗脳済み、合図一つでどうにでもなる機械人形にされていたのだ。そこに、多方で狙っていたカウンタースナイパー達がその子供もろとも私を標的にしたのだ。全身に無数に映るレーザーサイトの赤い点。もうダメだと覚悟した時、遠くで照明弾が上がった。師匠のいた方角に間違いない。私を照らしていたレーザーの光が一斉に消えた。逃げるには狙いが逸れた今しか無い。一度は救出した子供を振りはらい、必死で物陰に飛び込む。
直後、銃撃音。
こちらでは無い。先程の照明弾が上がった方角だ。アサルトライフルのフルオートの乾いた音。師匠の単発ライフルとは似ても似つかない凶暴な音。
私を守るために囮になったんだ、、、
普段なら、単独スナイパーであるクィンシーが人質救出の依頼なんて受けるはずがない。昔言っていた師匠のエゴなのか、それとも私に正しい事をしている実感を持たせたかったのか、、、
いずれにせよ、人質救出なんて依頼を受けてしまった時点で全て相手の手の内だったのかもしれない。
クライアントの目的は達せられた。1人のクィンシーの弟子を撃ち漏らしたことを除いて。
暫くすると突然銃声が止んだ。私は師匠の狙撃ポイントに走った。そして、血塗れで倒れている師匠の姿が目に映った。
「師匠!師匠!しっかりして下さい!」
師匠「、、、急に静かになったな、、、大声を上げるなよ、、、、、私は、たぶんもうダメだ、、、」
息を吸おうとした直後、ゴボッと血を吐き出した。
師匠「、、、私の事は置いていけ、そのうちクライアントがクィンシーの死体を確かめにやってくるはずだ、、、、、その前に、、、」
「そんな事、、、出来るわけ無いじゃないですか、、、」
師匠「いいか、お前は優しい。罪悪感もある。クィンシーとしては失格だよ。でも、、、そんなお前がとても頼もしかったよ、、、クィンシーの、私の一番弟子として、、、、」
その時、背後で物音がした。うかつだった。
振り向くと、着物の女性が今にも泣き出しそうな表情で立っていた。
???「だいじょうぶ?じゃないわよね、、、」